『新婚前夜』──フリーターには、できないこと
バブル崩壊後の就職氷河期、
教員を目指していた私たちは、夢破れて、
フリーターのまま結婚しました。
卒業式の日に婚姻届を提出し、
周囲の反対がありながらも、ようやくスタートした私たちの"新婚時代"の記録です。
それまで2年半、
同棲していたおかげもあり──
一緒に暮らし始めてからも、
『新婚生活』というより、私たちには、
これまで通りでした。
妻は、旧姓ではなく、結婚後に私の姓になったことが嬉しかったらしく、
電話を取るときに、
「はい、〇〇です」と言ったり、
人から「〇〇さん」と呼ばれるのを喜んでいました。
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新居として借りたアパートの部屋は、2DK・家賃6万円/月、駅まで徒歩15分。
ふたりで暮らすには十分な広さでした。
けれど妻の一人暮らしの荷物は、
すでに実家に引き上げていたため──
私が使っていた一人暮らし用の荷物しかなく。
ふたりで暮らすには、家具や調理器具など、あらゆるものが足りていませんでした。
小さな一人用のテーブルが一つ。
棚がなかったので、電話もテレビも、シングルのマットレスさえも床に直置き。
見方によってはスタイリッシュでしたが、
正直、やたらと閑散とした部屋でした。
当時は貯金もまったくなかったので、
「次のバイト代が入ったら、あれ買おう」「これ買おう」と、
ふたりで話すのが楽しみでもありました。
物も、お金も、何もない生活でしたが、
本当に満たされていました。

半年もすると──
バイト生活にも慣れて、生活はすっかり安定。わずかながら貯金もできるようになってきました。
フリーターのままでも、やっていけることに、
私には何の不安も不満もありませんでした。
妻の父からは、変わらず就職を勧められていましたが──
ある夜、妻に、
「結婚したし、そろそろ子ども作らない?」
と聞くと──
「フリーターの子じゃかわいそうだから、就職したらね」
と、さらり。
⸻
そのとき──
結婚してから初めて、私は、
フリーターをやめることを決意しました。
『新婚前夜』
──フリーターには、できないこと【完】
▼『新婚後夜』に続きます。
※このお話は筆者の実体験に基づいています。
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