妻の耳は少し遠い
前にも少し触れましたが、
妻は最近耳が遠くなっています。
学生時代の突発性難聴の影響か、
脳出血の後遺症か、それとも加齢か──
理由は分かりませんが。
妻からの
『え?、何?、聞こえない。
もっと大きな声で言って』
は、もはや日常茶飯事です。
リビングで見るテレビの音量は、
もともと大きいのに、
周りの物音に気を取られると、
さらにリモコンで音量を上げていきます。
私が咳払いをすれば、ピコピコ。
お菓子の袋を開けても──ピコピコ。
……台所で水を飲んでも、ピコピコと。

帰宅したばかりの息子が開口一番。
『テレビの音デカっ!』と。
息子は普通の声で会話をしてるのに、
妻は、
「え? 、何?、聞こえない。
もっと大きな声で言って」
テレビの音量下げれば?
と、言おうとしましたが──、
そのやり取りを横目に見ていれば
「何?、聞こえない!
もっと大きな声で話して!💢」
しまいには、息子に怒り出す始末…
また妻は、ドラマや映画が好きでした。
リビングでは、存分な音量で、
いつもそれらを楽しんでいました。
けれど──
放送によっては、テレビは同じ音の大きさでも、音量の差が激しい番組も多く。
中でもとくに映画は、
BGMはやたらとデカくて、
それでいて人の声は小さいという、
妻にとっては、
難易度の高いコンテンツでした。
妻がチャンネルを変えて、いきなり、
映画などのBGMにぶち当たると、
もはや事件。
さすがに本人もうるさいと感じて、
音量を下げれば、
今度はセリフがよく聞こえず──
またピコピコと音量UP。
そのままBGMが流れると、
再びの大爆音。
ソファでくつろぎながら、ウトウトしてれば、心臓が悪くなるほど──
ーーー
時には、妻がトイレに立った隙に、
あまりのうるささに耐えかねた私が、
勝手に音量を下げれば──
トイレから妻が、
「え? 、音が聞こえなくなった?
小さくした?」
「したよ」と言えば、
「何? 、聞こえない?
映画聞いてるんだから、小さくしないで」
「トイレで聞かなくていいから、
早く出なよ。映画は見るもんだし」
「え?、何? 、聞こえない?」
「・・・」
ーーー
果たして──
ここで黙って、
音量を戻すということが、
夫の優しさなんだろうか?
※ちなみにトイレの戸は開いています。
ま、まあ…何かと、
夫婦も大変です…。

妻の耳は少し遠い【完】
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