それが冷やし中華だから 【介護の詩】
『冷やし中華食べたい』
それは、妻からのオーダー。
仕事帰りに、
スーパーで袋麺、きゅうりやトマト。
いろいろ買って。
けれど、
妻が好きなキクラゲを買い忘れて──
次の日のお昼に、
冷やし中華を用意。
──それを見た妻から
『あれ、あれ、ほら』
と箸もつけずに。
いかにも、
キクラゲがないと言いたげな様子。
それに気付きながらも、
『とりあえず食べよう、伸びるし』
と言っても、
『あれ、あれ、なんだっけ』を続け。
──全く箸が進まないので、
『キクラゲでしょ?』
『そう、なんでないの?』
『買い忘れたから』
そのまま黙って、
麺をすすり──
今度は、
『これ、この、これ』
『錦糸卵きらいなんでしょ?』
『そう、なんで入れたの?』
『冷やし中華だから』
またしばらく、
麺をすすり──
今度は、
皿を指差しながら
『この、これ、これ』
『あー、汁がしょっぱいのね』
『そう、なんで?』
『それが、冷やし中華だから』
結局、妻は、
スープと錦糸卵を残して食べ終わり。
──食器を下げてる私に、
『あれ、あれ、ほら』
『大丈夫だよ。
今度はキクラゲ買ってくるから』
──と。

それが冷やし中華だから 【介護の詩】
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