幸せのレモネードソーダ
休日の昼下がり──
いつものように、
喫茶店でアイスコーヒーを頼み、
ボーっと窓の外を見ていると。
腰の曲がった足の悪いおばあさんと、
かくしゃくとしたおじいさん。
2人は手を繋ぎながら、
おばあさんの歩く速度に合わせて、
ゆっくり、ゆっくりと、
窓越しにいる私の前を、
横切っていきました。
チリン、チリン
入り口のドアが開くと、
その2人がゆっくりと中に入ってきました。
たまたま私の周りの席には、
客もなく。
おじいさんが、
私の近くに席を確保して、
おばあさんを先に座らせました。
──声の大きなおじいさんと、
耳の遠いおばあさん。
おじいさんが、
『注文取ってくるから』と言えば、
『えー?』
『何か飲みたいものあるか?』
『わかんねえ』
そのまま、
注文を取りにレジへ。
目の前の店員に、大音量で。
『すいませーん、
ホットとクリームソーダください』
店員は、
『すいません。
クリームソーダは置いてないんです』
レジから、
おばあさんに向かって、
『おーい、クリームソーダないってよ、
どうする?』
──おばあさん、反応なし
店員が、
『代わりに、
レモネードソーダはいかがですか?』
と言えば、
納得した様子で注文し、
それを持って席に。
レモネードソーダを見たおばあさん。
──開口一番。
『クリームソーダじゃないね、これ』
『ないんだって。クリームソーダ』
納得したのか、
おばあさんはレモネードを一口。
『おいしいよこれ、飲んでみ』
と、おじいさんに差し出し、
一口もらえば、
『こりゃあ、すっペー』
と、しかめ面に。
そんな様子を見ながら、
おばあさんはニコニコと。
おじいさんも、すぐニッコリと。
それから──
たいした会話もなく、
ホットとレモネードソーダを
飲み終えた2人。
おばあさんが、そっと一言。
『いつも、ありがとうね』
『なんもだ』
と、少し照れた様子。
そのまま、おばあさんの手を取り、
またゆっくり、ゆっくりと外へ。
私はアイスコーヒーを飲みながら、
窓越しに歩いて行く2人に、
──見入っていました。

幸せのレモネードソーダ 【完】
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