おどろおどろしい流動食
2週間前に、
脳出血で倒れた妻は──
言葉を失い、
身体の半分が、
まだ機能していませんでした。
ICUを出てから、
2週間が経過してた頃──
しばらくの間、
寝たきりだった妻は、
それまで殆ど動いていないため。
筋肉は落ち、
また経管栄養により、
栄養管理がなされたため、
──体重は、
14キロも落ちていました。
それから、
リハビリも進み。
首の支えがあれば、
座っていられるようになり、
鼻の経管から、
栄養も取れるようになりました。
──まだ点滴で、
水分補給はしていましたが、
スープ類などから始まって、
"流動食"へ移り。
しばらくして、
口からも徐々に、
栄養を取れるようになっていきました。
ただ、あくまでも私の
主観ですがーーー
その見たこともない、
ドロドロとした、茶色や緑色の
その"おどろおどろしい流動食"は、
……どうしても、食べ物には見えず。
妻は口から食べれるのが、
嬉しかったのか、
ニコニコしながら──
その"おどろおどろしい塊"を、
毎食残さず食べていました。
妻に『美味しい?』と聞けば、
『ふん、ふん(美味しい)』と頷き。
時には、
見ているだけの私を気遣って、
分けてくれようとした時もありましたが。
頑なに、
『ちゃんと食べないとダメ。
必要な栄養なんだから』
と断りながら、
その"得体の知れない物"を、
私は遠ざける様にしていました。
それ以前までは、
好き嫌いも多い妻でしたが──
人間変われば、
変わるもんだと。
そんなふうに、
思ったりもしていました。
始めのうちは、
スプーンの使い方が分からず
ポロポロと泣いてみたり。
"得体の知れないそれ"が、
『美味しい』と
嬉しそうな顔をしたりと。
妻と一喜一憂しながらも、
忙しい日々でしたが、
その"おどろおどろしい食事"の
時だけは──
ふたりで穏やかな時間を
過ごしていました。

おどろおどろしい流動食 【完】
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