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妻との出会い【前編】 玉砕する一目惚れ



私が一浪して都内の大学で、
一人暮らしを始めたばかりの頃の話。



  ──それは、一目惚れでした。


私は顔見知りも少ない新生活の中で、
同級生とうまくやろうと、

毎晩のように誰かの部屋で飲み会をしていました。



気疲れもありながらも──


女性の姿がないことに、
少し物足りなさも感じていました。


そんなある日、
仲間の一人が、



「今度、俺の彼女連れてくるわ。
友達も何人か誘うし、

ご飯でも作ってもらおうよ」


と粋な提案。






その日は、授業もサボって、

その夜の会合のための、
買い出しに出ようとしていました。



すると階段を上がってくる
見知らぬ女の子と鉢合わせに。



「あ、こんにちは。
一年の〇〇です。

今日の会場はこちらですか?」




「そうですよ。〇〇号室です。
先に入っててください。
みんなすぐ来ますので」

と返すと。

「今日は美味しいもの作りますね」


そう言って、
彼女は私の目を見てニコリ。


その笑顔に私は、
心臓を撃ち抜かれたような衝撃を受けました。



あまりに自然で、明るく綺麗で。
完全にやられたと。




それが私の、
人生で初めての一目惚れでした。


ただ、その彼女が、

あの飲み会を企画した仲間の

“彼女”だったことは、まだ知らず……






それでも彼女は、

その後もよく飲み会に参加するようになっていました。

彼氏が来ることはなく、
彼女は一人か友達と来ては、

楽しんでいました。

ある時、彼女に、

「彼氏、心配しないの? 
こんなに毎晩、男の部屋で飲んでて」



「んー、彼。
サークルいっぱい入ってて、
忙しいんだよね」



「〇〇ちゃんの彼氏イケメンだし、
逆に心配にならない?」

「そうなんだよね。
でも私はそんなにイケメンと思ってないし。

あの人、変なとこ真面目だから。
大丈夫。」






その後も私は、順調?に、
彼女に惹かれていました。

彼女も彼氏とすれ違いが多く、
時間を持て余していました。


私は日々、

彼女の予定を聞いては、
遊ぶ約束を取り付けることに必死でした。

とにかく会えるのが嬉しくて。


でも、会えば会うほど、
同級生としての関係がつらくなっていきました。





気持ちを伝えたい。
でも、相手には彼氏がいる。


けれど、
裏でこそこそするのは嫌だし。


だったら、まず彼氏に話してみよう。

勝ち目はないかも知れないけど、
それでも気持ちは伝えたいし。



そう決めた私は、

『伝えたいことがある』

と、彼氏を呼び出しました。




講義終わりの校舎──

静まり返った廊下に現れた彼は、
少し不安そうな顔をしていました。


「実は、君の彼女のことが好きなんだ。

今度、告白しようと思ってる」



そう言った私に、

彼は驚くこともなく、
ただ静かに頷いていました。

「そっか。そうなんだ」


真面目で優しい彼は、

自分が彼女を大事にできていなかったこと、会う時間もほとんどなかったこと、


そして──


「気持ちを伝えたいなら、
それを止めることはできない」

と言いました。



私は、

それを“告白していい”
という許しと受け取りました。





その足で、
すぐ彼女の部屋に向かい。

彼女に、
全部伝えようと考えていました。



インターホンを押すと、
彼女が顔を出して、


私の様子に、
少し驚いた表情を浮かべながら。


「さっき、
彼氏の〇〇と話してきたんだ」



彼氏と話した内容を伝えて──


私はまっすぐに、
彼女に思いを伝えました。



「好きだから。付き合ってほしい」


けれど、
彼女は戸惑いながらも、

はっきりと……



「ごめん。
本当に無理なんだけど」





それは──



   恐ろしいまでの惨敗でした。



妻との出会い【前編】
玉砕する一目惚れ【完】




▼妻との出会い【後編】に続きます。





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▼この作品は『若若介護』シリーズの一部です。  シリーズの他の記事はこちら

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