『頑張る朝帰り』──破れたスーツとバキバキの本棚
──働きながらの介護生活では、
ときどきこんな日もあります。
いや、介護に限らず、長年連れ添う夫婦なら、それは避けられないことかもしれません。
その日の妻は、朝からイラだっていました。
つい先日のこと──
私は朝4時まで、
“例のおつきあい飲み”があり、
気づけば店の椅子で半分寝落ち、
そもそも、どうやって帰宅したかすら分からないまま。
気づけばベッドの上という…
そんな状態で迎えた朝は、
当然のごとくまさに屍でした。
妻にとってはいつも通りの朝。
その日も“デイサービス”の送迎が待っていました。
ヨタヨタと、まだ酔いが残ったまま何とか起き上がり、頭をかきながら、
「ごめん、起きれなかった……朝ごはん、何か食べた?」
と聞いても…妻は無視。
……明らかに、不機嫌。
昔から、こういうときの妻は怖い。
何も言わずに、
黙々と出掛ける準備をする妻の背中は、周りの空気もヒリついていました。
恐る恐る、
「ほら、付き合いもあるし、起きれない時だってあるでしょ? ごめんね……」
と声をかけると、間髪入れず
「帰ってくる時、うるさい!
玄関から部屋に行くまで、
目が覚めて寝れなかった💢」
ヒエー…… 💦
それから、デイサービスの送迎車を見送ったあと、ふと右肩にヒリヒリとした痛みを感じて。
見れば……
擦り傷と、みみず腫れのような赤い線が伸びていました。
え? マジ?
──そう言えば。
帰宅後、部屋で転倒して本棚にぶつかった記憶が、うっすらと……。
部屋に戻って見てみると、
本棚の扉はバキバキ。
スーツの右袖は肩から裂けていました。
……なるほど。これは、
たしかに、うるさかったなと納得。
その日は、一日中ひどい二日酔いに苦しみながらも、必死に晩ご飯を用意して。
まだ罪悪感もあり──
その夕方、妻が帰ってくる時間には、
なんとか笑顔を作って出迎えました。
「おかえり。今日も頑張った?」
妻も今朝のことは、すっかり忘れていて、
「うん」とニッコリ。
我ながら……
かなり頑張った一日だったと思います。

『頑張る朝帰り』
──破れたスーツとバキバキの本棚【完】
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