研究 x 申請書|フェローシップの組み合わせ戦略|海外学振・LSRF・K99までの道筋
これまでの記事でも触れましたが、海外学振は日本人研究者が海外で研究を始めるときに最もよく利用される制度です。
ただし支援期間は原則2年間。研究が本格的に成果を出すには3〜5年かかることが多く、2年では短すぎるのが現実です。
では、どうすれば長く海外で研究を続けられるのでしょうか。
その答えのひとつが、フェローシップを組み合わせて活用することです。
本記事では、
長期滞在を最大化する方法
キャリア評価を高める方法
この2つの視点から、フェローシップの組み合わせ戦略を整理していきます。
※前回の記事では、海外学振を含む主要なフェローシップの条件や支援額をまとめています。ぜひそちらも参考にしてください。
パターン1:長期滞在を最大化する
「とにかく長く海外に滞在して研究に集中したい」という場合は、複数のフェローシップをつないでいく戦略が考えられます。
例えば、
東洋紡バイオテクノロジー研究財団(1年)
応募条件:39歳以下、初めての海外留学
博士取得直後の若手が対象なので、一番最初に応募しないとチャンスを逃す。
HFSP / LSRF(3年)
応募条件:博士取得から3年以内(HFSP)、5年以内(LSRF)
制限が厳しいので、博士号取得後すぐに挑戦しなければならない。
ここで獲得できれば、ブランド力のある実績を早期に積むことが可能。
海外学振(2年)
応募条件:博士取得から5年以内
HFSP/LSRF終了後でも、博士取得から5年以内であれば応募可能。
タイミング的に「2〜3本目の助成」として挟みやすい。
日本生化学会・早石修記念助成(1年)
応募条件:博士取得から10年以内、生化学会員
制限が比較的ゆるく、他のフェローシップの後に応募できる“最後の延長手段”として機能する。
このような組み合わせを実現できれば、最長で7年近い滞在が可能になります。腰を据えて研究を進められるのが大きなメリットです。
一方、ポスドク期間が長くなることで、だんだんと次のポストの選択肢が狭められていくことは気を付けなければなりません。
パターン2:キャリア評価を最大化する
長く海外に滞在すること自体も大切ですが、多くの研究者にとって本当の目標は「次のキャリアにつなげること」です。
そのためには、国際的に評価の高いフェローシップを獲得して実績を積み重ねることが重要になります。
特に、HFSPやLSRFのような世界的に有名なフェローシップを得ると、「この人は独立して研究を進められる力がある」と見なされやすくなります。
そして、その実績を足がかりに、米国で若手研究者の登竜門とされる K99/R00(NIH Pathway to Independence Award) に挑戦する流れがキャリア戦略として有力です。
典型的な流れは次のようになります。
海外学振(2年)
博士号を取った直後に海外へ出るための支援。研究と生活を安定させる“スタート資金”になります。HFSPまたはLSRF(3年)
博士号取得から3〜5年以内に応募できる、国際的に評価の高いフェローシップ。ここでブランド力のある実績を積むことで、研究者としての独立性を示すことができます。K99/R00(ポスドク4年目までに挑戦)
米国の若手研究者向けキャリア支援制度。ポスドクのうちに申請し、採択されれば独立研究者(PI)としてのポジションにつながる“切符”になります。
この流れは、「海外学振+国際フェローシップ」の二段構えによって、国際的に認知度の高い資金を複数獲得していることを示せます。
CVに記載したときのインパクトも非常に強く、米国の独立研究者(PI)ポジションへとつながる大きな武器になります。
実例紹介
私の同僚の一人は、東洋紡(1年)→ 海外学振(2年)→ K99 という流れでキャリアを築きました。
まず東洋紡で海外に出るきっかけを作り、学振で安定した2年間を過ごしたうえでK99に挑戦。見事に採択され、独立研究者としてのキャリアを切り開いています。
このケースは、滞在期間をしっかり確保しつつ、キャリア評価を高めることにも成功した好例です。
また、私の友人には 東洋紡 → 上原 → 現地ポスドク雇用 → 海外学振 という流れをたどった人もいます。
東洋紡で海外に渡り、上原記念生命科学財団の助成で研究を継続。その後、現地の研究室でポスドクとして雇用される形に切り替え、最終的に海外学振を獲得して滞在を延長しました。
こちらは、複数の財団を組み合わせながら、現地雇用を挟むことで柔軟にキャリアをつないだ例です。
注意点
フェローシップを組み合わせるときには、いくつか気をつけるべきポイントがあります。
まず、併願や重複受給の制限です。財団によっては「200万円以上の他助成との併用は不可」といった条件があり、同時期に複数の支援を受けられない場合があります。応募の際は必ず規定を確認することが必要です。
次に、博士取得からの年数制限です。HFSPは博士取得から3年以内、海外学振は5年以内、内藤財団は8年以内など、それぞれに細かい規定があります。自分がどのタイミングで応募できるのかを逆算して計画を立てることが欠かせません。
最後に、資金の途切れとビザの関係です。研究資金が切れると、そのまま在留資格(ビザ)の更新が難しくなることがあります。
そのため、次のフェローシップが決まる前に受け入れ先のPI(研究室主宰者)に相談し、ブリッジファンドや雇用契約などのサポートを得られるよう準備しておくことが重要です。
まとめ
海外学振は、日本人研究者が海外に出るための代表的な制度ですが、2年間の支援だけでは研究を十分に進めるのは難しいのが現実です。
長期滞在型の戦略では、東洋紡や上原、生化学会などの財団を組み合わせることで、最長で7年近く滞在を続けることができます。
一方、キャリア型の戦略では、海外学振やHFSP/LSRFといった国際的に評価の高いフェローシップを経て、K99に挑戦する流れが、将来の独立ポジション獲得につながる大きな武器になります。
大切なのは、「長く滞在することを優先するのか」「早くキャリアを固めるのか」、自分の目的をはっきりさせることです。
それによって選ぶべき組み合わせも変わってきます。
次回は、こうした戦略を実現するために申請書をどう書けばよいのか。
特に「研究の新奇性」をどう伝えるかについて解説します。
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