【書評】1800ページを1か月で完走。ケン・フォレット著『大聖堂』が海外ドラマを超える圧倒的没入感だった
1,800ページの激流を完走した後に残るのは
心地よい「喪失感」という贅沢
夏の終わりのような喪失感。1800ページの旅を終えて
ケン・フォレット著『大聖堂』上中下巻。
12世紀のイングランド。放浪の建築職人トムは、衰退した壮麗な大聖堂復活をめぐる波瀾万丈のドラマに巻き込まれていく……折りしも、イングランドに内乱の危機が!
約1800ぺージにわたる大作でしたが、気づけば2026年1月の1か月間で読み終えました。
こちらは上巻を読み終えたときの記事。
さみしい。
読破後にまず感じたのは寂しさ。もうこの世界の続きが読めない。
まだ新年がはじまったばかりなのに、気持ちは夏の終わりの抜け殻気分です。
あえて「非効率」な文字の大海ダイブの満足感
僕はここ数年、読む本は自己啓発書が主でひさびさの小説でした。
「この本の要旨は?」
「著者の主張は?」
の答えを効率的にリサーチする読み方に慣れてしまって、当初はなかなか『大聖堂』に没入できませんでした。
が、話が流れにのってきた上巻の中盤以降は、ひたすら没入です。
ひさびさに文字の大海にどっぷり浸かりたい方は『大聖堂』、おススメです。
読めばぐいぐいひっぱられます。
ハッと気づけば読破してるはず。
大作なのに「迷子」にならない理由
『大聖堂』はなぜ読みやすいのか。
理由の一つは、登場人物の構造がシンプルだから。
大作って覚えきれないほどの登場人物。さらに海外の作品だと名前がとっつきにくいってこと、ありますよね。
『大聖堂』は修道士同士そして貴族同士の対立に、石工棟梁の家族が翻弄される
って図式さえ頭に入っていれば、登場人物で迷子になることはありません。
名前も覚えやすい。
本のそでに主要登場人物が載っていますが、繰り返し登場するので何度も見返さなくても自然に覚えられます。kindle版の読者もご安心を。
まるで建築美。ストーリーの美しさ
修道士そして貴族の横の対立をイメージできたら、あとは大聖堂建立をめぐる物語のアップダウンに身を任せれば、勝手にページは進んでいきます。
時間があればページをめくる手がとまらなくなる衝動に。
たとえるなら遊園地のジェットコースターは3分ほどで終わりますが、『大聖堂』という名のそれは1800ページ分。何時間何日も読者を。あるときは急上昇、急降下、右へ左へと翻弄してきます。
そして『大聖堂』の魅力は物語の緩急だけじゃない。
さきほどの登場人物の構造、そして厳しい冬の訪れからはじまって、淡くそして情熱的な恋の春、激しい日差しとスコールの夏、そして実りの秋へと、彩り豊かな四季のごとく物語は進んでいきます。
『大聖堂』を読み終えた後、作品を俯瞰してみると、それぞれのエピソード(石材)が、終盤に向けて一つの巨大なストーリー(大聖堂)に組み上がっていく快感が得られます。
小説は最高のオフライン・エンタメ
『大聖堂』を読んで、あらためて小説で読むって最高のエンタメだなと。
本を開けば一瞬にして作品の世界へ。あとはひたすら広告なしで没入できます。もちろん本を閉じれば、一瞬にして現実の世界にもどれます。
アプリの開閉、電源オンオフ、SNSやメールのチェック、一切なし。
1冊約300gを携帯すれば、そこは読者だけのオフラインのエンタメワールドです。
【警告】『大聖堂』は過激な描写が多めです
『大聖堂』を読むのに、一点気をつけること。
それは海外の作品、そして中世のイングランドが舞台とあって、過激なシーン、残虐な描写も多いです。
そういった表現が苦手な方は控えたほうがいいです。
たとえば、『ゲーム・オブ・スローンズ』が楽しめる方は『大聖堂』はたまらない作品。
文字を通した著者との「コラボ」。映像では味わえない能動的な楽しみ
ケン・フォレット著『大聖堂』、読み終えればあっという間です。
一度ハマると時間を盗んででも読みたい衝動に駆られる、ある意味でキケンな作品。
これほど濃厚な世界を小説で堪能するって、映画、ドラマ、漫画ではなかなか味わえません。
映像だと「与えられた」世界の共有なんだけど、文字の世界だと読者も文字をとおして能動的に世界をイメージすることで著者との「コラボレーション」する楽しみがあると思う。あくまで主観だけど。
じつは『大聖堂』、ケン・フォレットの作品五部作の第一弾。
つづきましては『大聖堂-果てしなき世界』
『大聖堂』下巻を読み終える前に図書館で予約済です。
舞台は14世紀のイングランド、キングズブリッジ。騎士の息子でありながら建築職人となったマーティンは、老朽化した伝説の大聖堂を復旧し、イングランドでいちばん高い塔の建設を決意するが……。
『大聖堂』、上中下巻と読み終えた方はぜひ上巻冒頭を読み返してほしい。
そこに新たな発見があるはずです。
ページ数の多い作品はキンドル版の無料サンプルを試し読み。
その場で何十ページ分も読めますよ。
追記
『大聖堂』が楽しめて、ユン チアン著『ワイルド・スワン』未読の方。
こちらの作品は必読の名著。
生涯でもっとも濃厚な読書体験をした作品です。
激動中国、祖母・母・娘 親子三代七〇年 現代中国を舞台に、祖母・母・娘の親子三代七〇年にわたる、激動の大河ドラマである。彼女たちの笑いや涙、怒りとともに時が静かに優しくそして力強く流れる。
こんなもんじゃないですから。実際に読むと。
激動すぎる内容。
しかもノンフィクション。
ただし『大聖堂』よりもさらに読むのがしんどいシーンが多いです。
図書館で借りるもよし。
中古本で購入するなら文庫ではなく単行本がおすすめ。
読み終えた後、いつかまた読み直す可能性の高い作品だから。
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