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裁量労働制(過半数労働組合のある企業に限り)対象拡大をめぐり労使激論

昨年(2025年)12月24日には高市内閣の日本成長戦略会議で経団連会長が裁量労働制の対象拡大を提案。また、この日に開催された労働政策審議会(厚生労働大臣の諮問機関)労働条件分科会で連合の冨高裕子副事務局長と経団連の鈴木重也労働法制本部長が裁量労働制の対象拡大をめぐり議論。


2025年12月24日 労働条件分科会 資料

昨年(2025年)12月24日に開催された労働政策審議会(厚生労働大臣の諮問機関)労働条件分科会の資料が、厚生労働省のサイトに公開されています。このうち裁量労働制に関する資料は次のです。

資料No.2-1 労働時間法制の具体的課題に関する検討の論点について[PDF形式:2.1MB]

資料No.2-2 労働時間法制の具体的課題について[PDF形式:10.8MB]

参考資料No.1 各側委員からの主な意見の整理[PDF形式:270KB]

2025年12月24日 労働条件分科会 議事録

昨年(2025年)12月24日に開催された労働政策審議会(厚生労働大臣の諮問機関)労働条件分科会の議事録が、厚生労働省のサイトに公開されています。このうち裁量労働制に関する議論のみ抜粋して読みやすいように整理しました。

・山川分科会長(山川隆一・明治大学法学部教授)
「裁量労働制」につきまして、御質問、御意見等をお願いいたします。

・冨髙委員(冨髙裕子・日本労働組合総連合会副事務局長)
これまでも何回か述べておりますけれども、裁量労働制に関する基本的な考え方について申し上げたいと思います。裁量労働制は、適用労働者の裁量・処遇の確保、定期的なモニタリング等、運用改善をはじめ、適正運用が確保されないと長時間労働を助長しかねないと考えております。
また、論点にも記載のとおり、そもそも2024年に見直しを行ったばかりということでございまして、改正内容を含めた適正運用を徹底することが非常に重要だと考えており、拡大を検討する必要はないと考えているところでございます。
その上で、参考資料No.1(各側委員からの主な意見の整理)の25ページのところ、使用者側の御発言が幾つか記載されておりますけれども、3つ目のところです。過半数労働組合との合意の下で裁量労働を適用するにふさわしい対象業務の範囲を決められるような仕組みの導入の検討を行うべきという記載がございます。
裁量労働制は、実態として、先ほど申し上げたように、長時間労働にどうしてもなりがちになっているところでございまして、その適正運用を担保する観点で対象業務の範囲、また本人同意を含む導入手続などが厳格に定められているのだと認識しているところでございます。再三再四、使用者側委員が強調されている各社の労使関係の多様性を鑑みても、裁量労働制を適用するにふさわしい業務を労使の判断に委ねるということは、濫用の懸念が大きく、極めて問題があると考えているところでございます。裁量労働制に限らず、強行法規である労基法のルールについて、労使合意によるさらなる緩和を認めるべきではないということを改めて申し上げておきたいと思います。

・佐藤(晴)委員(佐藤晴子・東日本旅客鉄道株式会社千葉支社企画総務部部長、オンライン)
裁量労働制に関して、いわゆる成果をベースとする処遇制度に関しては、現行法の下においても導入が可能であったり、あるいは制度導入によって裁量を与えるマネジメントの問題ではないかというような趣旨の御意見があります。ある企業ですけれども、過半数労働組合と協議して裁量労働制を導入したというところがございます。この企業では、みなし労働時間は所定労働時間とするものの、毎月、時間外労働に換算して約30時間分の裁量労働手当を支給する仕組みというのを導入しているということですけれども、適用労働者の健康管理に関する時間によって把握できる実際の時間外労働相当というのが、約25時間となっているというように聞きます。
つまり、毎期の賞与によって業績への反映を行うということは、もちろん裁量労働制を導入しなくても可能ではありますけれども、加えて裁量労働制を利活用することにより、短い時間で成果を上げることで、本人にはよりメリットがある、メリットにもなり得るということも言えるということかと思います。裁量労働制は、労働時間だけをベースとしない処遇をより可能にする制度として、もって労働者の働きがい、働きやすさ、そして働き手の能力の最大発揮と成長意欲の一層の喚起といったことが期待できるものと考えますので、対象業種の拡大の検討が必要であって、これを時期を逸せず行うことが適切というふうに考えます。

・田中委員(田中輝器・日本通運株式会社人財戦略部専任部長)
裁量労働制について発言します。多様な価値観、働き方へのニーズを持つ社員に、いかに意欲を持って能力を発揮してもらうかは、会社にとって重要な課題です。この考えの下で、各社では柔軟な、そして自律的な働き方が可能となるような仕組みを検討して導入しているということと思います。フレックスタイム制などで対応できると考える企業・組合もあろうかとは思いますが、一方で、創造的で非定型の業務など、労働時間とアウトプットが必ずしも比例しない仕事に従事している働き手にふさわしい労働時間法制を拡充していくこと。中でも、適用労働者の約8割が満足と答えている裁量労働制の拡充については、最重要課題と考えております。
資料No.2ー2(労働時間法制の具体的な課題について)の72ページにありました。裁量労働制適用者の多くが、健康状態について、「よい」であったり、「まあよい」と認識しています。これについて、以前、労働側委員から、あくまで主観であって、客観的ではないとの御指摘がありましたが、一方で、72ページの下段の回帰分析結果からは、裁量労働制適用者のほうが健康状態が「良い」と答える確率が高いということが見てとれます。これは議論に有用なデータの一つだと考えています。

・鬼村委員(鬼村洋平・トヨタ自動車株式会社人事部労政室長)
裁量労働制について発言させていただきたいと思います。
先ほどもございましたが、論点資料にもありますが、裁量労働については、前回の見直しから時間もたっていない中で、さらなる見直しは不要ではないかという御指摘もおありかとは思いますが、現状の日本の労働生産性を考慮すると、これは適時見直しを進めていくということが重要ではないかと考えております。弊社の例で考えましても、競争環境というのは、北米の関税であるとか、日々、どんどん変化していく中でも国際競争力を維持・向上させていこうと思いますと、日本国内の労働生産性をいかに高めていくかということは、非常に重要な経営課題の一つであると考えております。
そうした中では、この裁量労働制をより幅広く適用できるように制度を見直していくことで、自律的な働き方をどんどん広げていって、その結果、働き手の能力の最大発揮であったり、成長意欲の一層の喚起ということを進めていって労働生産性を引き上げていくということが非常に重要なアプローチではないか考えています。
また、資料No.2-2(労働時間法制の具体的な課題について)の68ページでも御紹介が幾つかございましたけれども、裁量労働制を適用されている方の働き方についての御認識でございますけれども、「時間にとらわれず柔軟に働くことで、ワークライフバランスが確保できる」であるとか、「仕事の裁量が与えられることで、めり張りのある仕事ができる」というような回答が多くなっているかと思います。
弊社のほうでも裁量労働制を導入させていただいておりますけれども、直近の調査でも弊社内の適用者の7割が、この裁量労働制を適用することでやりがいが向上したと回答しておりますし、適用者からの具体的な声でいくと、成果につながるような行動がより取れるようになった、時間配分の裁量が増えたことで、納得いくまでアウトプットにこだわれるようになったというようなものから、時間配分の柔軟性が高まったことで、育児や介護との両立もやりやすくなったといった声もございました。
以前、分科会の中で黒田先生からも御発言あったとおり、裁量を実際持って働くかどうかということが非常に重要で、この実態が伴わないと、こういったポジティブな声というのはもちろん伴わないものだと理解しておりますけれども、労働生産性を高めていく上では、この裁量労働制というものは有益な制度なのだろうと考えております。
最後になりますけれども、このように労働生産性を引き上げていこうと思いますと、労働時間の削減だけではなくて、もちろんこれもやりますが、これだけではなくて、より社員の働きがいを高めていって、あるいは働きやすい職場環境の整備を進めていって、アウトプットを大きくしていくということも併せて取り組む必要があると考えております。裁量労働制を今、導入したり、広げていっている各社の取組みの背景には、この労働時間をベースとしない処遇を可能にして、労働者の働きがいや働きやすさを高めていこうというメッセージなり思いが込められているのではないか思います。
処遇の仕方だけうまく工夫すれば現行制度でも、という御指摘、御意見もおありかと思いますが、裁量労働制と併せて制度を導入していくこと、それを社内に周知していくことで、こうした経営のメッセージがより伝わりやすくなって、従業員の意識改革にもつながっていくのではないかなと思っております。ぜひとも対象業務の拡大に向けた議論をこうした場で進めていくことができればと改めて考えております。

・鈴木委員(鈴木重也・日本経済団体連合会労働法制本部長)
厚生労働省の調査では、法律要件となっております業務の遂行方法とか時間配分の裁量性については、およそ9割の適用労働者の方が自分に裁量があると回答されていますので、おおむね適切な運用がされている実態にあろうかと認識しておりますが、第202回の分科会におきまして黒田先生から、もし適用の拡大や要件の見直しをするためには、制度を導入する、しないではなくて、裁量をしっかり担保できるというのが前提条件という御発言があったところです。この指摘は、議論を進めていく上で重要なポイントだと私も受け止めをさせていただいているところです。
この点に関しまして、過半数労働組合がある企業では、制度を適用する前に丁寧に裁量のある、なしを確認したり、あるいは制度を適用した後も裁量性が失われるほどの長時間労働にならないように、その抑制に向けた工夫などをしていらっしゃる企業が多いと思っております。
例えばということで御紹介しますと、個々の労働者に適用する前の段階の工夫としては、上司が裁量労働制をしっかり理解できるよう、上司に教育あるいは制度の周知活動を十分行っている企業が多いと思っておりますし、また、制度適用可能な人事等級の適切な設定をする。それから、裁量のある、なしについて、所属長や上司と制度適用候補者が個々に個別に話し合いを行い、適用することが適当かどうか、しっかり確認する。実際に、こういうプロセスを経て適用しないという方もいらっしゃるという企業も聞いております。
また、ある企業では、企業独自の適用基準を策定し、その中で超過勤務時間の見込みが月間、それから年間でそれぞれ一定時間を超えることが見込まれる場合は負荷が大きい、裁量を失わせるということから適用しないというルールを設けて運用しているということです。さらに、導入時に適用労働者の過去1か月間の仕事内容を書き出した上で、裁量があるかどうかを上司と確認する企業もあると承知しております。
また、制度導入後の運用上の工夫としましては、長時間労働により、結果として裁量が失われることがないよう、健康確保時間が一定時間以上となった場合には、制度適用から外す措置を行う企業もあると承知しております。加えて、毎年、過半数労働組合が全体の負荷を確認するとか、適用労働者と上司が週に1回、話し合いを行いつつ、その適用労働者の負荷を確認するといった運用をされている企業もあると承知しております。
以上のように、過半数労働組合がある企業では、労使が知恵を絞り、多種多様な工夫によりまして裁量性を確保・確認を行っているというふうに思っており、過半数労働組合があるということが裁量性の担保になり得ると私としては考えています。
経団連が11月に民間調査会社に委託しまして、ホワイトカラー労働者約1000人を対象にした調査を行いましたところ、約3割の方から裁量労働制の適用を受けたいとの希望もあったことを御参考までに御紹介させていただきたいと思います。
制度の見直しを行ったばかりという御指摘もいただいているところではございますが、高市総理の大臣指示が出されたということもございますし、労働者の健康確保を大前提に、過半数労働組合がある企業の労使で一定の範囲で対象業務を決定できる仕組みの創設を改めて強く申し上げたいと思っております。

・鳥澤委員(鳥澤加津志・株式会社泰斗工研代表取締役、オンライン)
多くの委員からご発言がございましたが、労働生産性の向上や多様で柔軟な働き方の整備のため、裁量労働制に関する議論は必要であり、時宜を得たものと考えます。現在の裁量労働制は、手続等が煩雑であることに加え、対象業務が厳格に規定されていることが企業側の利用を難しくしております。この分科会で何度か申し上げておりますが、特に中小企業においては、1人の労働者が複数の業務を遂行することが多く、主たる業務として企画・専門型裁量労働制が認められる業務を遂行していたとしても、非対象業務との兼務により適用ができないケースも推定されます。このことが大企業と中小企業の企業間格差を生むものであると考えられますし、また人材の流動性の妨げにもなりうると考えております。
裁量労働制の対象労働者には、特別な健康確保措置や本人同意規定が存在することなどを鑑みますと、対象業務を主たる業務として担当し、自身の裁量が認められる労働者については、適用が可能となるような見直しも検討できます。手続の簡素化も含めて必要な議論をすべきと考えます。

・原委員(原昌登・成蹊大学法学部教授、オンライン)
裁量労働制は、法的に訳さずに言うと「裁量労働のみなし労働時間制」なわけですね。つまり、働き手に能力発揮を促すために裁量をもって働いてもらうということと、その結果、働いた時間をみなし労働時間でカウントするということは、必ずしも結びつくものではないということがございます。もっと言えば、裁量をもって働いてもらい、実時間で管理するということが否定されているわけではないわけですね。ですから、能力発揮を促すためには裁量労働制の拡張・拡充が必要、だということが、果たしてどこまで言えるかということは、慎重に考える必要があると思います。
また、今、ちょうど画面に出ておりますけれども、現在の裁量労働制の適用を受けて働いている方々の肯定的な意見というのは、非常に細かい要件が設定されていて、限定的に運営されている中で満足度が高くなってくることはあり得るとも言えますので、「こういった結果があるから広げていくのがいい」ということに結びつくかということも、これは考える必要があると思うのです。
実際には、2024年の見直しがされてから、まだあまり時間が経っておりませんから、この見直しの結果、どういう実態面での影響があったかといった、実態的な調査なども踏まえて、今後議論していくべきであって、現時点ですぐにといったことよりも、まずは見直しの結果、どういう良い影響があったのか、あるいはマイナスの影響があったのかといったことを、しっかりと実態を明らかにした上で議論していくことが必要な状況であると感じます。

・佐藤(好)委員(佐藤好一・全日本自動車産業労働組合総連合会副事務局長)
本日もそうですが、これまでの議論の中でも使側(使用側)の方から、裁量労働制の適用労働者の満足度や健康状態が良好であるということを理由に拡大を求めるという意見がありましたけれども、その根拠である実態調査の結果について、労側(労働側)は見方が異なることを再度申し上げておきたいと思います。
資料No.2-2(労働時間法制の具体的課題について)の80ページ、81ページの調査結果を見ますと、確かに適用労働者全体の満足度は高いものの、年収別のデータを確認すると、年収が低くなるにつれて満足度も低下しており、働き方そのものに対する満足度とは言い切れないのではないかと捉えております。また、健康状態についても、先ほどありましたけれども、これが「よい」といったところの回答については、あくまでも主観的な健康感でありますので、客観的なものではないことに留意が必要だと考えております。
また、参考資料No.1(各側委員からの主な意見の整理)の26ページにありますとおり、公益委員からは、データ解析によれば、裁量労働者の適用の有無ではなく、現場のレベルの裁量の有無が労働時間や健康、満足度を強く左右することが明らかになっているという発言もありました。
労働側としては制度の拡大ということではなくて、現場の裁量労働制適用労働者の裁量をいかに確保するか、適正運用を進める上で大きなポイントであると考えております。そうした適正運用を進める取組を強化すべきでありまして、改めて制度の拡大ではなく、そういった好事例の横展開を図ることが重要ではないのかと考えております。

・黒田委員(黒田祥子・早稲田大学教育・総合科学学術院教授)
先ほど何度か名前を言及していただきましたので、この裁量労働制調査にずっと関わってきた者として、少し意見を述べさせてください。
まず、今まで出た御意見の中であった、私も関わった回帰分析の結果についてです。裁量労働制を導入されている方は、健康状態が「よい」と答えている方が大半であるという御意見がございました。単純集計ではそうなのですが、より精緻な分析で見えてきたことは、裁量労働制適用者でも、裁量がない人たちは健康状態が悪いということが見えています。したがって、これは再三申し上げてきたことですけれども、裁量労働制を導入しさえすれば健康もよくなるということではないということは、念のため、もう一度申し上げておきたいと思います。
続いて、この裁量労働制を導入することによって、本当に創造性が高いアウトプットがたくさん生まれて労働生産性が上がっていくのかということに関してですが、私が知る限り、科学的なエビデンスはまだこれから蓄積が必要という状況です。ですから、先ほど原委員もおっしゃいましたけれども、データを集めて、本当にそうなのかというエビデンスをできるだけしっかり精査していく。その上で、本当に裁量労働制を導入したほうが日本全体にとってよいということが見えてくれば、それは新たな方向性をまたこの審議会でしっかりと議論していくということになるのだと思います。
例えば、先ほども、裁量労働制を導入したことで、「納得いくまで仕事をすることができて、モチベーションが上がった」といった御意見など、好事例のご紹介がいくつかございました。モチベーションの向上だけでなく、そうした方々ほど、実際にクリーンヒットを打つようなすばらしい生産性の向上が観察できるのか。そして、そういったアウトカムを出すために費やした労働時間は一体どれほどだったのか、ということもデータを用いて精査していく必要があろうかと思います。
さらに、先ほど御意見が出ていた過半数労働組合の話ですけれども、これもしっかり機能している企業さんで、本当にそこで働いている裁量労働制の方々の裁量が担保されているのかということと、結果、その人たちの健康や労働時間の実態を併せて把握することによって、今、行われている議論もクリアになっていくのではないかというふうに思います。

・古川委員(古川大・UAゼンセン会長代行)
裁量労働制について、これまでのこの分科会におきましても、使側(使用側)の委員から、「国際競争力の向上とか付加価値の創出の観点からも裁量労働制の拡充が必要」ということですとか、「先端企業を牽引するアメリカでは労働時間規制の例外措置対象者の割合が半数以上と高い」という御意見がございましたけれども、それがなぜ裁量労働制を導入すれば国際競争力の向上などが見込めるのかというのは必ずしも明らかではありません。
こういった国際競争力の向上や付加価値の創出は、労働法制の緩和ということで対応すべきものではなくて、各産業がどのように成長・発展していくか、これを考える産業政策等々で行うべきものです。裁量労働制を適用すれば、当然に労働者の能力発揮が促されて、付加価値の創出が可能になると言い切れるものではありませんし、ましてや裁量労働制以外の労働時間制度の下で働いている方々も、高い付加価値の商品やサービスを多数生み出しておられるのではないかと思います。
また、「労働時間以外をベースとした処遇が可能となるよう、裁量労働制を拡大すべき」という御発言もございましたが、いわゆる成果をベースとする処遇制度は、裁量労働制とは関係なく、当然導入は可能ですし、実際に多くの企業で既に導入されています。そもそも裁量労働制は、適用対象労働者の裁量に委ねた上で、あらかじめ定めた労働時間数は働いたものとみなす制度でありますし、労働時間以外の成果に応じた処遇を可能とするためのものではないということから考えますと、拡大すべき理由にはならないと思っております。
以上のことから、労側(労働側)としては裁量労働制を拡大する必要性は全くないと考えております。以上です。

・春川委員(春川徹・情報産業労働組合連合会書記長)
先ほど来、非対象業務との兼務についても適用を認めるべきではないかという御意見もありましたので、私からは改めて労側(労働側)としての意見を発言させていただきます。労働者にとって非対象業務を混在される場合は、これは言ってみれば職場あるいは使側(使用側)の都合で業務量や時間を増やすことができるようになってしまいます。そうなれば、本来、適用労働者である裁量労働制適用労働者が、自らの業務の遂行方法、そして本来の労働時間の配分を決定できなくなって裁量が失われてしまい、結果的にみなし労働時間制の下で、過大な長時間過重労働を強いられかねないということを懸念しております。この懸念が大変大きいために、非対象業務と兼務している場合には、裁量労働制を適用できないという現行の取扱いは変更すべきではないということを労側の意見として改めて申し上げます。

・鈴木委員(鈴木重也・日本経済団体連合会労働法制本部長)
先ほど古川委員から生産性向上の大変重要な指摘といいますか、議論のポイントについて御示唆いただいたと思います。私も裁量労働制の導入だけで生産性の向上ができるということを思っているわけではございません。御指摘のございました産業政策も重要だと思っております。その点は誤解なきよういただければと思っています。
ただ、私の信念に近いものかもしれませんが、付加価値を生み出す主体としては、働く方お一人お一人であり、働き手の働きがい、働きやすさが重要である、そうした思いを持っているところでございます。働きがい、働きやすさを整える環境については、様々あるわけでありまして、もちろん長時間労働の是正もそうでしょうし、あるいはテレワークとかフレックスタイム制の導入・拡充などもあろうかと思います。そういった環境整備、人への投資という言い方もできると思いますが、こうした人への投資は、生産性向上に結び付くには相当に時間がかかることもあると感じています。これは可視化することがなかなか難しいところではありますが、企業の経営者あるいは企業の人事担当者を含め、多くの関係者が働きがい、働きやすさを高められる方策を日々考え、取り組んでおり、それが働き手の満足度につながることなどを指標に改善を重ねておられると思っています。その意味で、裁量労働制の適用労働者の8割の方が満足しているという数字は、私としては大きな意味のある数字だと思っております。
年収が高いから満足度が高いのではないかというような御示唆もいただいていますが、各種調査でも、また私どもの調査でも、自律的に働けることでやりがいが高まった、あるいは、先ほど鬼村委員からの現場の生の声の通り、適用労働者の方が制度の裁量的に働く、自律的に働くことのよさを感じていただいている実態があり、この点は大変重要だと思っております。
これも再三申し上げて大変恐縮ですが、裁量労働制を入れなくても裁量的に働いてもらう、アサインの問題ではないかという御指摘は1つ考え方としてはあろうかと思っています。これを否定するものではございません。しかし、裁量労働制は多くの手続規制があり、本人同意など、かなり簡単ではない制度であると認識しております。企業としても相当法律の遵法に気を遣い留意しながら、裁量労働制を導入・運用されています。なかなか手間のかかる制度ではありますが、適用労働者の満足度あるいは効果を期待しながら導入・活用しています。導入・活用している企業様ほど対象業務の拡大を求める声も高いことは御理解を賜りたいと、思っています。

・首藤委員(首藤若菜・立教大学経済学部教授)
これまでの議論を伺っていて、裁量労働制をどう考えるのかというときに、従来の実態把握が、正確な実態が把握できているのだろうかというところをちょっと懸念します。多分、4象限に分かれるのではないかなと思っています。つまり、業務の裁量がある、なしというのがあって、縦軸にみなしの労働時間制の適用がある、なしというふうになって、業務の裁量もあるけれども、みなし労働でもあるという人と、業務の裁量はあるけれども、みなし労働がない人。さらに、業務の裁量がなくて裁量労働制のみなし労働だけがある人、両方がない人。
黒田先生の研究がまさにその一部だと思うのですけれども、それぞれの満足度であるとか労働時間であるとか生産性であるとか、そういったものを丁寧に確認して、対象業務の拡大が必要であるのかどうかというところを議論していかないと、裁量労働というふうな言い方で様々な裁量労働制、この4象限が混ざった形で議論されているところが少し問題かなと私は感じました。

・櫻田委員(櫻田あすか・サービス・ツーリズム産業労働組合連合会会長)
裁量労働制で働いている労働者について、満足度や健康状態も良好であることから、制度の拡充を求めるという意見が使用者側の委員から出されておりますけれども、今回も、資料No.2-2(労働時間法制の具体て課題について)の68ページ以降の調査結果を見ましても、裁量や適切な処遇が必ずしも確保されていないという実態が明らかになっているのだと思っています。
これまでも申し上げていて、繰り返しにはなりますけれども、82ページを見ますと、適用労働者における業務従事年数は3年未満が10~20%というところを占めておりまして、実態としても裁量をもって働くことができる労働者が適用されているのかということについては懸念があるのではないかと思っています。
また、適用労働者の裁量の有無に関しても、75ページにありますが、業務の遂行方法、時間配分などでは、裁量労働制の適用と非適用で裁量の程度には大きな差が見られていません。果たして適用労働者に十分な裁量が確保されているのかという疑問がある結果ではないかと受け止めています。
最後になりますけれども、みなし労働時間については、79ページを見ますと、約4割の適用労働者が自らのみなし労働時間数を認知していないという結果が出ています。その上、先ほど使用者側の委員の方から、みなしよりも実労働時間のほうが短い実態もあるという御発言もありましたけれども、調査結果では適用労働者の平均みなし労働時間数と平均実労働時間数を比較すると、実労働時間のほうが1時間弱長くなっているという結果が出ているところです。これはみなし労働時間数が働き方の実態に合致していないケースが少なくないということを示しているのではないかと思っています。
以上を踏まえますと、昨年の改正でみなし労働時間の適切な設定が必要であることの明確化、労使委員会等を通じた適正運用の確保といった対応も図られたところでありまして、今日もほかの労働委員からも発言があったとおり、こうした適正運用の取組を進めるべきでありまして、制度の拡充の必要はないということを重ねて申し上げておきたいと思います。

・冨髙委員(冨髙裕子・日本労働組合総連合会副事務局長)
今までの議論を聞いていて、特に使用者側からは、労働生産性向上といった観点で裁量労働制の拡充が必要という意見が多く出ていたかと思いますけれども、そのエビデンスがあまり明確ではないと印象を受けております。そもそも労働生産性ですけれども、分母と分子の関係でいえば、分母の労働時間が長くなれば労働生産性というのは低下するのではないかと思うところです。
黒田先生や原先生がおっしゃるとおり、我々としても分析が圧倒的に足りないのではないかと思っておりますし、そういった中で制度の拡充という流れに持っていくのは、かなり乱暴ではないかと感じておりますので、意見として申し上げておきたいと思います。

・山川分科会長(山川隆一・明治大学法学部教授)
本日の議題の(裁量労働制を含む)各テーマにつきまして、委員、それぞれのお立場から、現状でのデータの評価等も含めて、非常に貴重な御意見をいただいたところでございます。各テーマにつきまして御意見いただいた点は非常に重要なものでございますので、事務局(厚生労働省)では、本日の議論も踏まえまして、さらなる検討と資料の準備をお願いいたします。

第2回 日本成長戦略会議(経団連会長)筒井委員提出資料

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