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規制改革実施計画こそが厚生労働省の生々しい実務と直結した方針|裁量労働制の対象拡大

骨太の方針2026(原案)、規制改革実施計画(案)、日本成長戦略(案)、また自民党・日本成長戦略本部提言、日本成長戦略会議・労働市場改革分科会とりまとめ、以上5文書における裁量労働制変形労働時間制(1年変形労働時間制)などの労働時間法制の記述を比較すると、高市内閣や自民党や厚生労働省の今後の方針が(ようやくにして)理解することができます。


規制改革実施計画(案)がロードマップ

規制改革実施計画(案)には裁量労働制や変形労働時間制(1年変形労働時間制)の見直しに関する(他の4文書にはない)具体的記述が詳細に書かれています。

規制改革実施計画の記述こそが、厚生労働省が実際に動く際の実務的な方針(ロードマップ)に最も近いと言えます。

骨太の方針2026(原案)などの文書とは違い、規制改革実施計画は「厚生労働省がいつまでに、どの法律や通達を、どう見直すか」という具体的な担当府省と期限がセットで書き込まれています。厚生労働省の方針として、規制改革実施計画が最も実務に直結していると言えます。

そして規制改革実施計画には経団連の要望と、厚労省の「落としどころ」が詳細に書かれています。

非対象業務の混在をどこまで認めるのか

例えば(国会審議を必要とする法令ではなく)厚労省の通達(対象・非対象業務の混在不可)がハードルになっている、という極めて実務的・ピンポイントな課題が書かれています。

これは、厚労省が「労働政策審議会(労使が議論する場)」にかける際、あらかじめ用意している「これなら改正の現実味がある」という具体的な落としどころ(非対象業務の混在をどこまで認めるか等)が、そのまま計画に反映されていることを意味します。

規制改革実施計画こそが厚生労働省の生々しい実務と直結した方針です。骨太の方針(原案)などの他の4文書を見ていると、厚労省が「経団連の要望に沿って、裁量労働制の混在容認という極めて具体的な規制緩和の準備を、詳細なロジックと共に進めている」という一番重要な実態を見落とすことになります。

裁量労働制の対象拡大に向けた詳細な記述

規制改革実施計画(案)には裁量労働制対象拡大に向けて厚生労働省が取り組む内容について次のように詳細に書かれています。

労働基準法(昭和22年法律第49号)第38条の3に定める専門業務型裁量労働制及び同法第38条の4に定める企画業務型裁量労働制は、業務の性質上、業務遂行の手段や時間配分等を大幅に労働者に委ねる業務に従事する労働者を対象とする制度であり、適正な運用が行われれば、労使双方にとってメリ ットのある働き方の実現が見込まれるものの、厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」によると、専門業務型裁量労働制の適用労働者割合は期間を定めずに雇われている労働者全体の約1.1%、企画業務型裁量労働制の適用労働者割合は期間を定めずに雇われている労働者全体の約0.3%となっている。

これに対して、一部の企業や民間経済団体からは、以下に掲げる課題等への対応が必要であるとの声がある。

・裁量労働制は、令和7年に実施された日本経済団体連合会の「ホワイトカラー労働者 の裁量労働制適用ニーズ等に関する調査結果」によると、メリハリを付けて自分の ペースで働ける、就労時間が短くても一定額の裁量労働手当等を受け取ることがで きる、成果に応じた処遇が受けられる可能 性があるといった理由により、裁量労働制 を適用されていないホワイトカラー労働者のうち約3割が同制度の適用を希望しているとされている一方、「現行の裁量労働制の対象業務に関する解釈について」 (令和5年8月2日厚生労働省労働基準局労働条件政策課長及び監督課長連名通達)においては、対象労働者は、対象業務に常態として従事していることが原則であり、企画、立案、調査及び分析の業務とは別に、たとえ非対象業務が短時間であっても、それが予定されている場合は、企画業務型裁量労働制を適用することはできないこととされており、我が国の企業においては、企画業務型裁量労働制の対象業務に従事する労働者に全社横断的なプロジ ェクト型業務への参加や安全衛生委員会 への出席といった非対象業務も担当させ る場合があることから、対象業務と非対象業務の混在が認められていない企画業務 型裁量労働制を適用することが困難であること。

・規制改革推進に関する答申(令和7年5月)にも示されたとおり、スタートアップにおいては一人の労働者が複数の業務を担当することが一般的であることから、対象業務と非対象業務の混在が認められていない裁量労働制を適用することが困難 であるほか、企画業務型裁量労働制を導入 する際に必要な労使委員会の設置等が手 続負担等の面からスタートアップにおけ る制度導入の障壁になっていること。

・特定の顧客向けの商品・サービスの企画、 立案、調査及び分析を行った上で、それに基づき開発・提案まで行う業務に対しても 裁量労働制を適用するニーズがあるが、現行制度では適用が困難であること。

・グループ会社等で重複する人事・財務・経営企画などの間接業務を別会社に集約・標準化し、効率化を目指す、いわゆる「シェ アードサービス業務」がグループ化を進める企業を中心に活用される中、「シェアードサービス業務」の中でも企画、立案、調査及び分析を行う業務に対しても裁量労 働制を適用するニーズがあるが、現行制度では適用が困難であること。 一方、令和元年に実施された厚生労働省の「裁量労働制実態調査」においては、①労働基準法第38条の3第1項第2号に規定する 労働時間として算定される時間及び同法第 38条の4第1項第3号に規定する労働時間として算定される時間(以下「みなし労働時間」という。)と実際の労働時間の間に、専門業務型裁量労働制の適用労働者では平均して46分、企画業務型裁量労働制の適用労働者では平均して1時間8分の差がそれぞれ見られること、②専門業務型裁量労働制及び 企画業務型裁量労働制の適用労働者のそれぞれ約2割が裁量労働制の適用に対する満足度について「不満である」又は「やや不満である」と回答していること、③適用労働者の苦情の内容として「業務量が過大である」「労働時間が長い」「賃金などの処遇が悪い」「人事評価が不適切である」などの点が挙げられていることなどを踏まえ、制度の趣旨に沿っていない運用への懸念については、労働者の健康確保や長時間労働防止、適切な処遇確保等の観点から、制度の濫用防止措置について検討する必要がある。

特に、みなし労働時間については、企画業務型裁量労働制指針等において、対象業務の内容並びに対象労働者に適用される賃金・評価制度を考慮して 適切な水準のものとなるようにし、対象労働者の相応の処遇を確保することが必要とされていることを踏まえ、適切に設定されているかなど、実態を明らかにし、制度の趣旨に沿っていない運用の懸念がある場合には、適切な措置を講じて、未然に防止するべきであ る。

これに対して、公衆衛生学の観点からは、 裁量労働制の運用について、以下の指摘がある。

・長時間労働や概日リズムの乱れ、心理的に仕事から距離を置けないこと、裁量のない 労働者への制度の適用、努力に見合わない 報酬や評価等が生じた場合には、健康上の リスクとなりやすい。

・使用者には、正確な労働時間の管理や裁量に見合うタスクの設定、適切な成果の評価 が求められるほか、健康・福祉確保措置と して、勤務間インターバル(企画業務型裁 量労働制指針等に基づき、終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を 確保することをいう。)、深夜労働(労働基 準法第37条第4項に規定する時刻の間において労働させることをいう。)の回数を1か月について一定回数以内とすること、使用者が把握した労働時間が一定時間を超えた場合の制度適用解除、年次有給休暇の連続取得の促進等の予防的措置を講ずることが重要であり、さらに、時間外の連絡方法に関するルールの作成や仕事を与える管理監督者に対する心理的安全性に関する教育の実施、労働者に対する労働時間等の自己管理能力を醸成する教育の実施等も考えられる。

以上の声や指摘などを踏まえ、心身の健康維持と労働者の選択を前提に柔軟で多様な働き方を実現する観点から、厚生労働省は、健康確保、長時間労働防止、適切な処遇確保などの濫用防止措置を前提に、裁量労働制の対象の在り方について労働政策審議会にお いて見直しの検討を開始し、結論を得次第、 必要な措置を講ずる。

規制改革実施計画(案)

規制改革実施計画(案)(PDFファイル)

働き方・人への投資ワーキング・グループ

規制改革実施計画(案)に記載された裁量労働制に関する記述の背景には、規制改革推進会議・働き方・人への投資ワーキング・グループの議論があります。私がnoteに投稿した次の記事をお読みください。

規制改革実施計画(案)と裁量労働制の対象拡大と変形労働時間制手続き簡素化|Hiromasa Saeki

また規制改革実施計画(案)に「公衆衛生学の観点からは、 裁量労働制の運用について、以下の指摘がある」と書かれていましたが、この公衆衛生学の観点からの指摘については次のnote記事をお読みください。

裁量労働制と健康確保措置の在り方(堤 明純・北里大学医学部公衆衛生学教授) |Hiromasa Saeki

なお規制改革推進会議の働き方・人への投資ワーキング・グループ(構成員)メンバーは次のとおりです(2026年4月17日時点)。

座長は間下直晃(株式会社ブイキューブ 代表取締役社長CEO)。委員は冨山 和彦(株式会社経営共創基盤(IGPI)グループ会長)、中室牧子(慶應義塾大学総合政策学部教授)、堀天子(弁護士)。

専門委員は安中繁氏(社会保険労務士)、宇佐川邦子氏(リサーチセンター上席主任研究員)、工藤勇一氏(元校長)、菅原晶子氏(経済同友会常務理事)、鈴木俊晴氏(大学教授)、水町勇一郎氏(大学教授)、山田久氏(大学教授)。

労働者側(構成員)メンバーは一人もいません。

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