病院でも薬局でもない、「場所」のはなし
薬局で働いていると、
毎日たくさんの人に薬を渡します。
きちんと説明して、
質問にも答えて、
「お大事に」と声をかけて送り出す。
それは、薬剤師として
間違いなく“正しい仕事”です。
それでもある日、
ふとこんなことを思いました。
「薬は渡したけれど、薬剤師って他になにかできることないかな」
薬をもらったのに、残る“なんとなく”
その日も、
薬はきちんと渡しました。
説明も、おそらく問題なかったはずです。
でも、帰っていく後ろ姿を見たとき、
なぜか心に引っかかるものが残りました。
「この人の生活のこと、
どれくらい知れただろう」
「この薬は、
この人の毎日にちゃんと入りこめるだろうか」
薬そのものは正しくても、
“その人の暮らし”までは、触れられていない気がなんとなくしました。
きっと、
そんな経験をしたことがある人は
少なくないのではないでしょうか。
「ちゃんと診てもらったはずなのに」
「薬ももらったのに」
「大丈夫ですといわれたけど」
それでも、どこか不安が残る。
それは決して、
あなたの気のせいではないと思います。
“治す場所”とは違う場所が、必要なのかもしれない
病院は、病気を診る場所です。
薬局は、薬を受け取る場所です。
どちらも、とても大切な場所です。
でも、
病気になる前の不安や、病気になってからの不安
言葉にしにくい体調の違和感や、
「これくらいで相談していいのかな」という迷い。
そういったものは、
病院にも薬局にも、
うまく置けないことがあるように思います。
患者として病院や薬局に行くと、スタッフは忙しそうで、気軽に話しかけることはなかなか難しいですよね…
そんなとき、
“治す場所”とは少し違う、
“居ていい場所”があったらどうだろう
と、私は考えるようになりました。
「コミュニティナース」という考え方に出会って
そんな思いを抱えていたとき、
「コミュニティナース」という考え方を知りました。
それは、
病院の中だけではなく、
地域の中で、人の暮らしのそばにい続ける存在。
病気になってから関わるのではなく
困りごとが小さいうちから関わり
助けられる側が、助ける側にもなれる
その姿を知ったとき、
私は少し驚きました。
「これって、
私が違和感として感じていたことの“答え”かもしれない」
と感じました。
薬剤師も、“暮らしのそば”にいられる
一見すると、
薬剤師とコミュニティナースは
まったく違う存在のように見えるかもしれません。
でも、よく考えると、
薬剤師もまた
人の生活のすぐそばにいる医療職です。
・定期的に顔を合わせる
・長く関わることができる
・薬だけでなく、不安や迷いも受け取れる立場
本当は、
薬剤師も“暮らしの中の医療”に
もっと関われる存在なのではないのかな。
そう思うようになりました。
「薬を渡すだけ」で終わらせないということ
「薬を渡すだけでは足りない」と思うようになったのは、
薬の価値を下げたいからではありません。
むしろ逆です。
薬の力を、もっと活かすために、
“人の生活”を見る必要がある
と感じたからです。
なぜ飲めないのか
なぜ続かないのか
なぜ不安なのか
それは、
薬の問題ではなく
その人の生活や毎日の中にあるちょっとしたことが問題になっていることがとても多いのです。
“もう一つの居場所”という発想
もし、
病院でもなく
薬局でもない
もう一つの居場所があったら。
・体調が悪いほどではないけれど、なんとなく気になるとき
・誰に聞いていいかわからないとき
・ただ話をして、少し安心したいとき
そんなときに、
「ちょっと寄っていい場所」
が、地域にあったらいい。
私は、
薬局や薬剤師が、
そんな“居場所”の一部になれたらいいなと思っています。
正解はまだないけれど
私はまだ、
その形をうまく言葉にできるほど
完成された答えを持っていません。具体的な行動もしていません。
でも、
「薬を渡して終わりにしない薬剤師でいたい。生活の中で役に立てる存在になりたい」
という思いだけは、
少しずつはっきりしてきました。
医療を提供する側が、何かを提供してもらう側になる
もしかしたら、
これからの薬剤師は
“コミュニティナース”のような存在に
なっていくというのが一つの答えになるかもしれません。
おわりに
病院でも薬局でもない、
“もう一つの居場所”。
それは、
何かを“治す場所”というよりも、
人が安心して立ち止まれる場所なのかもしれません。
正解は、まだありません。
でも、
問いを持ち続けながら働くことそのものが、
きっと意味のあることなのだと思っています。
もし、
あなたが
「ちゃんと薬はもらったのに、なんとなく不安」
と感じたことがあるなら、
それは決して、あなただけではないと思います。
そして、
そんな気持ちを受け止められる場所を、
私は、地域の中に作っていきたいと思っています。
↓こちらが続編となります。良ければ是非ご覧ください。
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