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年金の手取りはいくら?額面から引かれる税金・社会保険料と目安(令和8年度)

「ねんきん定期便に書かれている金額が、そのまま振り込まれると思っていました」——年金の相談で、いちばん多い驚きがこれです。給料に額面と手取りがあるのと同じで、年金にも額面と手取りがあります。受け取るときには、税金と社会保険料が差し引かれてから振り込まれます。

この記事では、年金の額面から何が・どのくらい引かれるのか、自分の手取りをどう見積もればいいのかを、令和8年度(2026年度)の基準で1枚に整理します。年金実務の現場では、額面だけで生活設計を立ててしまい、あとで「思ったより少ない」と戸惑う方をよく見かけます。まず、引かれるものの正体を知るところからです。

1. 年金から引かれるのは、この5つ

年金からあらかじめ差し引かれる(天引きされる)のは、次の5つです。年金にかかる「税金」と「社会保険料」の2種類に分かれます。

税金

  • 所得税(復興特別所得税を含む)

  • 住民税(市町村民税・都道府県民税。森林環境税を含む)

社会保険料

  • 介護保険料(65歳以上)

  • 国民健康保険料、または後期高齢者医療保険料(75歳以上)

このうち社会保険料(介護保険料・健康保険料)は、所得が低くても原則かかります。一方、税金(所得税・住民税)は、年金額が一定以下ならかかりません。ここが手取りを大きく左右します。

なお、これらが年金から自動で差し引かれる(特別徴収)のは、その年の4月1日時点で65歳以上、かつ年金額が年18万円以上の人です。これに当てはまらない場合は、自分で納める(普通徴収)ことになります。

2. 所得税がかかる・かからないの分かれ目——公的年金だけなら「65歳以上で年205万円」が目安

年金にかかる所得税は、年金の額面がまるごと対象になるわけではありません。次の2つの控除を引いた残りに対してかかります。

  • 公的年金等控除:65歳以上は最低 110万円、65歳未満は最低 60万円

  • 基礎控除:令和8年度は最大 95万円(所得が低い人ほど大きい)

したがって、収入が公的年金だけの場合、65歳以上ならおおむね年205万円(110万+95万)までは所得税がかかりません。月あたりにすると約17万円です。平均的な年金額(単身で月十数万円)の方の多くは、この範囲に収まります。

さらに令和8年度(2026年度)からは、税制改正で基礎控除などが引き上げられ、年金から所得税が天引きされない基準額も引き上げられました。目安として、65歳以上は年214万円未満、65歳未満は年164万円未満なら、所得税は源泉徴収されません(改正前は205万円未満・155万円未満)。

⚠️ 住民税にも別途「非課税になる枠」がありますが、こちらは自治体や扶養の状況で基準が変わります。お住まいの市区町村で確認できます。

3. 「扶養親族等申告書」を出すと、所得税が軽くなる

年金額が一定以上の方には、毎年秋ごろ、日本年金機構から「扶養親族等申告書」という書類が届きます。これを出すか出さないかで、天引きされる所得税が変わります(令和8年10月以降は、住民税の控除を反映するため、届く対象が以前より広がっています)。

  • 提出した場合:各種控除が反映され、源泉徴収の税率は 5.105%(5%+復興特別所得税0.105%)

  • 提出しなかった場合:控除が反映されず、差し引かれる所得税が 実質およそ2倍 になることがあります

出し忘れても、確定申告をすれば払いすぎた分は戻ってきます。ただ、毎月の手取りを減らさないためには、届いたら出しておくのが確実です。

4. 自分の手取りの見積もり方——額面から引いていく3ステップ

手取りは、次のように「額面から引いていく」と見当がつきます。

  1. 額面(年額)を確認する……ねんきん定期便・ねんきんネットで分かります。

  2. 社会保険料を引く……介護保険料+健康保険料。金額は前年の所得と自治体で決まります(通知書で分かります)。

  3. 税金を引く……年205万円(65歳以上・年金のみ)を下回るなら所得税はかからないことが多く、上回る分にだけ2で引いた後の額に税率がかかります。住民税も同様に非課税枠を超えた分にかかります。

ざっくりした感覚では、年金額がそれほど高くない人ほど手取りは額面に近く(社会保険料中心)、年金額が高い人ほど税金の分だけ手取り率は下がります。正確な額は、送られてくる「年金振込通知書」に、額面・各天引き額・振込額がすべて書かれていますので、それが最終的な答えです。

5. 受け取り方を決める前に——比べるのは「額面」でなく「手取り」

ここが、いちばん見落とされやすいところです。

繰下げ受給(受け取りを遅らせて年金額を増やすこと)を考えるとき、多くの人は「額面がいくら増えるか」で得か損かを判断します。ところが、額面が増えれば、その分税金や社会保険料も増えるため、手取りは額面ほどには増えません。額面で「84%増える」計算でも、手取りベースでは増え方が緩やかになる、ということが起こります。

逆に、額面が低いうちは所得税がかからず手取り率が高い、という面もあります。いつから受け取り始めるか(繰上げ・繰下げ)を決めるときは、額面だけでなく、税・社会保険料を引いた後の手取りで比べることが大切です。

6. 確かめておきたい3つのこと

  • 自分の年金の額面(ねんきん定期便・ねんきんネット)——まず出発点の数字を知る

  • 公的年金だけなら年205万円(65歳以上)を超えるか——超えなければ所得税は基本かからない

  • 「扶養親族等申告書」が届いたら出す——出さないと所得税が実質2倍になることがある


年金は「いくらもらえるか(額面)」の次に、「実際いくら残るか(手取り)」で見ると、生活設計がぐっと具体的になります。そして、いつから受け取り始めるかの損得も、手取りで比べると答えが変わることがあります。繰上げ・繰下げ・働きながらを、自分の数字で並べて比べてみたい方は、こちらの記事も合わせてどうぞ。

👉 年金はいつから受け取る?自分の数字で試算する1枚(繰上げ・繰下げ・働きながらの分岐を、あなたのケースで比べられます)

退職前後は、年金のほかにも健康保険・失業給付・税金の手続きが重なります。何を先に片づけるかの全体の「急ぐ順」は、定年・退職後にやることリストに無料でまとめました。また、「そもそも年金は払い損では?」と不安な方は、あわせて年金は「払い損」なの?|"積立"じゃなく仕送り(賦課方式)。だから消えないけれど、目減りはしますもご覧ください。

※この記事は制度のしくみを整理したものです。金額や控除額は令和8年度(2026年度)時点のもので、実際の天引き額は前年の所得・お住まいの自治体・扶養の状況で変わります。個別の税額は税務署・税理士、年金額は年金事務所・日本年金機構の最新情報でご確認ください。特定の受け取り方をすすめるものではありません。

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