退職した年の確定申告|還付される人としなくていい人
年の途中で会社を辞めて、その年に再就職しなかった人は、確定申告をすると所得税が戻ってくることが多いです。理由は、毎月の天引きが「1年間ずっと同じペースで働く」前提の概算だからです。
ただ、これは辞めた人 全員がする話ではありません。年内に新しい会社へ入り直した人や、退職金の手続きを済ませた人は、しなくてよい場合もあります。まずは「自分はする側なのか」を切り分けるところから始めます。
それと、もうひとつ先にお伝えしたいことがあります。この「戻る申告」は、辞めた翌年の1月から出せて、しかも5年さかのぼれます。去年・一昨年に辞めたのに手をつけていない人も、まだ間に合うことがあります。
退職給付の数理計算をコンサルとして担当してきた経験から、退職前後の税金は「やり方」より先に「自分はどの入口か」を見分けるほうがつまずきにくい、と感じています。
まず切り分けます。あなたは確定申告する側ですか
辞めた年の確定申告は、次のどちらに当てはまるかで要否が変わります。
する側(戻ることが多い):年の途中で辞めて、その年に再就職しなかった人。年末調整を受けていないので、納めすぎた所得税が宙に浮いたままになっています。
しなくてよい側:年内に新しい会社へ入り直した人。前の会社の源泉徴収票を新しい職場に出していれば、新しい職場の年末調整でまとめて精算されます。
つまり「退職したら確定申告」ではなく、年末調整を受けたかどうかが分かれ道です。年の最後まで勤め先がなかった人ほど、申告で戻る可能性が高くなります。
なお退職金は給与とは別の計算になります(これは後半で説明します)。
なぜ「辞めた年」は税金を納めすぎているのか
毎月の給与から引かれている所得税は、概算で先に取られています。国税庁も「源泉徴収された所得税及び復興特別所得税の合計額は、必ずしもその人が納めるべき年税額と一致せず過不足が生じます」と説明しています。
天引きの金額は「このペースで12か月働く」前提で決まっています。ところが年の途中で辞めると、その年の給与の合計は想定より少なくなります。結果として、先に取られた税金が、本来納めるべき額より多くなりやすいのです。
たとえば、毎月の給与から所得税が8千円ずつ引かれていた人が、9月で辞めてその後は無給だったとします。天引きは「12か月ぶん働く」見込みで取られていたのに、実際の年収はその見込みより低くなります。年収で計算し直すと、先に引かれていた所得税のうち数万円が納めすぎだった、という形になりやすいのです(金額は人によって変わります)。
年末まで働いた人は、この差を会社が年末調整で清算してくれます。途中で辞めた人は、その清算が行われないまま終わってしまいます。だから自分で確定申告をして、納めすぎを取り戻す形になります。
還付申告は「3月15日」を待たなくてよい・5年さかのぼれる
ここが見落とされやすいところです。税金が戻る申告(還付申告)は、よく言われる2月16日から3月15日の期間を待つ必要がありません。
国税庁は「還付申告書は、確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます」としています。
つまり、
辞めた翌年の 1月から 出せます(2月16日まで待たなくてよい)。
5年間 さかのぼれます。去年・一昨年に辞めたのに忘れていた人も、まだ間に合うことがあります。
2月16日から3月15日は「納める人」の締め切りです。戻る人は急がなくてかまいませんが、5年を過ぎると権利がなくなります。心当たりがあれば、源泉徴収票を一度引っぱり出してみてください。
退職後に自分で払った保険料・控除も乗せられます
辞めたあとに自分で払ったお金も、申告のときに差し引ける場合があります。年末調整に間に合わなかった分を、ここで取り戻すイメージです。
退職後に自分で納めた 国民年金・国民健康保険(または会社の健康保険を任意継続した分)の保険料:本人が払った社会保険料として差し引けます。
生命保険料・地震保険料・扶養している家族の分 など、本来なら年末調整で出すはずだった控除。
確定申告でしか使えない 医療費控除・寄附金控除(ふるさと納税) も、同じ申告でまとめて反映できます。
辞めてから自分で年金や健康保険を払った人は、その領収書や通知をとっておくと、戻る額が変わってくることがあります。
退職金は「申告書を出したか」で扱いが変わります
退職金は給与とは別枠で、受け取るときの手続きによって、確定申告の要否が分かれます。
退職時に 「退職所得の受給に関する申告書」を出していた 場合:会社が正しい税額を計算して引いているので、原則として確定申告は要りません。退職金は分離課税で、その場で課税関係が終わっています。
出していなかった 場合:退職金の支払額に対して 20.42% がいったん源泉徴収されます。この場合は本人が確定申告をして精算する形になり、納めすぎなら戻ってくることが多いです。
多くの会社は、退職金を渡す前にこの申告書をその場で書かせてくれます。ただ、退職時はもらう書類が多く、出したかどうかの記憶があいまいになりがちです。見分け方は、退職金の源泉徴収票です。退職所得控除を引いたあとの少ない税額になっていれば申告書を出した扱い、支払額の20.42%がそのまま引かれていれば未提出の扱い、と読み取れます。判断に迷うときは、その源泉徴収票を持って税務署で確認すると確実です。
用意するものと、出す先を確かめます
最低限そろえておきたいのは、次のあたりです。
退職した会社からもらう 源泉徴収票(給与の分)。
退職後に自分で払った 国民年金・国民健康保険などの金額がわかるもの。
生命保険料控除証明書、医療費の明細など、差し引きたい控除の資料。
作成自体は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で画面に沿って入力していけます。自分の金額がいくら戻るか、個別の事情があってよく分からないときは、税務署や税理士に相談すると確実です。
戻る税金は、申告しなければそのままになってしまいます。辞めた年は手続きが立て込んで後回しになりがちですが、源泉徴収票が手元にあるうちに、一度「自分はする側か」を確かめておくと安心です。
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