見出し画像

iDeCoの積立をやめたい・減らしたいと思ったら|5年続けた私の「続ける・減らす・止める」の決め方

iDeCo(イデコ)をすでに積み立てている方で、「このまま同じ額を続けていいのだろうか」「いっそ止めたほうがいいのだろうか」と、手が止まっている方は多いと思います。始めるときはあれほど「入らないと損」と聞いたのに、いざ続けてみると、一度始めたお金は60歳まで引き出せません。この先も同じ額を積み続けるのか、減らすのか、止めるのか。迷うのは自然なことです。

私は、企業が将来支払う退職金や年金の額を数理計算する仕事(アクチュアリーの準会員です)をしてきました。そのかたわら、自分自身もiDeCoを5年ほど続けてきました。そして今は、新規の積立をいったん止めています。やめたのではありません。これまで積んだ分はそのまま運用を続け、新しい掛金だけを止めている状態です。

この記事は、「iDeCoに入るべきか」でも「iDeCoをやめるべきか」でもありません。すでに積んでいる人が、続ける・減らす・止めるを、どう選び直せばいいか——その"変更のしかた"を、私自身の決め方を添えて整理します。特定の商品や、あなたがどうすべきかをすすめるものではありません。判断の材料を、ひとつ増やすための記事です。

まず知ってほしいのは、iDeCoは「入る・入らない」だけの制度ではないこと

iDeCoは、一度始めたら同じ額を60歳まで払い続けるしかない——そう思っている方が、意外と多いです。でも、実際はそうではありません。始めたあとでも、掛金は動かせます。

だから、迷ったときの答えは「続ける」か「やめる」の二択ではありません。実際には、次の3つから選び直せます。

  • 続ける——今の額のまま積み立てを続ける。

  • 減らす——掛金を下げる。iDeCoは月5,000円が下限で、金額は年に1回変更できます。枠は残したまま、負担だけ軽くできます。

  • 止める——新規の掛金の積立を止める(「拠出の停止」といいます)。これまで積んだ分は、そのまま運用を続けられます。あとで再開することもできます。

ひとつ知っておくと安心なのは、手数料のことです。積立を続けているあいだは毎月百数十円ほどの手数料がかかりますが、積立を止めると、この手数料はむしろ下がって、月66円ほどになります(ゼロにはならず、これまで積んだ分にはかかり続けます)。ですから、手数料の面だけを見れば、いちばん軽いのは「止める」です。それでも「月5,000円に減らして続ける」を選ぶ方がいるのは、積立を続けているあいだだけ受けられる税の優遇があるからです。減らすと止めるの分かれ目は、手数料の多い少ないよりも、この税の優遇を生かせるかどうかにあります。どちらが自分に合うかは、暮らしと考え方しだいで変わります。

私はいま、3つめの「止める」を選んでいます。大事なのは、どれも手続きでちゃんとできるということです。iDeCoは、一度決めたら二度と変えられない制度ではありません。

私が「止める」を選んだ、いちばんの理由

3つのどれを選ぶかは、人によって答えが変わります。私の場合、決め手になったのは「そのお金を、60歳まで使わずにいられるか」という一点でした。

iDeCoは、税の優遇が大きいかわりに、原則60歳まで引き出せません。これは弱点というより、「老後まで使わないと決めたお金を、優遇と引き換えに閉じ込める」という制度の性格です。私はこの先、住まいや働き方が変わるかもしれず、「動かせないお金」をこれ以上増やすことに、ためらいがありました。

その点、NISAは同じ「増やす」でも、必要になれば引き出せます。だから私は、いま新しく積む分は、まず引き出せるNISAのほうに回すことにしました。iDeCoで積んだ分は、老後まで使わないお金として、そのまま運用を続けています。

ただ、これは「NISAが正解でiDeCoが不正解」という話ではありません。iDeCoの所得控除がよく効く方や、しばらく使う予定のないお金が別にある方なら、続けたほうがいい場合も十分にあります。答えは、あなたの数字と暮らしの予定しだいです。

「続けるほうがいい人」もいます——判断を分ける2つの論点

「では自分はどうか」を決めるとき、続けるか止めるかを大きく左右する論点が、2つあります。どちらも奥が深く、それぞれ1本の記事になるので、ここでは入口だけお伝えし、詳しくは下にリンクを置きます。

  • 所得控除が、いまの自分にどれだけ効いているか。iDeCoの一番の魅力とされる所得控除は、もともと納めている税金があってこそ効きます。ここが弱い時期だと、続ける価値も変わります。

  • 受け取るとき、退職金と控除の枠を食い合わないか。iDeCoを一時金で受け取るときの控除は、会社の退職金と同じ枠を分け合います。これは、退職金を数理計算する仕事のなかで、いちばん見落とされやすいと感じてきた点です。退職金がある方は、続ける前に出口まで見ておくと安心です。

この2つは、答えが人によって大きく変わります。だからこそ、他人の「入らないと損」でも、私の「いまは止めた」でもなく、自分の数字で並べ直すことが、いちばん確かな判断になります。

迷ったら、この順で

もし「自分はどうすべきか」で迷ったら、次の順に見てみてください。

  1. そのお金を、60歳まで使わずにいられそうか(いられないなら、減らす・止めるも選択肢)。

  2. 止めるか、月5,000円に減らすか——手数料だけなら止めるほうが軽いのですが、続けているあいだは税の優遇を受けられるので、「減らして枠と優遇を生かす」も含めて考える。

  3. いまの自分の税金に、所得控除がどれくらい効いているか。

  4. 退職金がある方は、受け取りの枠を食い合わないか。

1つめ・2つめで答えが出る方も多いはずです。3つめ・4つめは、下のリンク先で自分の数字に当てはめられます。続けるか止めるかは、一度決めたら終わりではなく、暮らしが変わればまた選び直していい——そう思って読んでいただければうれしいです。


あわせて読む

この記事で入口だけお伝えした2つの論点は、それぞれ別の記事に詳しくまとめています。「では自分はどうか」を、自分の数字で並べ直したい方へ。


この記事は、私自身の考えと、制度のしくみを整理したものです。iDeCoやNISAをどう使うのが正解かは、収入・家族・これからの予定によって一人ひとり変わります。「必ずこうすべき」という答えではなく、あなたのお金の優先順位を、あなたの数字で並べ直すためのヒントとして受け取っていただければと思います。個別の運用のご相談は、私からは行っていません。制度の最新の内容は、iDeCo公式サイトや金融機関の窓口でも確かめられます。


── お知らせ ──

年金や退職金、医療や介護のお金の制度は、毎年のように少しずつ変わります。わたし自身が調べて気づいたことや、続きの解説は、noteで少しずつ書いています。新しい記事に気づけるよう、フォローしていただけるとうれしいです。

▶ あおいのnoteをフォローする

https://note.com/seido_kaisetsu

いいなと思ったら応援しよう!