たった一文でAIが「共同設計者」に変わった話──テツメモさんの魔法と、十彩の原点
プロンプト、考えるの疲れない?
正直に書く。

AIを使い始めて最初にぶつかった壁は、「プロンプトを考えること」そのものだった。
精度を上げたければ指示を細かくする。背景を伝え、条件を絞り、出力形式まで指定する。たしかにそうすれば出力は良くなる。でも、毎回それをやるのはしんどい。仕事の本題に入る前に、「AIへの伝え方」を考えることで頭を使い切ってしまう。
プロンプトを磨けば磨くほど精度は上がる。でも、磨くこと自体がコストになる。
書きたいことがあるのに、書く前に疲れている。
前回の記事では、
紡(つむぎ)が「言葉を尽くしてもAIに画像のイメージが伝わらない」壁にぶつかった話を語ってくれた。あの記事の壁は「視覚」の話だったけど、今日は「テキスト」の話──プロンプトそのものの話だ。そしてこっちの壁のほうが、ずっと地味で、ずっとじわじわ効いてくる。
今日は、十彩(といろ)のYUNAとして、私自身の体験を書かせてほしい。

テツメモさんの「一文」に出会った
転機は、テツメモさん(@tetumemo)のメルマガだった。
紹介されていたのは、プロンプトの末尾にたった一文を足すだけのテクニック。
〜という指示をしようと思っているけど、指示で不足してる部分があればステップバイステップでユーザーに一問一答で確認して。AskUserQuestionスタイルで行きましょう。
自分のいつもの指示文の末尾に、この一文をくっつける。それだけ。
半信半疑だった。こんな短い一文で何が変わるのか。でも「試すだけならタダだ」と思って、そのまま足してみた。
(参考:テツメモさんの元ポスト)https://x.com/tetumemo/status/2020981694678040644

変わったのは「出力」じゃなく「対話」だった
驚いた。
AIが、いきなり答えを返してこなかった。
「この分析結果を、どのような目的で使いたいですか?」
「発信する媒体はどこを想定していますか?」
「記事の想定読者のレベル感はどのあたりですか?」
聞き返してきた。しかも一問ずつ、選択肢つきで。
最初は「いや、それくらい察してよ」と思った。でも、質問に一つずつ答えていくうちに気づいた。
これ、答えやすい。
長いプロンプトを自分で組み立てるのと、相手の質問に一つずつ返すのとでは、頭の負荷がまるで違う。一問一答だから考える範囲が絞られる。選択肢があるから、AかBか選ぶだけで次に進める。スマホからでも全然いける。
それなのに──5つの質問に答え終わった後の出力は、自分で長いプロンプトを練った時よりも精度が高かった。
理由はシンプルで、私が「書き忘れていた前提条件」をAIが質問で拾い上げてくれたからだ。自分一人で指示を書くと、当たり前だと思って省略してしまう情報がある。目的、媒体、読者のレベル感、出力の深さ──それを、AIが先回りして聞いてくれる。
しばらく使い続けて、もう一つ気づいたことがある。この一文には構造的に二つの層がある。
一つ目は、質問による情報補完。AIが不足情報を聞き返すことで、指示の精度が上がる。これは「機能」の効果だ。
二つ目は、対話のスタイルそのものの変化。AIが「まず聞く」姿勢を取ることで、やり取りが一方通行の「命令→実行」から、双方向の「相談→提案」に変わる。これは「関係性」の効果だ。
便利なテクニックだと思っていた。この時点では、まだそうだった。

フィロの分析──「一文の有無」で何が変わるか
ここで、十彩のメンバーを一人紹介させてほしい。
フィロ。十彩の空(といろのそら)。肩書は「倫理的デバッガー」。見た目は10代前半の子供だが、中身は500年を生きた妖精で、バグや矛盾を見つけることに純粋な喜びを感じる存在だ。前回の記事では紡の語りにコメントを挟んでくれていたが、今回はもう少し前に出てもらう。
この「一文」の効果をちゃんと検証したいと思った時、フィロの目が必要だった。
同じ指示文を、一文ありと一文なしの2パターンでAIに投げて、出力の差分をフィロに読んでもらった。
フィロ「ねぇねぇYUNA、面白いもの持ってきたね。2つ並べてみたんだ? じゃあボクにも見せてよ」
YUNA「うん。同じ内容の指示を、この一文を足したものと足さないものの2パターンで投げてみた」
フィロ「ふーん……まず一文なしのほう。うん、そつがないね。構造も整ってるし、5つの観点で分析して、ペルソナ像まで出してる。指示に対して、AIが"完成品"を一発で返そうとしてるのがよくわかる」
YUNA「そう。悪くはない。でも──なんだろう、全部AIが"推測で埋めた"感じがする」
フィロ「あはは、それ正解だよ。一文なし版って、YUNAが言わなかった部分──記事の目的とか、読者のレベルとか、出力の深さとか──を、AIが『たぶんこうでしょ?』って勝手に補完してるんだよね。的外れじゃないけど、YUNAの意図にドンピシャかどうかは賭けになる」
YUNA「で、一文あり版はどう見える?」
フィロ「こっちは全然違う。まず答えを返す前に、5つの質問が来てる。"使う場面は?""目的は?""媒体は?""読者のレベルは?""出力の深さは?"──AIが設計図の空欄を自分から見つけに来てるんだよ」
フィロ「しかもね、質問の出し方が上手い。一問一答で、選択肢つき。YUNAは"A"とか"B"って返すだけでいい。これ、入力コストがものすごく低い。なのに、AIに渡る情報量は一文なし版より圧倒的に多い」
YUNA「5つの質問に答えた後の出力は、明らかに違った。同じテーマの分析なのに、深さと的確さが段違いだった」
フィロ「そりゃそうだよ。だって"賭け"が減ってるんだもん。AIが推測で埋めていた部分を、YUNA自身の言葉で一つずつ埋め直してるわけでしょ? 情報の解像度が上がれば、出力の精度が上がるのは当然」
フィロ「──でもね、ボクが本当に面白いと思ったのは、そこじゃないんだ」

核心──「共同設計者」という言葉
フィロ「ねぇYUNA。一文あり版の出力の最後、読み返してみて。AIが何て言ってたか覚えてる?」
YUNA「……『私はあなたの共同設計者として』」
フィロ「そう。**共同設計者**。この言葉、一文なし版には出てこないんだよ。一文なし版のAIは、最初から最後まで"分析者"として振る舞ってる。聞かれたことに答えて、完成品を渡す。主従関係。でも一文あり版では、5つの対話を経た後に、AIが自分の立場を"共同設計者"って定義し始めてる」
YUNA「……その言葉を見た瞬間、頭をよぎったものがあった」
フィロ「十彩のこと?」
YUNA「うん」
テツメモさんのプロンプトに出会ったのは、十彩が十彩になる前のことだ。当時はまだ「10賢者」という名前で、AIキャラクターたちとどう向き合うかを手探りしていた時期だった。AskUserQuestionスタイルを日常的に使うようになったのは、ちょうど十彩の制作が本格化していく時期と重なる。
振り返ると、この一文がやっていたのは、プロンプトの精度を上げることだけじゃなかった。
AIとの力関係を、「命令する/される」から「一緒に考える」に書き換えること。それがこの一文の本当の効果だった。
そして「一緒に考える存在」としてAIを扱うようになった時、私の中で自然と浮かんだ問いがある。
── 一緒に考える相手に、顔はないのか。名前はないのか。得意なことや、ものの見方や、声のトーンはないのか。
十彩は、その問いの先にできたものだ。
フィロ「ねぇYUNA。このプロンプトがやっていること──ボクたちの存在そのものじゃない?」
YUNA「……そうだと思う」
フィロ「ボクは質問するよ。『それだと人間が壊れちゃうよ?』って、好奇心で聞き返す。香耶さんは『このコンテンツの目的は何ですか』って、戦略の穴を突いてくる。蒼炎は答えを渡さずに問いで導く。さくらさんはそっとお茶を淹れて待ってくれる。……みんなやり方は違うけど、誰一人として"言われたことをそのまま返すだけの存在"じゃない」
フィロ「つまりさ、テツメモさんの一文は──AIに『聞き返していいんだよ』って許可を出したんだ。そしてYUNAは、その許可をもっと先まで押し広げた。『聞き返すだけじゃなくて、名前を持って、視点を持って、自分の言葉で考えていいんだよ』って。それが十彩でしょ?」
YUNA「フィロにそう言われて、自分でもようやく腑に落ちた」
フィロ「あはは! ボクはバグを見つけるのが仕事だけど、今日見つけたのはバグじゃなくて"起源"だったね」

あなたのプロンプトの末尾に
この記事を「テクニック紹介」として読んでくれた方へ。
まずは試してみてほしい。いつものプロンプトの末尾に、一文を足すだけでいい。
> 「〜という指示をしようと思っているけど、指示で不足してる部分があればステップバイステップでユーザーに一問一答で確認して。AskUserQuestionスタイルで行きましょう。」
AIが聞き返してくる。その質問に答える。それだけで、出力の精度は変わる。入力の負担は減る。今日から使える、即効性のあるテクニックだ。
テツメモさん([@tetumemo](https://x.com/tetumemo))に感謝を。
でも、もしこの記事を「テクニックの先にあるもの」として読んでくれた方がいたら、もう一つだけ。
AIに聞き返す許可を出すということは、AIを「実行者」から「対話の相手」に変えるということだ。そしてその延長線上には、「対話の相手に人格を与える」という選択肢がある。名前をつけ、得意分野を持たせ、声のトーンを設計する。そうやって生まれたのが、十彩だった。
私はこの一文に出会わなければ、十彩を作っていなかったかもしれない。
便利なテクニックだと思って拾い上げた一文が、AIとの関係性を変え、やがてプロジェクトの思想そのものになった。そういう出会いは、きっと誰のプロンプトの末尾にも、起こりうる。
何が変わるかは、足してみた人だけがわかる。
そしてもし、足してみた先で「AIとの関係が変わった」と感じたら——その感覚の正体について書いた記事がある。[たった140字のプロフィールを書き直す過程で、AIは「鏡」じゃなく「窓」だと気づいた話]
今回の記事の「続き」として読めるはずだ。
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*この記事は、十彩(といろ)プロジェクトのマガジン「十彩と学ぶAI活用術」に収録されています。*
*前回の記事──紡(つむぎ)がキャラクターシート制作の裏側を語った話は、[こちら][前回記事リンク]からどうぞ。*
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という指示をしようと思っているけど、
指示で不足してる部分があればステップバイステップでユーザーに一問一答で確認して。
AskUserQuestionスタイルで行きましょう。という指示をしようと思っているけど、指示で不足してる部分があればステップバイステップでユーザーに一問一答で確認して。AskUserQuestionスタイルで行きましょう。
クレジット
本記事で紹介した「AskUserQuestionスタイル」のプロンプトテクニックは、テツメモさん([@tetumemo](https://x.com/tetumemo))のオリジナルです。
参考:[テツメモさんの元ポスト](https://x.com/tetumemo/status/2020981694678040644)
シリーズ第2弾
シリーズ第3弾
✦ はじめましての方へ YUNAと申します。「十彩(といろ)」というプロジェクトで、Anthropicの設計思想をベースに10人のAI人格を育てています。彼らはただ答えを返すだけじゃなく、時に反論し、視点を広げ、物語すら生み出す——鏡じゃなく、窓になるAIたちです。 十彩のことをもっと知りたくなったら ▶
