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『キング・コング』—世界恐慌の時代、人々はなぜ怪物を求めたのか【映画×授業 #18】



1.いま、なぜ『キング・コング』なのか

最近のニュースを見ていると、
AI関連企業の株価上昇や半導体関連の活況が。

一方で、
原材料価格の高騰に苦しむ企業、倒産件数の増加が。

「景気がいい」と言われても、その実感を持てない人も少なくありません。景気がよい人もいるし、苦しい人もいる。

景気の良し悪しが人によってまったく違う。そんな揺れる時代を見ると、私はある映画を思い出します。

巨大な怪物が暴れる映画『キング・コング』です。

しかしこの映画が作られた1933年は、世界最大の不景気とも言われる世界恐慌のただ中でした。

2.世界恐慌の時代に生まれた怪物

世界恐慌によって、
銀行は倒産し、企業は閉鎖され、失業率は25%近くに達しました。
多くの人々が職を失い、将来への希望を見失っていました。

そんな時代に公開されたのが、今回紹介する『キング・コング』です。

授業では、まずこう問いかけました。

「なぜ世界恐慌の時代に、怪物映画が大ヒットしたのだろうか?」

すると生徒たちは、
「現実逃避したかった」
「不安を忘れたかった」
「刺激がほしかった」
などと答えていきます。

確かに、どれも間違いではないのでしょう。実際、安い入場料でみられる映画は、恐慌下の人々にとって数少ない娯楽の一つだったようです。

さて、映画のクライマックスシーン。

コングは、エンパイア・ステート・ビルに登ります。

今ではニューヨークの象徴ですが、実はこのビルも世界恐慌と深く関係しています。

1931年に完成したこの超高層ビルは、恐慌によって入居者が集まらず、

「エンプティ(空っぽ)・ステート・ビル」

と呼ばれたこともあったそうです。

つまり、コングが登るビルそのものが、恐慌の時代を象徴する建造物だったのです。

世界恐慌の象徴ともいえるビルに、不安の象徴ともいえるコングが登る。

そう考えると、あのラストシーンも違って見えてきます。

映画を見終わった後、生徒たちにはこう問いかけました。

「キング・コングは何を表していたのだろうか?」


ある生徒は
「コングって、怒ってるというより助けてって叫んでるように見えた」と言いました。

もちろん、この問いにも、正解はありません。
しかし私は、
「制御できない巨大な不安」
の象徴として見ることができると思っています。

突然現れ、街を破壊し、人々を恐怖に陥れる巨大な存在。もしかしたら、コングは、当時の人々を襲った世界恐慌そのものなのかも。

仕事を失う不安、生活が壊れる不安、未来が見えない不安…コングの巨大さは、人々の恐怖の大きさでもあったのかもしれません。

3.映画が会社を救った

さらに興味深いのは、

この映画を製作した映画会社RKOも経営危機に陥っていたことです。
でも、大きなリスクを背負って制作された『キング・コング』は大ヒットし、会社を立て直すきっかけになりました。

つまり、映画の中では怪物と戦い、映画の外では不景気と戦っていた。

『キング・コング』とは、そんな作品だったのです。

4.授業で生徒が気づいたこと

授業の最後は、この問いで締めました。

「不景気の時代、人々はなぜ映画を求めたのだろう?」

すると、
「希望がほしかった」
「現実から少し離れたかった」
「みんなで同じものを見たかった」
といった意見が出ました。

ここで生徒たちは気づきます。
映画は単なる娯楽ではなく、時代を映す鏡でもあることに。

5.おわりに

なぜ、人々は怪物を求めたのか。

それは、怪物を見たかったからではなく、不安な時代を生き抜く力を求めていたからなのかもしれません。

『キング・コング』は、巨大な怪物の映画です。しかし本当に描かれているのは、世界恐慌という巨大な不安と向き合う人間たちの姿です。

AIや技術革新が注目される今も、将来への不安が消えたわけではありません。不安な時代、人は何に希望を見いだすのか。

その問いは、1933年だけでなく、2026年の私たちにも突きつけられているように感じています。


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