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「1000億円の無駄」が江戸を救った?―教師の休日が、いつか教室の「防衛線」になる話|休み時間#10

#休み時間シリーズ (第10話)
学校の先生や教育全体に関する
あるあるな話題を取り上げていきます。

※このシリーズは、どの回からでも読めます。


「これ、授業で使えるかな?」
教師なら誰しも、休日にどこかへ出かけても、ついそんな思考が頭をよぎってしまうのではないでしょうか。

先日、品川の御台場を巡るツアーに参加したときも、最初はそんな「職業病」を抱えてのスタートでした(笑)しかし、そこで出会った歴史の事実は、私の予想を遥かに超えるメッセージを投げかけてくれたのです。


1.1年4か月、人力だけで海を埋めた「執念」

最初に参加したのは、学芸員の方による御台場に関する講演会。

そもそも御台場とは、幕末に外国船の来航に備えて造られた人工の島です。
ただ、驚いたのは、その圧倒的な「熱量」でした。

当初、計画されたのは11か所。実際に造られたのは6か所。
重機など一切ない時代、すべては人力です。
関東一円や伊豆から大量の資材を運び、海を埋め立て、高度な技術で石垣を積む。

この巨大な人工島を、当時の人々は96万両(現在の貨幣価値で約1000億円)かけ、わずか**「1年4か月」**で完成させたといいます。

「現代の技術では、この金額、このスピードで同じものは造れません」

学芸員の方のその言葉に、江戸の人々が抱いていた「国を守らなければ」という切実な危機感と、凄まじい執念を見た気がしました。

また、講演の中で、最も私の心に刺さった言葉があります。

「結局、この台場では、ただの一度も軍事行動は行われませんでした。だからこそ、江戸は火の海にならずに済んだのです」

最新鋭の砲台を備え、莫大な予算と人員を投じて造られた人工島。
しかし、そこから一度も実弾が放たれることはありませんでした。
黒船来航の時も、戊辰戦争の時も…

では、この人工島の建設は「無駄」だったのでしょうか。

結果として、戦争を防ぐことができていたのだとしたら、
また、より多くの犠牲者を出さないために、あえて大砲を打たなかった
のだとしたら、その役割は完璧に果たしていたのではないでしょうか。

「使われなかったことこそが、守り抜いた証である」

その逆説的な評価に、私は思わず背筋が伸びる思いがしました。

2.教科書の「外側」にある、暮らしの匂い

【写真①:弥次さん喜多さんも食べた(?)品川宿御前】

講演のあとは、江戸前の食材を使った食事をいただきました。
素朴ながらも、素材の味が濃い。
「当時の人たちも、このお弁当を食べて東海道を旅していたのかな?」
と想像すると、歴史が単なる「年号の羅列」ではなく、自分の身近な物語として伝わってきました。

そして、食事の後は、いよいよ屋形船に乗って御台場の見学。
約1時間の海上ツアーでした。 

【写真②:乗船した屋形船 女将さんの見事なガイドに聞き入りました】


【写真③:現在上陸禁止の第6台場 白く見えるのはすべて鳥の糞だそうです!】 
【写真④:見事に石が積みあがった第3台場の壁面は圧巻】

3.教師の“趣味の学び”は、巡り巡って誰かのために

ツアーとしての行程はここまで。

でも、ここまで来たら、やはり第3台場に上陸したくなり、
この後は個人行動を。
実際に台場に到着すると、教科書で見る「ペリー来航」の文字だけでは決して味わえない、圧倒的な重みを感じました。

迫り来る黒船への不安と、それでもこの国を守ろうとした人々の覚悟が、
まさに風にのって伝わってくるようでした。

【写真⑤ 海に向かって設置された砲台跡】


【写真⑥ 最新のAR技術により、スマホの中に復元できる当時の大砲】

今回の見学は、授業のためではありませんでした。
でも、景色を見ながら、私の頭は勝手に
「これをどう授業で子どもたちに伝えようか」一色に。

長年、教師という仕事をしていると、つい「これは仕事に役立つか?」
「教材になるか?」と効率を考えてしまうのです。

けれど、一見すると仕事に関係のない「趣味の学び」や経験こそが、
教師という人間の厚みを作るのではないでしょうか。

御台場が「使われなかったけれども江戸を守った」ように、
私たちが蓄えた「すぐには使わない知識や経験」もまた、
いつか教室で子どもたちと向き合うときの、
目に見えない「余裕」や「深み」という名の防衛線になってくれるのでは
ないでしょうか。

だから、私はこれからも、自分の「好き」を追いかけようと思います。

前回の記事(「無駄な経験」なんて、ひとつもなかった。-教師の私が、学生時代の自分に感謝していること【休み時間#9】|三四郎
でも書いた通り、教師の“趣味の学び”は、決して無駄じゃない。
プロレス観戦も、映画鑑賞も、食べ歩きも・・・
その豊かな時間が、いつか教室で、誰かの心を動かす一言に変わると思っています。

※皆さんは最近、仕事とは関係ない『自分の好き』にどっぷり浸かった時間はありますか?よろしければ、 ぜひコメントで教えてください


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▼休み時間シリーズ

前回:
第9話:無駄な経験なんてなかった

次回:
第11話:EVILに学ぶ教師の覚悟

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