「優しい先生」を卒業する。新日本プロレスの極悪ヒール・EVILに学ぶ教師の覚悟|休み時間#11
#休み時間シリーズ (第◯話)
学校の先生や教育全体に関する
あるあるな話題を取り上げていきます。
※このシリーズは、どの回からでも読めます。
「プロレスの話?」と思われた方も、少しだけお付き合いください。これは、学校や職場など、「人を育てる場所」にいるすべての人に通じる話だからです。
今、プロレス界がある噂で揺れています。新日本プロレスの絶対的ヒール(悪役)、EVIL選手が世界最大の団体・アメリカのWWEに移籍するのではないか、というニュースです。
大谷翔平選手や久保建英選手が海外へ渡るように、超一流選手が高みを目指すのは世の流れかもしれません。しかし、プロレスにおける「大ヒール」がいなくなることは、それ以上にその世界の構造を根本から揺るがす大きな出来事だと私は感じています。
なぜなら、プロレスという物語は「ヒール」がいなければ成立しないからです。
1.ヒールがいてこそ、ヒーローは光る
プロレスの歴史は、常に「強すぎる悪」との戦いでした。
戦後、巨漢の外国人ヒールを力道山がなぎ倒す姿に日本中が熱狂し、タイガー・ジェット・シンの無法ぶりにアントニオ猪木が立ち向かう姿に人々は拳を握りました。
いつの時代も、憎たらしいほど強いヒールがいてこそ、ベビーフェイス(ヒーロー役)の輝きは増すのです。
現代におけるその象徴が、EVIL選手でした。
彼は「キングオブダークネス」という異名の通り、「黒」を基調としたコスチュームを着用しています。
そして、試合になると、レフェリーの目を盗んでは首を絞め、パイプ椅子で殴りかかる。さらには、仲間とともに、パウダー攻撃や金的攻撃などの反則三昧。
その徹底した「悪」の姿に、団体には「EVILがいるならもう見ない」「子供が泣く」といった苦情が殺到したといいます。
しかし、そんな「最悪のヒール」をヒーローが打ち倒したとき、会場には最高級のカタルシスが訪れます。
象徴的だったのは、2026年1月4日。柔道金メダリストのウルフ・アロン選手がEVILをしめ落としたあの瞬間です。ウルフ選手が一夜にしてプロレス界のヒーローになれたのは、間違いなくEVILという「深い闇」がそこに存在したからでした。
【参考:EVILの「悪」の凄みを知るには】
👉 ウルフアロン対EVILの激闘をフル動画で見る
※新日本プロレスの公式配信サービスへのリンクです。彼の「嫌われっぷり」があるからこそ、勝利が輝くことが分かります。
2.学校現場に「ヒール」は必要か
この構図は、学校現場にもそのまま当てはまると私は考えています。
皆さんの学生時代を思い出してみてください。一人くらい、ものすごく怖くて、いつも厳しい先生がいませんでしたか?
当時は「なんであんなに怒るんだ」と恨んだかもしれません。でも今思えば、あの先生はあえて「ヒール役」を買って出ていたのかもしれません。
組織としての教育には、役割分担があります。
ヒール役の先生が毅然と「ダメなものはダメ」と悪役を引き受けてくれるからこそ、その後に優しく寄り添う先生の言葉が、生徒の心に深く染み込んでいく。
誰かが「壁」にならなければ、物語(成長)は始まらないのです。
3.「好かれたい」という自分勝手な欲求
実を言うと、初任の頃の私は「ヒール役」から逃げていました。
生徒に好かれたい一心で、厳しいことを言うのを避け、物分かりの良い「優しい先生」の仮面を被っていたのです。面倒で嫌われる役割は、他の厳しい先生に押し付けていたのかもしれません。
しかし、ある時気づかされました。
生徒の本音は「自分たちに媚びてほしい」ではなく、
「ダメなときは、きちんと叱って導いてほしい」だったということに。
プロレスのヒールは、ファンに一切媚びません。どれだけ罵声を浴びても、徹底して悪役を演じきります。それは、彼らが「プロレスという格闘芸術を最高のものにする」というプロ意識を持っているからです。
教師も同じではないでしょうか。
「人気者でいたい」という自分勝手な欲求を捨て、嫌われることを覚悟で、生徒の成長のために立ちはだかる「壁」になる。それこそが教師のプロ意識ではないかと思うようになりました。
4.二つの顔を持つという「愛」
それに気が付いてからの私は、学級担任として二つの顔を持つことを意識しています。
ヒール的な自分:
「ダメなことはダメ」と、嫌われることを覚悟で毅然と言う。
ベビーフェイス的な自分:
良いことは全力で褒め、嬉しいことは一緒に喜ぶ。
この両輪があって初めて、生徒との信頼関係は本物になります。
「嫌われ役」を演じるのは、精神的にも削られます。それでも、彼らがいつか「ヒーロー」として社会へ羽ばたくための踏み台になれるなら、それは教師としての本望なはずです。
プロレスは、私に教師としての「覚悟」を教えてくれました。
EVIL選手がもし海を渡ったとしても、私は日本の教室というリングで、今日も「嫌われ役」を厭わない覚悟で教壇に立ちたいと思っています。
皆さんの周りにも、今思えば「愛のあるヒール」だった先生はいませんか?
もしよろしければ、コメント欄で教えていただけると嬉しいです。
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▼休み時間シリーズ
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第10話:1000億円の無駄が江戸を救った
次回:
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