”お金”よりも”時間”を!-教員採用試験の史上最低倍率に、38年現場にいた私が思うこと【休み時間#2】
#休み時間シリーズ (第2話)
学校の先生や教育全体に関する
あるあるな話題を取り上げていきます。
※このシリーズは、どの回からでも読めます。
先日、驚くニュースが耳に入ってきました。
「2025年度、教員採用試験の倍率が史上最低になった。」
ニュースは淡々と数字を並べますが、その裏では、静かで深刻な“教育の崩壊”が進んでいるように思えてなりません。
本来この【休み時間】シリーズは、もっとゆったりと教員について語るつもりでした。しかし今回は、どうしても避けて通れないこの問題を取り上げます。
1.数字が語る「もう限界だ」というサイン
文部科学省が発表した数字は、現場の悲鳴そのものでした。
倍率:2.9倍(過去最低)
受験者数:10万9,123人(過去最少)
採用者数:3万7,375人(過去最多)
(※文部科学省発表**【注1】**)
採用枠は増えているのに、受験者は減っている。この「冷たい数字」のギャップこそが、今の学校現場の苦境を物語っています。
2.文科省の対策と、現場の「ズレ」
文科省も、教職課程の単位削減やDX化、部活動の地域移行、給与改善など、様々な施策を進めています。どれも必要なことかもしれません。
しかし、38年間現場にいた私の実感は違います。
「ちがうちがう、そうじゃないんだよ……」
と、思わず呟いてしまうのです。
3.現場を壊しているのは「授業数過多」構造
今、現場を最も苦しめているのは、授業の「持ち時数」の多さだと思っています。(もちろん学校規模や教科によって時数は異なりますが…)
全国調査では、中学校教員の33%が週20コマ以上を担当し、25コマ以上を持つ教員の78%が「授業が充実していない」と回答しています(School Voice Project調査【注2】)。
ある自治体では、標準的な持ち時数が「週23コマ」に達しています。
週29コマの授業枠のうち23コマを授業に充てると、どうなるか。
空き時間は1日わずか1コマ。
その1コマに、授業準備、会議、事務仕事、生徒対応が入ってくる。
すると教材研究は夜、帰宅は深夜。
日によっては教材研究ができず、生徒と向き合う余裕もありません。若手が育つ前に燃え尽きてしまうのも、無理はないのです。
4.「1.5倍の増員」が教育を劇的に変える
もし、教員数を1.5倍(+47万人)に増やせれば、持ち時数は週15〜17コマ程度まで軽減されます。これは、教員が「質の高い授業ができる」と考える理想のラインに重なります。
これに必要な財源は約3.8兆円(総務省・文科省資料より試算**【注3】**)。今年度の一般会計予算114.4兆円の約3%強です。国家の根幹である教育を守るためのコストとして、これは本当に「高すぎる壁」なのでしょうか。
5.「お金」で心は戻ってこない
教職を志す人の動機は、いつの時代も「子どもが好き」「社会に貢献したい」が上位です。一方で「給与が良いから」という理由は、最下位に近いのが現実です**【注4】**。
お金はいらないなんてきれいごとは言いません。
ただ、給与を数パーセント上げるよりも、
「目の前の子どもと向き合う時間」を返すこと。
これこそが、最大の働き方改革であり、志望者を戻す唯一の道ではないでしょうか。
結論:未来を変える、たった一つの改革
教員不足の本質的な解決は、「持ち時数の削減」でから始まります。
授業が減れば、教員は息をつける。
授業が良くなれば、子どもたちの目が輝く。
余裕が生まれれば、若手も辞めない。
魅力があれば志望者も増える。
「もっとお金がほしい」ではなく、「もっと時間がほしい」。
これが、38年間現場を見続けてきた私の、偽らざる本音です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
38年という長い時間を学校現場で過ごしてきたからこそ、今の状況には強い危機感を持っています。でも、解決の糸口はきっとあるはず。皆さんは、この「持ち時数」の問題や、今の働き方についてどう思われますか?
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▼休み時間シリーズ
前回:第1話:教員のダイエットはなぜ無理ゲーなのか
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【出典・脚注】
【注1】文部科学省「令和7年度 公立学校教員採用選考試験の実施状況」
【注2】School Voice Project「教員の働き方調査 2024」
【注3】総務省「地方公務員給与実態調査」、文部科学省「教職員定数改善資料」より試算
【注4】教職課程大学協会「教職志望動機調査」
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