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学びが動いているその瞬間に……

この話の続きです


あゆみは,子どもの学びに間に合っていたのか

私は,あゆみについて考えるとき,いつもこの問いに戻ります

あゆみは,子どもの学びに間に合っていたのだろうか

教師は,子どものために一生懸命,所見を書きます
その子のよさを見つけ,課題を整理し,保護者に伝わるように
言葉を選びます
学期末,遅くまで残って,何度も書き直すこともあります

その努力を否定したいわけではありません
むしろ,その努力の中には,教師の誠実さがあります

でも,子どもから見たとき,
その言葉は,学びの途中で受け取れるものだったのでしょうか

「もう少し文章題をがんばりましょう」
「計算は正確になってきました」
「自分の考えを説明できるようになりましょう」

そう書かれたとき,子どもは,
「明日から何をすればいいのか」
を具体的に分かるでしょうか

それよりも,文章題でつまずいたそのときに,
「問題文のどの言葉を見ればよかったのか」
「図にすると何が見えるのか」
「友だちの考えをどう参照すればよいのか」
が返ってくる方が,
子どもの学びには役立つのではないか……

あゆみを見直すということは,
単に紙をやめることではありません

評価を,
「あとでまとめて渡すもの」から,
「学びの途中で返すもの」へ変えていくことなのです

デジタルだからできること,教師だからできること

ここで,デジタルの活用も大きな意味をもちます

デジタルドリルや学習支援ツールは,
正誤をすぐに返すことができます
どこで間違えたかを記録できます
繰り返し取り組むことができます
自分のペースで進めることもできます

即時フィードバックという点では,
デジタルには大きな力があります

ただし,デジタルがすべてをしてくれるわけではありません

正誤は返せても,
その子がなぜそこでつまずいたのか
どんな考え方をしていたのか
どんな支援があれば次に進めるのか
その子が今,不安なのか,飽きているのか,挑戦しているのか

そこを見取るのは,やはり教師の仕事です

デジタルは,反応を早く返す道具になります
教師は,その反応を意味づけ,子どもの次の学びにつなげる存在です

つまり,デジタルと教師は対立しません

デジタルが即時に返す
教師が見取り,問い返し,支える
子どもが自分で修正する

この循環ができると,評価は子どもの学びを前に進める力になります

フィードバックは,教師からだけではない

学習途中で返ってくる反応は,教師からだけではありません

友だちのノートを見る
友だちの考えを聞く
同じ問題への別の解き方を比べる
自分の考えを説明してみる
聞き手の反応から,分かりにくさに気づく

これらも,フィードバックです

自由進度学習や個別最適な学びでは,
子どもが一人で黙々と進めているように見える場面があります

でも,本当に大切なのは,
必要なときに他者を参照できることです

「友だちの考えを見てもいい」
「途中までの考えを出してもいい」
「分からないところを聞いてもいい」
「同じところで悩んでいる子と話してもいい」

こうした環境があると,
子どもは反応を受け取りながら学ぶことができます

他者参照は,カンニングではありません
自分の学びを調整するための大切な情報です

評価が早く返ると,子どもは自分で調整し始める

すぐに反応が返ってくると,子どもは自分で学び方を変え始めます

「このやり方では分かりにくかったから,図にしてみよう」
「友だちの説明を見たら分かった」
「もう一度,前の問題に戻ろう」
「次は先生に聞く前に,ヒントカードを見てみよう」
「この問題はできたから,説明まで書いてみよう」

これは,教師に言われて動くのとは少し違います

自分で反応を受け取り,
自分で状況を判断し,
自分で次の行動を選ぶ

つまり,フィードバックは,自己調整する力を育てます

評価が早く返ることは,
子どもを急がせることではありません

子どもが自分の学び方を修正できるようにすることです

学校改革としての形成的評価

形成的評価という言葉があります

少し難しく聞こえるかもしれませんが,
本質はとてもシンプルです

学習の途中で,
子どもの状態を見取り,
子どもに必要な情報を返し,
教師も子どもも次の行動を変えていく

これが形成的評価です

評価は,最後に成績をつけるためだけにあるのではありません
学びの途中で,学びをよくするためにあります

この考え方に立つと,授業の見え方が変わります

教師は,教えたかどうかだけを見るのではなく,
子どもが今どこにいるかを見る……

子どもは,点数を待つだけでなく,
今の自分の学びを確かめながら進む……

評価が,授業の最後にあるものから,
授業の中にあるものへ変わっていきます

これは,もう学校改革です。

なぜなら,評価の位置が変わると,
授業のつくり方も,子どもの学び方も変わるからです。

すぐに帰ってくる反応

「すぐ返ってくる反応」が,学びを前に進めます

子どもは,学びながら反応を求めています

合っているのか。
どこで違ったのか。
次に何をすればいいのか。
どの方法なら進めそうなのか

その反応が,学期末まで返ってこないとしたら,
子どもの学びには間に合わないことがあります

評価は,あとでまとめて渡すものではありません
学びの途中で返すものです。

もちろん,記録としての評価や保護者への説明は必要です
でも,それだけでは,子どもの学びは動きません

子どもの学びを動かすのは,
そのとき,その場で返ってくる具体的な手がかりです

「ここまではできているよ」
「次はここを見てみよう」
「この考え方を使ってみよう」
「もう一度,戻ってもいいよ」
「友だちの考えを参照してみよう」

そんな反応があると,子どもは次の一歩を選べます

あゆみを見直すということも,
評価をなくすことではありません

むしろ,評価をもっと子どもの近くに戻すことです

子どもの学びが動いているその瞬間に,
評価もまた,子どものそばにある

そんな学校へ,少しずつ変えていきたいのです……

次……


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