この国の王を殺すには 第二話
地下の浮浪児たちは人攫いに怯えていた。人攫いにつかまったら、どこに売り飛ばされるかわかったものではない、というのが最たる理由だ。それはたしかに、その通りだとエミルは思う。エミルも最初に売り飛ばされたあの変態男の屋敷では散々な目にあった。地下道の暮らしのほうがよほど快適なくらいだ、
(けど、ここにいるだけじゃレナルド・シャノンにはたどりつけない)
どうやったらレナルドにたどりつけるだろう。そう考えたとき――貴族の間を渡り歩くというのが、一番の近道に思えた。
それからというもの、エミルは体をこぎれいにするよう努めた。下水ではなく川面で体を洗い、髪は長いと面倒だから定期的に短く切りそろえ、貴族たちが珍しがるであろう猫の耳と尻尾には、あらん限りの財産を搾り出して買った石鹸を使って丹念に手入れした。
やがて十五になる歳に、遅い初経がおとずれた。このとき、エミルは意を決する。
「行っちゃうの? エミルちゃん……」
ミミとはすっかり仲良しになって、冬の夜は当然のように同じ毛布に包まって眠るようになっていた。そんな夜半にエミルが数少ない手荷物を整理しているのをみて、彼女はなにかを察したようだ。もとが聡明なミミである。単純なエミルの思考くらい、簡単に読めていたのだろう。
「エミルちゃんがいないと、寂しいな……」
「ありがとう、ミミ」
生まれてはじめて、誰かに感謝の気持ちを伝えることに、心を砕いた。
「ミミにはすごく感謝してる。ミミはあたしのクソみたいな人生の中ではじめて出会えた、いちばんだいじな友達だ」
「うん。わたしも、エミルちゃんはいちばんの友達」
ミミはやっぱりいつものように、困った微笑を浮かべたまま、夜の街に出て行くエミルを見送ってくれた。
「わたしたち、なるべく、なるべく、幸せになれるといいね」
それがミミとの別れだった。
エミルはあまり賢くないが、まるで頭が足りないわけではない。貴族の間を渡り歩いてレナルド・シャノンにたどりつく可能性がどれほど低いか、理解していないわけではなかった。
(でも、あのまま地下暮らしを続けていたら、絶対に会えない)
まず、レナルド・シャノンについて知ることが重要だ。
(ミミの口ぶりだと、貴族ならだいたいはレナルド・シャノンのことは知っているって感じだった……。上流階級とかいう、貴族もどきもいるみたいだから、確実に貴族にあたしを買い取らせないといけない)
そのためには、自分を取り扱う人攫いの存在が欠かせない。底辺の人攫いではだめだ。それなりの家に自分を紹介してくれる人攫いでなくては。幸い、自分には売りがある。七呪いの一族の末裔という証の、この猫耳と尻尾が。
(それにここは王都だ。王都なら、それなりの人攫いがいるかもしれない……)
エミルは広場に刺さっていた杭と杭の間に、ぼろぼろの麻縄を結びつけ、繋いだ。
(今は社交の時期じゃない。だから座長も、あのサーカス団も、王都にはいないはず)
そうしてエミルは思い切り脱ぎ捨て、大きく息を吸い込む。
「さあさ、皆様! お立会い~!」
底抜けに明るい声を出した。これもまた、サーカスで学んだ生きるすべだ。
「ここにいるは世にも珍しい七呪いの一族の末裔だよ! 猫の耳に猫の尻尾、髪は白くて目は真っ赤! サテこの猫娘、いったいどんなことができるかな?」
とことん道化を演じるのだ。明るく楽しく、能天気に。
するとすぐさま人が集まってきた。猫の耳と尻尾を持つエミルを見て、ひとびとは驚きの声をあげる。
「ありゃあ、地下で暮らしていたガキじゃねえのか」
「七呪いってなに? あの耳と尻尾……本物?」
「えー! なにあれ、すっげー! 流行の奇術とかなんか?」
エミルはひょいっと縄を繋いである杭の上に片足で飛び乗った。「かわいげのある演技」。三、四歳の頃に習得した芸当だ。
「猫娘はこの縄の上を歩けるかな? そーれ、一歩……二歩……三歩!」
三歩目でわざとぐらついてみせる。観客たちから心配そうな声があがった。
サーカスでは針金の縄を使っていたので、麻縄ではすこし揺れやすい。それにもう何年もこのようなことはやっていなかったので、体に若干のブランクが感じられた。
しかしエミルは、演技をやめない。
「よん、ほ……おおっと!」
転びそうに横にかしいで、そのまま高く跳び上がる。わあ! とひとびとの歓声があがった。
エミルはそのまま逆立ちになり、手だけで麻縄の上を軽々と進む。
――わああ!
観衆は大喜びだ。だがこれ以上、無料でサービスするわけにはいかない。エミルはそのまま手だけで綱を渡り終え、最後にくるりとまた宙返りをし、飛び乗ったのとは反対側の杭の上に立った。
にっこりと笑顔を浮かべて、ひらひらと手を振る。
「明日も同じ時間にこれをやるよ! よければお友達と見にきてね。それじゃあ、またね!」
麻縄をそのままに、脱ぎ捨てた外套だけをつかんでエミルは駆け出した。それこそ全力疾走だった。今ここで、適当な安い人攫いに目をつけられてはたまらない。
何度も何度も路地裏を曲がって、人がついてきてないことをしつこいくらいに確認してから、外套を目深にかぶる。そのままぴょん、ぴょんと転がっていた荷物の箱を蹴って高いところへと跳び乗り、民家の屋根の上にたどりついて、ようやくほっと息をついた。
(意味があるかはわからない。けれどなにもしないよりはいい)
――そうして同じことを、エミルは五日ほど繰り返した。
観衆の中にはコインを投げてくれる者もいて、エミルとしてはひどく助かったのだけれど、この作戦が功を奏したと思えたのは、五日目の芸が終わってからだ。
「猫ちゃんやーい」
「なんでこんなところで芸をしてるのー?」
「サーカス団にでも入ったらー?」
麻縄を回収しながら、大げさな身振り手振りで、エミルはいった。
「えぇっ? なんでこの猫はこんな芸をしているのかって?」
空々しいほど大きく両手を広げて、満面の笑みを作ってみせる。
「それはこの猫娘が、貴族様のおうちに飼われたいからだよーっ!」
どっと観衆がわく。その中に、ちらりと目つきの悪い男がいた気がした。が、このときのエミルは既に広場の人気者になっていたため、はっきりとは視認できなかった。
(きたか?)
自分の意思を伝えることができたので、その日は特別に宙返りを三度繰り返して、自身の身体能力の高さを披露をした。
芸が終わって、頭を下げ、落ちているコインを拾い集め始めると、ひとびとが徐々に去っていく。コインを集めて外套を羽織ろうとしたところ――先ほど見かけたと思った、目つきの悪い男が音もなく近付いてきた。
(きた!)
思い切り笑顔を作って、かわいらしく小首をかしげる。
「人攫い?」
「はははっ」
いきなりたずねられた男は、エミルの言葉に軽く笑った。痩せていて無精ひげの、乾いた印象を受ける男だった。
「俺はそんな安い真似はしねえ。なあ、猫のお嬢ちゃんよ。貴族様のおうちに飼われたいってのは、本当か?」
「うん、本当」
「だったらそういうコネを作ってやることができるぜ、俺ぁ」
「その前にひとつ教えて」
エミルの声色が変わる。目つきが急に鋭くなったことに、男は興味を引かれたようだった。
「レナルド・シャノンにあたしを買ってほしい。どうすればいい?」
「はははははっ!」
男はまた声をあげて笑った。
「おいおい、天下のレナルド様にかぁ? そいつぁ足で針の穴に糸を通すようなもんだぜ」
「だったらレナルド・シャノンに繋がるような人にあたしを売って」
「まさか、自分からレナルド様に買われたくてここで売り込んでいたのか? 度胸があるモンだな、七呪いの一族ってのは」
「無理ならあんたに用はない」
背を向けようとしたエミルの細い肩を、男の無骨な指がつかんだ。
「まあ、そうことを急ぎなさんな。そうだなあ……あんたは野良猫のツラだがそれなりにかわいい顔をしているし、なにより珍しい猫娘だ。一等価値の高い闇オークションに出してやることはできる。そこなら貴族様もわんさか来るし――」
「そのオークションって、いつどこでやるんだ」
「ええっと、三ヶ月後に、北のメヴェリー地方だな。――ああ」
男はにやりと笑みを作った。
「おまえさんは運がいい。メヴェリー地方は、レナルド様の領土のすぐ近くだ。もしかしたら、奇跡でも起きれば、レナルド様に買われる可能性も、ゼロではないかもしれないな」
結論から述べるに、エミルの一世一代の賭けは成功した。
オークション会場に向かう途中、サーカス時代の自分を知っている貴族に買われたらどうしよう、またあの変態親父のような貴族に買われたらどうしよう、といろいろ迷いはあったけれど、もうエミルはあの頃のエミルとは違う。鎖で繋がれたって逃げ出してやる自信はあった。大丈夫――あたしならやれる。
壇上に立たされて、エミルは自分を売り込んだ。跳んだり、踊ったり、媚態をついたり。散々サービスをして、とにかく位の高い貴族に買われようと必死になった。
その結果、彼女は途方もない額で落札された。彼女を買い取ったのは、ひとり暮らしの貴族の老女だった。甥しか身内がおらず、その甥も老女の金で遊び歩いているため家に寄り付かず、猫のようなかわいらしい娘がいたら引き取りたいと思っていたらしい。そんな彼女にとって、エミルはまさにうってつけの存在だった。
老女の家で、エミルはうまれてはじめて安穏とした生活を送ることができた。なにものにも脅かされることのない平和な日常というものを、エミルははじめて体感した。
老女は死期が近いのか、すこし話すとすぐに具合が悪くなって寝込んでしまう。しかしそういったときほど、エミルは彼女の寝台のそばにいることを求められた。彼女は自分の過去の話をぽつり、ぽつりと語り、あのころはよかった、あのころは素敵だったと昔を懐かしんでばかりいた。はじめはうんざりしていたエミルだったが、老女の話には奥行きがあり、きいていて斬新で、やがて真剣に老女と向き合うようになった。
「あなたは、すこし言葉遣いを改めないといけませんね」
やぶからぼうに、老女がいった。エミルは悪態をつく。
「知るか、そんなん」
「だってあなた、オークション会場でいっていたじゃない。貴族の家の猫になりたい、って。貴族の家の猫ならば、もうすこし礼儀をわきまえなくては」
「いい子にしなきゃいけないときくらいはいい子にするさ。あんたはいい子のふりをした嘘のあたしと一緒にいたほうが楽しいのか?」
「そうねえ。それは、どうかしらねえ」
生意気を叩くエミルにも、老女はくすくすと笑ってみせた。
「なあ……」
エミルは慎重に問いかけた。
「あんたはどうしてあたしを買ったんだ?」
この老女は、サーカス一座の座長とも、エミルを辱めたあの変態男とも違う。金でエミルを買ったことは同じだというのに。
エミルの問いに、老女はおっとりと瞳を細める。
「あなたが若くて、きれいだったから」
エミルはきょとんとした。
「きれい? あたしが? そんなん、生まれてから一度もいわれたことなんかないよ」
「あなたはきれいよ。そして、みずみずしい生命力に満ち溢れている……。この子となら人生の終わりを締めくくってもいいと、そう思ったからあなたを買ったの」
老女は甥以外に身内がいない天涯孤独の身の上で、親兄弟はもちろんのこと、夫や腹を痛めて産んだ子どもたちにも先立たれてしまったらしい。残された膨大な財産をただ漠然と持て余し、金を使うことしか脳がないような甥にそれを相続させるくらいなら、と、このところ無駄遣いに興じているのだとか。エミルもまた、彼女の無駄遣いのひとつなのだろう。
老女は自分のことばかり語りたがったが、エミルが聞いたことには答えてくれた。この国の貴族制度、公侯伯子男、エミルが近付きたいレナルド・シャノンはそのどれに該当するのか。
「レナルド様は、国王陛下の庶子だけれど、お母様がランブロウ公爵家のお嬢様だから、特別に大公位を賜っているわ。ランブロウ公爵家はとても大きな貴族だから……、その後ろ盾もあって特別に王位継承権も持っているの。普通はね、エミル。フィルヴィス教の教えでは、正妻以外との間に生まれた子は、親に付随するなんの権利も受け継ぐことができないのよ。レナルド様は特別陛下に愛されているの」
愛されている? はっ。反吐が出る。
「陛下ってのは、王様だろ。なあ、王様に会ったことはあるのか?」
「あるわ。何度かね」
「どんなやつだ」
要は王を殺せば手っ取り早いわけだが、跡継ぎがいる限りこの国に終わりは来ない。それでもこの国の王について、エミルは知りたかった。
「さあ。どんなかたかまでは、わからないわ……。それほど多くお話をしたことはないから。ただ……今はとても死に近いところにいらっしゃると聞いたけれど」
「それ、どういうことだ?」
「ご病気らしいの。それも伝染する、原因不明の病」
(――やった!)
エミルは心の中で拳を握り締めた。この国の王は、ほうっておいても死んでくれる。だとしたら跡継ぎを殺せば完璧だ。
「では、今度はわたしがあなたに質問する番です」
老女が咳き込みながらいった。
「あなたはどうして、貴族の家に買われたかったの?」
「そんなん――」
決まっている。いつかレナルド・シャノンに近付くためだ。老女はどうやら爵位の中ではいちばん下の、男爵家の人間らしい。そこからレナルド・シャノンに近付くにはどうしたらいいか、彼女のもとでさぐる気だった。実際に、この老女の元へ来てエミルは彼についての情報を得ることができた。あとはレナルド・シャノンに近付く手段を考えなくてはならないわけだが――。
(なんてこと、このばあさんにはいえないし……)
けれど老女の澄んだ目を前に、まるっきり嘘をつくことができなかった。
「……レナルド・シャノンに……」
搾り出すようにいった。
「いいたいことがあるから……」
「そう」
嘘はつかなかった。いいたいことがあるのは本当だ。死ね、と。頼むから死んでくれ。なんならあたしに殺されてくれ。いいや、殺させてもらう。
「それならわたしが死ぬ前に、なんとかして話を進めてみましょう」
エミルは虚を突かれた心地になった。なんとかして話を進めるとは、いったいどういうことなのだろう。そもそもこの老女は、ひとりで死ぬのがいやで自分を買い取ったのではなかったのか。
後日、エミルは荷物をまとめるように使用人伝いで老女からの伝言を受け取った。なんとまさか、レナルド・シャノンの家にエミルをあずからせることに話がまとまったらしい。
「奥様は『あなたは若い女の子だから、夜伽のお相手をすることになるかもしれないけれど、それでもよければ』とおっしゃっていました。いかがいたしますか?」
使用人は真面目くさった顔でいった。どうやら執事という立場らしい年かさの男だ。老女とミミの話をまとめるに、おそらく彼は労働者階級という、エミルたち隷属民よりほんのすこしだけ上の立場らしい。
「よとぎってなんだ」
「男の方の夜のお相手をすることです」
「ああ」
なんとなく察した。要はあの変態男の家でされたことを、レナルド・シャノンの元でされるだけという話だろう。
「そこは別に、どうでもいい。それよりばあさんへ、最後に挨拶くらいしたいんだけど」
「奥様はもうお話することができません」
執事は眉ひとつ動かさない。
「代わりに手紙をあずかってまいりました。こちらになります、どうぞ」
差し出された白い封筒を手に取り、エミルは困惑してしまった。これは彼女が、生まれてはじめて受け取る手紙になる。
(なんだよ、ばあさん。挨拶くらい、いいじゃんか)
がらにもなく寂しさがこみ上げてきた。
(あたし、字なんて読めないよ……)
そして老女の厳命により、彼女が息を引き取るよりはやく、エミルは馬車に乗せられた。向かう先は、シャノン大公家。――レナルド・シャノンその人に会えるのだ。
**
そうして話は、冒頭に戻る。
シャノン大公家に連れてこられて、はじめてみるほど広い浴室に放り込まれ、使用人たちに体をごしごし洗われて、絹のワンピースを着させられ、寝室で長い間、待たされた。夜更けにそっとレナルドがやってきたので、エミルは唯一だけ持ち込みを許された小さな旅行鞄から、幾重にも布をぐるぐる巻きにして隠していたナイフを取り出して――他に中身は、老女からもらった手紙しかない――レナルドにつかみかかっていったのだ。
「そ、れ……」
――俺もこんな国、めちゃくちゃになればいいと思っていたところだ。
「本当か……?」
「きみに嘘をついてもなんの得にもならない」
命が尽きかけようとしていた老女とは異なり、レナルド・シャノンのうつくしさは暴力的なまでだった。月明かりを背負う美貌の王の庶子――エミルの欲しいものなど、すべてを持っているこの男が、なぜ自身の国をめちゃくちゃにしたいと考えるのか。
「まあ、俺の思想を語ったところで、腹の足しにもならないだろう。きみは夕食をとっていないんだって? なにか食べるか?」
「ごまかすな――本当かどうかってきいてるんだよ!」
「だから、本当だといったろう」
呆れたように、けれどそれさえも楽しむように、レナルドはいった。
「きみからすれば、俺はなんでも持っている特別に幸福な人間にみえるかもしれない。けれど、そうだな、一緒に宮廷入りすればわかるだろう。この国の根底がどれほど腐りきったものか。次の社交期から、きみを宮廷に連れていく。いいか、きみは宮廷の道化になるんだ」
「道化?」
「比喩ではない、文字通りの道化だ。宮廷にはだいたい三、四人ばかりの道化がいる。彼らはなんのてらいもなく、宮廷のあらゆる箇所でおどけてみせる。ひとびとはそれを馬鹿にし、笑う。笑われるのが道化の役目だ。七呪いの一族の末裔であるきみなら、きっと宮廷の愚か者たちは喜ぶだろうよ」
「それって、あたしがそのシミオンってやつと、その息子を殺せる機会がいくらでもあるってことなのか」
「ご明察。王位継承者、第一位、二位を殺すのだから重罪になるだろうが、いいか、死刑というものは国の大臣がサインをしない限り執行はされない。たとえ王を殺しても、その場で即時死刑にはならないんだ。くれぐれも殺す順番を間違えるな、王が死んでから、シミオン、そしてその息子、だ。そうすれば王位は空白のまま、大臣もきみを殺す書類にサインができなくなる。その隙を縫って俺が即位する。そうして、国をめちゃくちゃにする」
「め、めちゃくちゃにするって」
熱を帯びてきたレナルドの言葉に、エミルのほうが圧倒されてしまった。
「どうやってめちゃくちゃにするんだ」
「まずは大国に無理な戦争をしかける。当然、負ける。そのあとも同じことを繰り返す。逆らう者は権力で黙らせる。革命がおきてくれればもっといい。そうしているうちに国は滅びるだろう」
「あんたにそんなことができるのか」
「できる」
レナルドは真剣なまなざしでうなずいた。
「俺が王になったのなら、必ずそうしてやる」
「…………」
「どうした、猫の子」
嘲笑するように畳み掛けられた。
「怖気づいたか」
「お――」
エミルは鋭い視線で、レナルドを睨みつける。
「怖気づくもんか。――やるよ、やってやる。あんたと手を組むよ」
「そうこなくっちゃ」
レナルドは機嫌をよくしたようだった。
「はじめて仲間ができて心強いよ。よろしく、相棒。どうか仲良くやっていこう」
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