感動は設計できるのか?①それは「瞬間」ではなく「構造」だった
このシリーズは、前編「顧客アンケートから始まった話」で見えてきた“例外”を土台にしています。初めての方は前編からどうぞ。
顧客アンケートを回し続ける中で、ある違和感に気づいた。
満足の声ではなく、
“感動した”と語られる瞬間が、妙に似ているのだ。
視力矯正手術を受けた患者様の声を追っていくと、
感動の記憶として繰り返し語られるシーンは、大きく3つあった。
■ 感動が生まれていた3つの瞬間
一つ目は、手術直前の前室。
緊張がピークに達するその瞬間に、スタッフが何気ない会話で不安をほどいてくれたこと。
二つ目は、手術中。
視界が遮られ、不安が最大化する中で、看護師がずっと手を握っていてくれたこと。
三つ目は、手術翌日の視力検査。
視力が回復した喜びを、検査員がまるで自分のことのように一緒に喜んでくれたこと。
一見すると、バラバラの出来事に見える。
だが、そこには明確な共通点があった。
それは、
患者の感情が大きく動く“ピーク”で、人の関わりが体験の印象を大きく左右しているということだった。
■ 感動はどこで生まれるのか
そこで、ひとつの仮説にたどり着いた。
感動は、サービスの質そのものだけで決まるのではなく、
感情が大きく揺れる瞬間に、どう関わるかによって生まれるのではないか。
多くの現場では、こう考えられている。
・ミスを減らす
・オペレーションを安定させる
・標準化を徹底する
もちろん、それは重要だ。
だが、それだけでは「不満を減らす」ことはできても、
人の感情を大きく動かすところまでは届きにくい。
では、感動はどこから生まれるのか。
それは、完璧なオペレーションそのものからというより、
感情が揺れる“瞬間”への関わりから生まれる。
・不安が最大化する直前
・孤独が最も強くなる瞬間
・喜びが溢れ出すタイミング
この“ピーク”に対して、人がどう関わるか。
そこに、体験の価値を左右する要素がある。
■ 感動はどこに潜んでいるのか
そしてもう一つ、重要なことがある。
これらの行為は、もともとマニュアルに書かれていたわけではない。
現場のスタッフが、それぞれの判断で行っていた、
いわば“例外的なふるまい”だった。
もちろん、すべての感動が例外的なふるまいから生まれると単純化したいわけではない。
それでも、強く記憶に残る体験の多くは、
標準化された手順の外側で起きていた。
つまり、感動とは
標準の中だけで完結するのではなく、例外の中に潜んでいる。
■ 顧客アンケートの役割
顧客アンケートは、満足度を測るためのものではない。
そこに現れる“例外”を拾い上げ、
その裏にある構造を見抜くための装置である。
このとき初めて、アンケートは
「評価のためのツール」から「進化のための装置」へと変わる。
では、この“感動の構造”は、再現できるのだろうか。
次回は、
「感動を設計する」という試みについて書く。
