見出し画像

低く、静かに、横たわる建築── ホテル ネストで整う時間

空港のそばにありながら、
なぜか「急がなくていい」と感じる場所があります。

ホテル ネストは、
泊まるための施設というより、
時間の流れを整えるように設計された建築です。

仁川国際空港から車でほど近い場所にありながら、
ホテル ネストは、いわゆる「空港ホテル」の
イメージから大きく距離を取った存在です。

私たち夫婦が、ホカンス― Hotel × Vacance
(遠くへ行かず、ホテルそのものを目的に過ごす滞在)で、

繰り返し訪れている
お気に入りのホテルでもあります。

ここには、
「どこかへ行くための前後に泊まる場所」ではなく、
ここにいる時間そのものを味わうための空間があります。



「設計とは、体験を先に決めること」


ホテル ネストは、
単一の設計者による作品というより、
明確な役割分担のもとでつくられたホテルです。

  • 全体コンセプト・デザインプロデュース
    JOH & Company

  • 建築の実施設計・技術的設計
    종합건축사사무소 건원

この体制が意味するのは、
「建物をどう建てるか」以前に、
「どんな体験をつくるか」が先に設計されているということです。


永宗島の空と風景に寄り添うように建つ、ホテル ネスト。 滞在の時間は、この佇まいから始まっている。

デザインを統合した人物について


ホテル ネストのデザインプロデュースを担った
JOH & Company の代表が、조수용(ジョ・スヨン)氏です。

ここでは詳述しませんが、
彼は建築・インテリア・グラフィック・ブランディングを横断し、
空間とブランド体験を統合的に編集するデザイナーとして知られています。

ホテル ネストにおいても、個々のデザインより先に、
「どう過ごされる場所にするか」という視点が貫かれています。

(※ 조수용氏については、別のnoteであらためて整理予定)

https://product.kyobobook.co.kr/detail/S000214758045


なぜ、低く、横に広がる建築なのか


多くの空港近接ホテルが
高層・タワー型であるのに対し、
ホテル ネストは低層・水平展開を選んでいます。

  • 建物は分節され

  • 中庭や水盤を挟み

  • ゆったりと敷地に広がる構成

見上げると、空が大きい。 このホテルでは、視線が自然と外へ向かう。

これは景観上の演出ではなく、
滞在の質を整えるための建築的判断です。

海と空の気配を、
上から「眺める」のではなく、
同じ目線で感じる

その姿勢が、このホテル全体に通底しています。


動線と中庭がつくる、時間の感覚


エントランスからロビー、
客室へと進む中で、
空間は一気に開かれません。

過剰な装飾を排したロビー空間。 建築そのものが、場の雰囲気をつくっている。
一階ロビーの窓際ラウンジ。 光と景色に向かって、自然と腰を下ろしたくなる場所。

少しずつ視界が変わり、
光や水の気配が重なり、
自然と呼吸が整っていく。

中庭や水盤は装飾ではなく、
建築にリズムと間を与える装置として機能しています。


朝日がよく似合うホテル

このホテルで、個人的に最も好きなのは朝の時間です。

客室から海の方向を見ると、柔らかな朝日が差し込み、
空と水面の境界が、ゆっくりと溶けていく。

まるで時間が止まっているかのような感覚を覚えます。
過剰な演出はありません。

だからこそ、自然そのものが主役になる空間が成立しています。


バルコニーに立つと、 海と空の境界に、朝日がそっと現れる。
部屋のバルコニーから眺める朝日。 ここでは、一日の始まりさえも急かされない。


↓↓ インスタグラムでも何度か紹介させていただきました。





Design Hotels™という評価軸

ホテル ネストは、
Design Hotels
の正式メンバーでもあります。

Design Hotels™ は、
世界60か国以上・約300軒前後のホテルを厳選する
デザインホテルの国際的コレクションです。

評価の基準は、
豪華さや規模ではなく、

  • 建築・デザインの一貫性

  • その土地との関係性

  • 記憶に残る滞在体験

ホテル ネストは、
派手さではなく、
建築の姿勢そのものによって選ばれたホテルだと言えます。

韓国においても、
Design Hotels™の文脈で語られるホテルは多くなく、
その点でもこのホテルは特別な立ち位置にあります。


朝日を受けながらの朝食。 一日の始まりが、自然と整っていく。
夜になると、建築は風景から「光の箱」へと変わる。

ホカンスという使い方に、これ以上ない相性


  • 空港からすぐ

  • 移動の負担が少なく

  • チェックイン後は外へ出なくても完結する

ホテル ネストは、
ホカンスという過ごし方と非常に相性の良いホテルです。

何かを「する」ためではなく、
ただ「いる」ための場所。

それを、建築がきちんと支えています。

海ビューデラックスタイプ。 ベッドに横になったまま、海の気配を感じられる客室。




建築が残す余韻


ホテル ネストは、
強いアイコン性を前に出す建築ではありません。

一枚の写真で語り切れるホテルでもありません。

それでも滞在後には、
「また来たい」という感覚が、
静かに、しかし確実に残ります。

それは、このホテルが
見せるためではなく、
過ごされる時間を設計した建築
だからだと思います。


数分ごとに飛び立つ飛行機。 ここでは、それさえも風景の一部になる。

おわりに


空港のすぐそばに、
これほど静かで、抑制の効いた場所があること。

ホテル ネストは、
韓国のデザインホテルの中でも、
とても稀有なバランスを持った存在です。

次にまた、
特別な理由がなくても休みたくなったとき。
私たちはきっと、またこのホテルを選ぶでしょう。

このホテルのように、
建築が「語らずに効いている場所」は、
実は韓国にいくつか存在しています。



空間や暮らしを、少し立ち止まって眺めたい方へ。
この記録は、これからも続きます。


いいなと思ったら応援しよう!

Shinji よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!