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【事業再生#12】家族が商品横流し?|多店舗展開美容室の再生プロジェクト失敗事例vol.2

破産寸前の会社に、希望の道は残されているのか──。

実際に再生支援の現場に立ち会った私が、再建に挑んだ企業の「リアル」を記録します。

今回のクライアントは中国地方の美容室多店舗経営法人。
今回は再生の失敗事例になります。

その事業再生失敗事例を3話に渡って綴ります。"机上の空論ではない"事業再生の記録です。

経営に悩む方、再建を模索する方、支援を仕事にする方にとって、現場感のあるヒントとなれば幸いです。

▼美容室多店舗経営法人の再生失敗事例の第1話はこちらから▼



▼そのほかの事業再生事例はマガジンからご覧ください▼


【第2話】「会社を守るか、家族を守るか」──再生の壁と向き合うとき

前回、初回訪問の時点で“表面上の経営課題”の奥に潜む問題がいくつも見えてきた。

社会保険料の不正スキーム、月数百万円単位での美容品仕入れ、そして社長の息子による販売スキーム。

帳簿上は利益をほとんど生まず、資金繰りを圧迫していることは明らかだった。

経理担当者の証言や社長との会話から、私は再生支援を進める上で“ある条件”が必要だと判断した。


🔄 第二会社方式の提案──まずは「排除」から始める

この案件も、いつも通り第二会社方式を前提とするしかない。

支払いの優先順位を整理し、最低限の資産と人材を移し替えることで債務圧力から脱する方法である。

ただ、再生には「再建の意志」と「構造改革への覚悟」が必要だ。今回はその双方に強い不安を感じていた。

一つは雇用形態。すべての美容師が正社員雇用であること。

人材流出を防ぐため、給与水準も比較的高めに維持していた。

だが、現状の売上規模では維持が難しく、業務委託への転換が現実的な選択肢だった。

私は、一般社団法人を活用した社保スキームも提案した。

美容師を理事として迎え、そこで最低限の報酬で社保加入。

業務委託として柔軟な労働形態を提供できる方法だ。

現状も会社を二つに分け、社保に加入する方の会社の給与を最低限に抑えるというスキームが採られていた。

だが、この2社は代表者が同じであり、実質的にグループ企業と見なされる。

したがって、このやり方は明らかに社保逃れの構図であり、監査等で指摘された場合は間違いなくアウトとなる。

今回こちらで用意した一般社団法人スキームは、グループ会社ではなく、まったくの別法人として設立されている。

したがって、「グループ企業だから社保逃れ」と言われるリスクを、今の体制よりは低減できる点がある。

もっとも、これも完璧な正解ではない。

あくまで“正しい形に戻す”ための一時的な措置であり、抜本的な改革に向けたステップに過ぎない。


🧑‍🏫 従業員への説明──反発と不安の火種

経理担当者に相談すると「正社員という雇用形態が当たり前と思っている人ばかり」とのことだった。

そのため、変更には丁寧な説明が不可欠だった。

移行によって不利益が出ないよう制度設計を詰め、私たちが説明会を開いて従業員に直接伝えることになった。

「面貸し」や業務委託と聞くだけで拒絶反応を示す現場の空気もある。

従業員が辞めてしまえば、顧客も一緒に離れる。

そのリスクも理解しつつ、まずは“新体制の提案”を前向きに共有する段階に入った。


📦 横流しの実態──数字が語る証拠

一方で、息子が手がけているという美容品販売について、経理担当者と協力して更なる調査を進めた。

本体会社で仕入れた商品は、帳簿上どこにも「出荷」されていない。

だが、息子の運営する会社からは月々入金があり、それが仕入れ額とほぼ一致、もしくはやや少ない水準だった。

販売が成立していれば、当然そこには利益が生じるはずだ。

しかし、社長が語っていた「売上補填」という言葉とは裏腹に、本体会社にとっては実質的に“資金の垂れ流し”となっていた。

調べを進めると、販売利益は推定で2年間で2,500万円以上にもなることが判明した。


👨‍👦 父と息子、信頼と疑念のあいだで

事実をもとに、私は社長と再び面談の場を設けた。

証拠を突きつけ、何が起きているのかを説明したが、社長は頑なだった。

「息子がそんなことをするわけがない。売上が落ち込んでいたから、少しでも助けようとして…」

“父親としての気持ち”は痛いほどわかる。

だが、経営者としてそれを優先すれば、再生は成立しない。

私は何度も「これは家族の話ではなく、会社の話です」と繰り返した。

埒があかないため、次は社長・息子・我々コンサルチームの三者で面談を行うことにした。


🧨 対立の爆発──息子は否認、社長は沈黙

三者面談の日。息子に対して、事実関係と数字を提示した。だが彼は真っ向から否定した。

「言いがかりだ!全部合法にやってる。証拠なんてないだろ!」

怒りに任せて声を荒らげる息子。その様子に社長は目を伏せたまま、何も言わなかった。沈黙は、もはや答えと同じだった。

この瞬間、私は確信した。この会社には、「事実を見つめ直す力」が足りていない。


次回、コンサル契約解除に至る経緯と、私たちがこの案件から学んだ“再生支援の限界”について語る。


🙌終わりに


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