60代のリアル|第2幕、第28話【実録・職場の波乱】オネエ言葉で笑わせた主任の異動と、急変する天候の暗闇
前回までのあらすじ
学生さんが夏休みに入り、心なしか混雑が和らいだ朝の通勤電車でした。
母の体調を気遣いながらも、束の間の平穏と日常の落ち着きを感じていた私でしたが、その穏やかさは帰宅後に一変します。
ポストに届いていたのは、区役所からの母のマイナンバーカード更新通知。
仕事を休めない焦りの中、9月というタイムリミットに向けて新たな試練と葛藤が幕を開けました。
2日連続の雷鳴と、夕暮れの急変
7月30日(木)、7月31日(金)の帰宅時間
区役所から届いた一通の通知に頭を悩ませ、重い気持ちを抱えたまま過ごしていた7月最後の数日間。
その重苦しい心に追い打ちをかけるように、外の天気もまた荒れ模様を見せていました。
7月30日、そして翌31日。
仕事を終えて地下鉄に揺られ、最寄りの駅に到着して地上へと出たときのことです。
ふと見上げた空はどんよりと暗く曇り、肌を撫でる風が急にひんやりとした冷たさを帯びていました。
「これは、降り込んでくるかも……」
嫌な予感がした次の瞬間、遠くでゴロゴロと不気味な雷鳴が轟き始めました。
逃げる間もなく、空からバシャバシャと激しい音を立てて叩きつけるような雨が降り注いできます。一瞬で視界を奪うような豪雨と、2日連続で遭遇した帰り道の雷雨。
傘を差し出しながら、私は濡れた足元と激しい雨音の中で、胸の奥がざわつくのを抑えられずにいました。
ただでさえ母の手続きで心が休まらないときに、2日続けて見舞われた突然の嵐。
この不穏な天候は、これから自分の身の回りに起きる「もう一つの波乱」の予告だったのかもしれない——そう思わずにいられない出来事が、職場でも静かに始まっていたのです。
去りゆくムードメーカーと、夕暮れの笑い声
7月31日、16時15分の退勤時間が近づく午後のこと。
15時を過ぎた頃から、職場内ではいつもと違う慌ただしさが始まっていました。
翌8月1日付で、主任が別の部署へ異動することになっていたのです。
自分のデスクの引き出しを開け、机の上の書類を片付けながら、私は込み上げてくる寂しさを感じていました。
この主任は、いつも冗談を言って場を和ませてくれる、職場の絶対的なムードメーカーでした。それでいて仕事が抜群にできる男性で、過去に折り機が壊れた際も、代わりの手折り要員をすぐに見つけて助けてくれた頼もしい存在でした。
私がちょっとしたミスをすると「坊主、坊主……」とからかったり、反応が薄いと「金髪と坊主とどちらが嫌ですか?嫌な方にします(笑)」と言って笑わせてくれたりしていました。
普通ならハラスメントと取れるような言動ですが、私も笑いが止まらなくなってしまいます。
郵便料金計器で私が大量の郵便物を処理していると、
1通だけ手に持った主任がやってきて、オネエ言葉で
「『ごゆっくりどうぞ』なんて他の人のようには言わないの。ちょっと早くしてくれる!」
と割り込んできます。
私が「お先にどうぞ」と譲った途端に主任が折り機を使うと紙詰まりを起こし、
「ちょっと、どうしてくれるの!?」
とオネエ言葉で返して周りを大爆笑させたこともありました。
そんな面白くて頼もしかった主任のデスクも、少しずつ片付けられていきます。
退勤の時間を迎え、荷物をまとめて職場をあとにしながら、私は「明日からあの賑やかなやり取りがなくなってしまうんだな」と、胸の奥がぽっかりと寂しくなるのを感じていました。
頼れるムードメーカーが去り、変わりゆく職場の風景でした。
🌿次回予告
職場の頼もしいムードメーカーだった主任の突然の異動。
お別れの寂しさに浸る間もなく、カレンダーは8月へと捲られます。
母のマイナンバーカード更新期限というタイムリミットが迫る中、去りゆく人と変わりゆく職場環境。
残された私は、この先押し寄せる試練をどう乗り越えていけばいいのか?。
次回も、どうぞお楽しみに!
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