キャリアを手放して、初めて見えてきたもの
体調を崩して休職した日、頭にあったのは「もう働けないかもしれない」という不安だけだった。
私の場合、休職は3回目だ。
不安という言葉で収まりきれない絶望に近い感覚だった。
キャリアという言葉さえ、遠い世界のことのように感じていた。
リワークプログラムに通いながら、少しずつ生活のリズムを取り戻していく中で気づいたことがある。
復職とは、以前の自分に戻ることではない。
むしろ、以前の自分を手放すことから始まるのだと。
休む前の私は、仕事の成果と自分の価値を同一視していた。
残業を厭わず、弱音を吐かず、それが「ちゃんとした社会人」だと信じていた。でも倒れてみて分かった。
そのやり方は、家族との時間も、自分の心の余白も、静かに削り取っていたのだ。
妻と子どもと過ごす平日の午後。以前なら考えられなかった時間だ。
子どもが帰ってくる声を聞きながら、「これも自分の人生の一部なんだ」と思えるようになったのは、休職期間があったからこそだと思う。
家族は、私が仕事を失っても離れていかなかった。むしろ、弱っている私を支えてくれた。そのことが、今後のキャリアを考えるうえでの一番の軸になっている。
これからの働き方は、以前のように全力疾走することではないと決めている。持続可能なペースで、自分の状態を定期的に点検しながら進むこと。
そして、仕事だけでなく家族との時間、自分自身の回復にも同じくらいの重みを置くこと。
キャリアとは、会社の中での役職や評価だけを指す言葉ではないのだと、今なら思える。家庭でどんな父親でいるか、自分の心とどう付き合っていくか、それも含めて「私のキャリア」なのだ。
復職はゴールではなく、新しい歩き方を試すスタートラインだった。うまくいかない日もあるだろう。それでも、家族という土台がある限り、また立ち上がれると信じている。
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