外国人技能実習制度改正に向けた最終報告書を読む【5】
外国人技能実習生・特定技能として働く人々を取り巻く環境を改善する機運が高まり、遂に法制度の改正まで辿り着いている(といっても定期的な見直しに合わせて行われているものではあるが)。
本noteでは、法制度の改正に向けて提出された提言が記載された最終報告書を読む連載企画を実施するとともに、法制度の改正に向けた議論がどのように行われたのかを読み解く試みを行っている。
これまでの4回で、最終報告書の第三章の提言2まで読み進めた。今回はその続きとなる。このペースで更新すると新たな法制度が国会に提出される方が早くなりそうだが、法案と最終報告書の照らし合わせとして読む機会にもなると思われるため、お付き合いいただけるとありがたい。
3章 提言「3 受入れ見込数の設定等の在り方」
① 新たな制度は人手不足分野の人材確保も目的の一つとするものであるため、日本人の雇用機会の喪失や処遇の低下等を防ぐ観点及び外国人の安定的かつ円滑な在留活動を可能とする観点から、現行の特定技能制度の考え方にのっとり、受入れ対象分野ごとに受入れ見込数を設定し、これを受入れの上限数として運用する。新たな制度における受入れ見込数の設定に当たっては、特定技能制度における受入れ見込数との関係性にも留意する。
② 新たな制度及び特定技能制度における受入れ見込数や受入れ対象分野は、国内労働市場の動向や経済情勢等の変化に応じて適時・適切に変更できるものとし、真に人材を必要とする分野等に必要な人員が行き渡るようにする。
③ 新たな制度及び特定技能制度における受入れ見込数の設定、受入れ対象分野等の設定、特定技能評価試験等のレベルや内容の評価等については、有識者や労使団体などの様々な関係者等で構成する新たな会議体が業所管省庁や業界団体等からの説明・情報共有に基づき議論した上での意見を踏まえ、制度全体としての整合性に配慮しつつ、政府が判断するものとする。
文字通り、受入れに関する提言である。受入れの見込数や対象分野についての言及がなされている。
提言①について
現行の制度では、特定技能については受入れ見込数の制限が設けられていたが、外国人技能実習生については上限の設定がなされていなかった。新たな制度では、外国人技能実習生についても特定技能に合わせる形で上限の設定が必要でないか提言されている。
一方で、仮に外国人技能実習生について上限を定めるとした場合、新制度において外国人技能実習生の受入れ見込数の上限を設定するのか、それとも特定技能制度と合算した上限とするのか議論が余地が生じる。
そのため、まずは受入れ先となる各分野においてどの程度人手不足が生じるのか確認する必要があるのでないかと書かれている。本指摘については、もっともな意見だと考える。
そもそも外国人技能実習生が実習生として扱われていない現状がある中で、受入れ数の上限を定めるのは妥当である。実習の本意が達成されるには、実習を提供可能な機関のキャパシティが必要となる。
無尽蔵に受け入れても実習を提供できなければ、制度として破綻する。その点に鑑みれば、上限を定める妥当性は高い。一方で、その上限の策定にあたり、分野別人手不足状況を検討要素にするのは疑問である。人手不足の補填として実習生を扱うのであれば、実習の提供可能性が薄れてしまう。
提言②及び③について
受入れ分野や仮に受入れ数の上限を設けた場合、それらについて経済情勢などの様々な背景を踏まえて、柔軟な変更が行えるべきだという意見があったらしい。本提言はその点を踏まえたものである。
本提言においては、主にそうした議論を行う主体となる会議体及び政府、そうした主体によって最終的に実施される決定がどのようなフローで行われるかをざっくりと記載している。
本提言から見えるのは、特定の主体の意見が強力に反映される形は避けたいといった想いである。つまり、一部の産業の権威者の意見のみを反映させて制度を都合良くいじくり回されるような形にはしたくないといった意思である。
この点については、妥当性が高いと思われる。何せ、従前の外国人技能実習生を取り巻く問題においては、特定の産業において悲惨と言って然るべき非合法な外国人技能実習生の使役が見られている。
そうした特定の産業の権威者の意見が強く反映されては、新制度も骨抜きになってしまう。同じ轍を踏まない制度にすべく、多様なステークホルダーの意見を踏まえて政府が判断する形は、ある種在るべき形と言える。
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