小論文と作文の違いとは?小論文ではもうその「作文しぐさ」やめない?【小論文キホンのキ③】
更新日:2026/01/11
小論文・作文指導者の〆野が普段の添削・採点指導で教えている、文章作成における基本事項を紹介するのが、このシリーズ【文章作成の基本】。
(〆野の自己紹介はこちらから見られます。)
その「作文しぐさ」は、小論文ではもう終わりにしないか?
「あなたがどうしたいか」なんてこちらは聞いていないのに……
このシリーズでは小中学校で身につけた作文の癖から脱却して、高校生(大学受験生)が小論文を書くためのポイントをレクチャーしています。今回はその3回目です。作文と小論文の違いを十分に理解していないために小論文で今まで培った「作文的なふるまい」をとってしまい結果として小論文としては適切ではない内容や展開になってしまうことに対して、それはどういう点で問題なのか、それはどう改善するべきなのか、についてここでは述べています。
(今までの「小論文キホンのキ」はこちら)
本題に入る前に、まずはこちらの文章を読んでいただきましょう。
したがって、私は資料1に賛成する。資料1で示されているように、多くの日本人は、異文化に対する理解を適切かつ十分に行えていないことがわかる。これから日本社会では、ますますグローバル化が進行していくだろう。私も、日常生活の中で、多くの外国人との交流などを通して異文化への理解に励み、グローバルな視点を獲得していきたいと思う。
これは、ある生徒が書いた小論文の結論部分だけを〆野が改変したものです。これ、ちょっと違和感があるんですが、何がおかしいか、わかりますか。一見すると何の問題もないと思うかもしれませんが、少しおかしいところがあります。
読むと、これは「課題資料1の文章に賛成をする立場」の内容であることがわかります。また資料1が「多くの日本人が異文化に対する理解をしっかり正しく行えていない」という意見の文章であり、それにこの生徒(この小論文の書き手)が賛成しているということがわかります。しかし、だとしたら、二文目でもうこの論は結論に至っているはずです。つまり、ここで、もうこの論は終わっています。
しかし、この後文章がさらに続いています。この三文目以降の内容(「これから日本社会~」以降の内容)は一体何なのでしょうか。内容を見ると、「『私は今後こういうふうにしていきたい』という決意表明」のような文章ですが、この問題はこんなことを聞いていません。問題は「資料1、または資料2のどちらかに賛成して、あなたの意見を800字以内で述べなさい」というものでした。「この文章を読んだ上であなたが今後この問題にどう取り組みたいか書きなさい」なんて書いていないんですよね。こちら(問題)はそんなことなんて聞いていないのです。ですから、この部分は明らかに余計なことであり「蛇足」です。これは一体どういうことなんでしょう。
あなたが「作文しぐさ」で文章を閉じないと気が済まないわけ
実は「こうした小論文の終わらせ方」は、意外に多いです。それも「ある程度文章書ける生徒」の小論文に結構見られます。私は、この現象をひそかに「作文しぐさ」と読んでいます。作文で身につけた「口触りのいい優等生ムーブをかました物言いで話を閉じる癖」が出ちゃっているんですよね。
これは高校生の小論文より、中学生の「意見文(小論文と同じように自分の意見を根拠づけて述べる形態の作文)」を添削すると如実にわかります。まさにこの終わらせ方のオンパレードです。みんな一様に「この文章を読んで、私も明日から模範的な正しい人間を目指します」みたいな終わり方になっています。ついでに言うと模試の作文問題の模範解答例なんかもそうなっていますし、小中学校の先生ならこうした内容箇所に対して「よく書けました」と赤字でコメントを入れますから、多くの生徒が「こうやって文章は終わらせるものなのか」と学習するのも無理はありません。また、「そういう癖」が「今まで勉強を頑張ってきた生徒」であればあるほどしっかり身についているのも当然です。
では、これは悪い終わらせ方なのかというと、決してそうではありません。意見文(作文)としては正解です。あと作文ということで言うなら、感想文としても正解です。読書感想文でもよく「この本を通して得たことを踏まえて、私はこういうふうに正しく取り組んでいきたい」と文章を閉じているものをよく見かけます。中学生までの、こうした作文(感想文・意見文)に限って言えばこういうかたちで終わらせてよいです。というよりも、前述のように、むしろそういう文章の終わらせ方が作文指導では積極的に奨励されています。しかし、小論文では少し微妙です。それは作文と小論文の「視点の置き所」や「書く目的」が違うからです。
別の記事でもお話ししたことですが、生徒に作文を書かせることの一つの目的に「豊かな人間性を養う」というのがあります。これは近代日本の文章教育の「伝統」とも言えるものなのですが、平たく言えば、「作文(感想文・意見文)教育を通して『人間教育』を行っている」ということです。「文章を書くことでよい人間になって欲しい」というつもりで小中の先生は指導していますし、みなさんはそうした指導を今まで受けていたのです。こうした指導方針については「道徳教育を内在化している」と批判の的になることもあります。つまり、作文教育が生徒に「模範的なよい人間のあり方や価値観」を植え付ける装置になっている、ということです。しかしいずれにしても、こうした経緯から、作文は「口触りのいい優等生ムーブをかました物言いで話を閉じがち」になるわけです。作文では、自分が今後「よき人間」として成長していくことを表明し、その証を文章の中に残すことが求められるのです。
(作文教育の歴史については、こちらの記事も参考になります)
小論文における結論とは?
対して、小論文を書く目的はこうした「人間性の涵養」にあるのではありません。作文のように「自分(書き手)がどうあらねばならないか」に視点と目的があるのではなく、「他者(読み手)をいかに説得するか」にその視点と目的はあります。書き手がどんな人間を目指すかは問題ではなく、読み手に自分(書き手)の意見を納得してもらえるかどうかが問題なのです。
ですから、その結論のあり方は至ってシンプルなものになります。「このように、私の意見(結論)はこれこれです。」と簡潔にまとめます。これ以上語ることは何もありません。むしろ、余計なことを書くとそれは「論証のノイズ」になります。「私は資料1に賛成する。なぜなら、……からだ。たとえば、……ということからもそれはわかる。したがって、資料1に私は賛成である。」、小論文はおおよそこのような展開になります。小論文では自分に対する反省や決意の表明はいりません。また、文学的な余韻や情緒もいりません。
(小論文での結論のまとめ方はこちら)
言葉によって、自分の意見の正しさを証明することを論証と言います。そうです、小論文は、作文よりもどちらかというと「数学の証明」に近いのです。「数学の証明」はもちろん数字で主に行いますが、こちらは言葉で行うわけです。あなたは「数学の証明」で「∴(ゆえに)x=2」と答えを書いた後に「これからも数学の勉強に邁進します。」とか書きますか?書きませんよね?でも、先ほど挙げたNG答案の例は「これと同じこと」をやっています。
(論証についてはこちらで具体的に話しています)
もちろん、こうしたことを書いたからと言って、その小論文に全く点がつかないとか全く評価されないということにはなりません。これ、先ほど「数学の証明」のケースでも同じことです。答えを書いた後に「これからも数学の勉強に邁進します。」とか書いてあっても採点者はたぶん「スルー」でしょう。だって、数学の証明が正しいなら○、間違っていれば✕、それだけのことです。ただ「最後に何か余計なものがついているな」と思うだけのことです。その一言は証明の過程に何もかかわっていないので証明の質を上げもしなければ下げもしない、だから「スルー」で終わりです。
小論文でも同じことです。最後に「私も、日常生活の中で、多くの外国人との交流などを通して異文化への理解に励み、グローバルな視点を獲得していきたいと思う。」と書かれていても、その一文は論証の質を上げもしなければ下げもしません。もちろん、文脈的におかしいとなれば文章としての質を下げますが、文章展開上おかしくなければその限りでは問題はありません。したがって、「最後に問題文や論証とは関係ない、何か余計なことを言っているな」とは思いますが採点者は「スルー」します。
でも、これを書いたあなたはこんな採点者の評価を期待していたわけではありませんよね?採点者に「よく書けているね」、「これからも頑張ってね」って、作文のときのように好意的に評価されると思って書いていますよね?まさか「こんな扱い」を受けているとはつゆほども思わなかったはずです。あなたはこの一文を「よかれと思って書いた」はずです。しかし、この一文はあなたの小論文の評価を下げない代わりに一ミリも上げません。だったら、こんな意味のない「作文しぐさ」、小論文ではもうやめにしませんか?小論文の結論は、簡潔に最初に挙げた自分の意見をまとめて終わるべきです。
まとめ ~小論文の「結論」は作文の「まとめ」とは違う!簡潔に自分の意見をまとめよう!~
小論文の結論では、自分の意見を明確に、かつ簡潔にまとめることこそが大事です。
その「作文しぐさ」の「余計な一言」はいりません。目的は、読み手に自分の意見を十分に伝え、それに納得してもらうことです。それがしっかりできているかどうかが、小論文では問われています。コラム記事ではありませんから、「いい余韻のあるまとめ」もいりません。問題文の要求にしっかりと答えた上で冒頭に挙げた、その自分の意見を一貫して最後まで伝えることこそが大切なのです。
(「作文と小論文ってこんなに違うの?」と思った人は下の記事を読んでみてください)
(小論文作成のためのサイトマップ)
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