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A33_「AIエージェントを横に置けば時短できる」は半分だけ本当だった

AIエージェントを横に置いて働けば、時短できる。

そう思っていました。

Codexを個人用のノートパソコンで動かし、公務用PCで自分の作業を進めます。机の上に、自分とは別の作業者がもう一人いるような感覚です。

体感では、いつもよりだいぶ早く、仕事が終わりました。

でも、それだけでは説明がつかない疲労感が残りました。

数字だけ見れば、得しかない話に聞こえます。

でも実際には、シングルタスクで働いていたときとは、種類の違う疲れが残りました。


公務用PCの隣に、もう一人の作業者を置いてみた

学校の公務用PCでは、Codexを動かせません。そこで、個人用の軽量ノートPCを机の横に置きました。

公務用PCでは自分が作業します。横のノートPCではCodexが作業します。

今回試したのは、2つの仕事を並行して進めることでした。

Codexには、仕込んでいる「総合的な探究の時間」の授業案作成スキルを動かしてもらいます。自分は、事前に別のスキルで作った数学の授業スライドを見直し、授業で使える形に仕上げます。

つまり、AIには重めの下準備を任せ、自分はある程度形になっている資料を確認し、修正します。この組み合わせを試してみました。

4時間が3時間になった。でも、それだけでは終わらなかった

体感として、別々にやれば合計4時間くらいかかりそうな作業が、3時間くらいで進みました。正確に測ったわけではありません。それでも、仕事が直列ではなく並列になっている感覚は、確かにありました。

ただ、これは完全に楽になる話ではありません。

Codexが作業している間、自分は放置していればいいわけではないからです。途中で進捗を見て、判断を伝え、方向を修正する必要があります。その間にも、自分は自分の作業を進めています。

だから、脳の切り替えが必要になります。

「切り替え」の正体――Codexの出力を見た瞬間に起きること

切り替えが一番重くなるのは、Codexの完成した出力を見た瞬間でした。

イメージと違う部分があります。それをどう修正の指示にするか、考えなければいけません。

このとき、数学スライドの作業は完全に止まります。頭の中の全能力が、Codexへの入力に持っていかれる時間が、必ず発生しました。

それは、鍋を火にかけながら、オーブンでケーキを焼いていて、うっすら焦げ臭いにおいに気づいた瞬間に似ています。においに気づいた途端、鍋の火加減も次の手順も頭から消えて、オーブンの中身をどう救うかだけを考えている。

事前に「マルチタスクなので効率が落ちるかもしれない」「頭の切り替えで疲労感が出るかもしれない」とは予想していました。実際にやってみると、その予想はほぼ当たっていました。

AIと並行していい作業、向かない作業の境界線

数学スライドの仕上げは、脳の作業負荷としては中程度でした。すでにスキルで大枠はできています。それを見て、授業で使えるように直していきます。

さっと直せるスライドもあれば、少し考えなければいけないスライドもあります。このくらいの作業なら、Codexの進捗確認と並行できる感覚がありました。

もし自分の作業もゼロから考える重い仕事だったら、かなり苦しくなっていたはずです。

AIに重い下書きを任せ、人間は中程度の修正作業をします。この組み合わせは、比較的うまくいきそうです。

逆に、AIにも判断が必要で、自分の作業にも重い判断が必要な場合は、マルチタスクとしては向かない可能性があります。何をシングルタスクでやったほうがよいのか、どういう状況ならAIと並列していいのか、まだ整理が必要だと感じました。

境界線は、負荷の大小だけではありません。授業をしたあと、生徒がどこで止まったのか、どの説明で空気が変わったのかは、その場にいた教員にしか感じ取れません。ここにあるのは、AIに全部任せられるかどうかという、また別の種類の境界線です。

この気づきを、次の探究の授業案づくりに反映させるのは、人間にしか担えない仕事です。ここを伝えなければ、授業案に命は吹き込まれません。

机の上に置いた、白紙のA4用紙

今回、自分なりに大事だと思った工夫があります。

机の上に、白紙のA4用紙を置いておくことです。

始める前に、そこへ書き出します。Codexに何をさせるのか、自分は何を進めるのか、どのタイミングで確認するのか。

作業が始まってからも、同じ紙を使います。Codexは今どこまで進んでいるのか、自分は次にどのスライドを見るのか、判断が必要な点は何か。そうしたことを、そのつど書き足していきます。

白紙のA4用紙は、書き込むほどに、小さな海図に変わっていきます。自分が今どこにいて、次にどちらへ進むのかを、そこに書き込みながら進んでいく。

頭の中だけで持とうとすると、脳の負荷が高くなります。紙に外へ出しておくと、切り替えが少し楽になりました。

AIを使うというと、プロンプトやツールの話になりがちです。でも、実際に大事なのは、机の上の設計なのかもしれません。

マルチタスクは、慣れで変わっていくのか

探究の授業案作成スキルは、すでに5、6回使って改善してきました。過去3年間、自分が探究で大切にしてきた考え方も、少しずつスキルに反映しています。授業案を作るたびに、うまくいかなかった点を見直し、スキルに戻しています。スキルも、育っています。

最初は、自分の重い判断がかなり必要でした。今も必要な部分はあります。ただ、履歴が積み重なり、考え方が反映されていけば、負担は少しずつ軽くなるはずです。

同じように、人間側もこの程度のマルチタスクに、自分自身を慣らしていく必要があるのだと思います。

最初はぎこちない。でも、このぎこちなさの先に、新しい仕事の可能性がある気がしました。

「AIエージェントを横に置けば時短できる」。この言葉は、半分だけ本当でした。残りの半分は、時短の代わりに何を差し出しているのかを、自分で確かめる作業だったのだと思います。

何をAIに渡し、何を自分で引き受けるか――それを決めるのは、結局、自分でしかない。


人生の限りある時間を大切に。シンパクト和 でした。
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