G31_AIに数学を解かせない。「なぜ?」と聞けるための授業設計
答えは出た。でも、理由が言えなかった
個別指導で、生徒が正解を出してきた。
答えを見ると合っている。計算の過程もある。
「よく解けたね」と言いかけた瞬間、私は少し止まりました。
「なぜそうしたの?」
そう聞いたら、生徒は黙ってしまいました。
AIの解説を見ながら解いていた。答えは出せた。でも、なぜその式を立てたのか、なぜその計算をしたのか、自分の言葉で説明できなかった。
これは、レシピ動画を見ただけで料理ができる気になるのに少し似ています。
見ていると分かった気がする。
でも、いざ自分で包丁を持つと、玉ねぎの切り方で止まる。
数学でも同じことが起きていた。
AIの解説を見て「分かった気になる」。
もう一度自分で解こうとすると、手が止まる。
生徒が「なぜそうしたの?」に答えられなかった場面を、あなたも経験したことがありませんか?
これまで大切にしてきた授業の方向性
私の数学授業では、ここ数年、全体講義をできるだけ短くして、生徒が自分の頭を使う時間を増やすことを意識しています。
授業スライドを事前にTeamsで配布する。
授業の冒頭で、今日の教科書の範囲を短く示す。
つまずきやすいポイントだけを全体で説明したら、あとは生徒が自分で進む。
自分の中では「数学寺子屋スタイル」と呼んでいます。
この形にしてから気づいたことがあります。
全体説明のときは生徒が分かっているように見える。
でも机間巡視で話しかけてみると、意外と伝わっていない。
「分かっていそうな顔」をしていても、実は止まっている。
この気づきが、今回のAI活用の設計に大きく影響しています。
AIを入れるなら、教科書が中心にないといけない
生成AIを数学授業に入れると聞くと、どうしても「AIに問題を解かせる」方向に行きがちです。
でも今の自分の感覚では、それを中心に置くのは少し違います。
数学でまず大切にしたいのは、教科書を理解することです。
定義を読む。例題の流れを追う。公式がどこから来たのかを考える。解答例の行間を読む。
ここを飛ばしてAIに聞くだけだと、学習の中心が教科書からAIに移ってしまいます。
それは避けたい。
AIを使うことで、教科書に戻れるようにしたい。
ここが今回の一番の軸です。
教科書が中心。授業用ノートやスライドは、読むための地図。
AIは、道に迷ったときの案内板。生徒のノートは、自分がどこで迷ったかの記録。
このくらいの位置づけが、今の自分にはしっくりきます。
授業の流れ:教員→教科書→AI→ノート→解き直し
現時点で考えている授業の流れは、次のとおりです。
教員が今日の見取り図を短く示す(ゴール・見る場所・超一言)
生徒が教科書・授業用ノート・解答例を読む
詰まったらAIに聞く
ノートに一文で残す
もう一度、自分で解き直す
単元末に「AIで確認したことベスト3」を振り返る

ポイントは、AIを最初に使わせないことです。
まず教員が入口を作る。今日のゴール、教科書のどこを見るか、つまずきやすいポイント。
ここを短く示してから、生徒が自分で読み始める。
それでも分からないところが出てきたときに、初めてAIを使う。
AIは最初の説明者ではありません。途中で迷ったときの補助役です。
3つのプロンプトだけに絞る
今回、生徒に渡すプロンプトはあえて少なくします。
最初は3つだけにします。
生成AI活用は、豪華な筆箱にするより、書き心地良い一本の鉛筆に。
道具が増えるほど「どれを使うか」で生徒は止まってしまいます。
① どこが分からないか分からないとき
私は高校生です。この画像・問題・解説を見ても、どこが分からないのか自分でも分かりません。①与えられている条件 ②求めるもの ③つまずきやすい場所 を、5行以内で整理してください。分かりにくい部分があれば、日常の短いたとえを1つだけ入れてください。まだ答えは出さないでください。
「どこが分からないか、自分でも分からない」という状態は、実は質問すらできない状態です。
AIに整理させることで、生徒は「自分はここで止まっていた」と気づく。気づきさえすれば、次の一手を自分で動き始められます。
② 計算や式変形が分からないとき
この部分の計算・式変形・考え方が分かりません。何をしたのか、なぜそうするのかを、3ステップ以内で説明してください。最後の答えだけを先に出さないでください。
解答例の行間を読むためのプロンプトです。
「何をしたのか」だけでなく「なぜそうするのか」を問うことで、手順の暗記ではなく理解に向かいます。
③ 最後にノートへ残すとき
最後に、私がノートに書く一文として、次の形でまとめてください。「私は『____』が分からなかったので、『____』を確認しました。」そのあと、もう一度自力で解くための最初の一手だけ教えてください。
このプロンプトが、AI利用を学習に変えます。
ノートの一文が、AIとの対話を学習に変える
今回、一番大事にしたいのは、実はプロンプトよりも、この一文です。
私は「____」が分からなかったので、「____」を確認しました。
「答えを聞いた」ではなく、「自分はどこで止まっていたのか」「何を確認したのか」を残すことになります。
たとえばこんな形で残ります。
私は「平方完成でなぜその数を足して引くのか」が分からなかったので、「二乗の形を作るための調整」であることを確認しました。
私は「問題文からどの式を立てればよいか」が分からなかったので、「与えられている条件と求めるものを分けること」を確認しました。
こうして残れば、ノートがただの計算記録ではなく、自分の理解の修正記録になります。
AIとのやり取りは、スマホの写真フォルダに少し似ています。
確かに残っている。でも1週間後、「あの気づき、どこだっけ」とスクロールしながら探すことになる。
ノートに残した一文は違います。テスト前夜に開いたとき、ちゃんとそこにある。
生徒に必要なのは、AIとの会話ログではなく、自分の理解がどう変わったかの記録です。
机間巡視と単元末の振り返り
授業中は、机間巡視で軽く確認するくらいにします。
提出物を増やすと、生徒も教員も重くなります。重くなると続きません。
見るのは2点だけ。
何が分からなかったかが具体的か
確認した内容が、教科書・解答例・授業用ノートに戻っているか
「この確認したこと、教科書のどこに書いてある?」
「ノートに一文で残すなら、どう書く?」
そういう声かけをしていきたいです。
単元末には「AIで確認したことベスト3」を書かせる振り返りも入れたいと思っています。
AI利用をその場限りで終わらせず、単元の弱点マップにするためです。
現時点での仮説
この実践は、まだこれからです。
6月考査が終わり、前期末に入ったタイミングで試してみます。
現時点での仮説は一文です。
高校数学での生成AI活用は、AIに解かせることではなく、生徒が教科書に戻って理解し直す力を育てることに価値がある。
生成AIを使うと、答えに早くたどり着けます。
でも授業で育てたいのは、答えにワープする力だけではありません。
「自分はどこで止まっていたのか」を言葉にできる力を育てたい。
AIは、その気づきを引き出す道具になるはずです。
このテーマで、前期末に小さく試します。
AIが答えを出してくれる時代に、生徒の「なぜ」をどうやって生み出せばいいでしょうか。
あなたはどう思いますか?よかったらコメントで教えてください。
人生の限りある時間を大切に。シンパクト和 でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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