「Solaria 2nd Stage 第三話|はじまりの朝」

「Solaria 2nd Stage 番外編|はじまりの音」
「Solaria 2nd Stage 第一話|星降る約束」
「Solaria 2nd Stage 第二話|ぎこちない光」
■ Solaria X【公式】
■ Solaria instagram【公式】
■ Solaria YouTube【公式】
■ Solaria【公式】LINEスタンプ
「第三話 | はじまりの朝」
やわらかな光が、部屋に差し込んでいた。
カーテンの隙間から伸びる細い線が、
静かに、二つの枕元を照らしている。
冬の朝の、澄んだ空気。
「……ん」
先に目を覚ましたのは、あかりだった。
ゆっくりとまぶたを開ける。
見慣れない天井。
でも、どこか落ち着く空間。
隣を見ると——
ひなたが、布団にくるまっている。
「……ひなた」
少しだけ眠そうな声。
「いつまで寝てんの?」
もぞ、と動く。

「……起きてるよぉ……」
くぐもった声。
そのまま、ひなたがゆっくり顔を出す。
「……あけましておめでとう」
あかりがぽつりと呟く。
一瞬の間。
「……あ、ほんとだ」
ひなたがふっと笑う。
「おめでとう」
二人、同時に少しだけ笑った。
昨日よりも、少し近い距離。
「ねえ」
ひなたがぼんやりしたまま言う。
「初夢、見た?」
あかりは少しだけ考えて——
「ダンス室のレッスン」
即答だった。
「えぇ?!?」
ひなたが勢いよく起き上がる。
「私もなんだけど!」
「うそでしょ」
「ほんとだって!」
顔を見合わせて、
思わず二人で笑い出す。
「どんだけ好きなの、私たち」
「いや、ひなたがでしょ」
「え、あかりでしょ!」
くだらないやり取り。
でもそれが、妙に心地いい。
そのとき。
スマホが同時に震えた。
「あ」
「来た」
画面には、メンバーからのメッセージ。
『あけましておめでとう!今年もよろしくね!』(ゆい)
『今年もよろしく。サボったら許さないから』(しおり)
『あけましておめでとうございます!今年も頑張りましょう!』(さくら)
「しおり、通常運転だね」
「ブレない」
あかりが小さく笑う。
「返信しよ」
「うん」
同じタイミングで、同じ言葉を打つ。
それが、なんだか嬉しかった。

朝食の時間。
テーブルには、お正月の料理が並ぶ。
「いただきます」
「いただきます」
「おせち、久しぶりかも」
あかりがぽつりと言う。
「ほんと?いっぱい食べていいよ!」
「……うん」
静かに箸を動かしながら、
あかりはどこか懐かしそうだった。
「行こっか、初詣」
玄関を出た瞬間、
冷たい空気が頬に触れる。
「寒っ!」
「言ったじゃん」
白い息が、ふわりと浮かぶ。
神社へ続く道。
人の流れと、どこか特別な空気。

「お正月って感じするね」
「昨日とそんな変わんないのにね」
「でも違うんだよ!」
あかりは少しだけ周りを見て、
「……確かに」
と、小さく頷いた。
鈴の音が響く。
二人は並んで手を合わせる。
静かな時間。
願いを込める時間。
しばらくして、あかりが目を開ける。
ちらりと横を見ると——
ひなたは、まだ祈っている。

「……長くない?」
小さく呟いて、顔を寄せる。
「ひなた」
耳元で、こそっと。
「彼氏ができるようにお願いしてるの?」
「ち、違うよ!?」

一気に顔を上げるひなた。
真っ赤になっている。
「優勝祈願をじっくりしてただけ!」
「ほんとに?」
「ほんと!」
「怪しいな?」
「もう!」
笑い声が、冬の空気に溶ける。
冬の空気の中。
二人の距離は、昨日よりも確実に近くなっていた。
境内の端。
「……たい焼き」
ひなたの視線が止まる。
「食べる?」
「食べる!」

帰り道の公園。
ベンチに並んで座る。
「いただきます」
同時にかじる。
「おいしい……」
ひなたの表情が緩む。
そのとき、冷たい風。
「っ、さむ!」
あかりがマフラーを外す。
「半分こ」
自然に、ひなたと分ける。

肩が触れる距離。
「……近くない?」
「寒いんでしょ?」
平然とした顔。
でも少しだけ、距離は近い。
静かな時間。
そして、あかりがぽつりと話し出す。
「スペインさ」
遠くを見る目。
「初めてダンス見たとき、頭真っ白になった」
白い石畳。
音が鳴った瞬間、変わる空気。
「自分、何もできないって思った」
ひなたは黙って聞く。
「でも決めた」
少しだけ強い声。
「絶対また来るって」
「今度は、向こうに立つ側で」
風が吹く。
ひなたは、小さく笑う。
「……あかりってさ、すごいよね」
「なにそれ」
「ちゃんと先見てる」
あかりは少しだけ黙る。
「……ひなたは?」
「え?」
「何お願いしたの」
「またそれ!?」
顔が赤くなる。
笑い合う。
そして——
「優勝だよ」
ひなたの声。
「みんなで、一番上見たい」
静かな決意。
「……うん」
あかりが頷く。
でもその声には、わずかな揺れ。
帰り道。
「ねえ、宿題やった?」
「やってない」
あかりが即答。
「やってよ!」
「英語無理」
「今年は赤点回避祈願も必要だね」
「赤点取ったことないんだから!」
また笑い合う。
家に戻る頃には、
太陽は少し高くなっていた。
「じゃあ、あとで連絡するね」
「うん」
別れ際。
ほんの少しだけ、間。
「……ありがと」
ひなたが言う。
「なにが?」
「なんか、いろいろ」
あかりは少しだけ考えて、
「……こちらこそ」
とだけ答えた。
その日。
冬の空の下で。
二人の距離は、確かに変わった。
でも——
見ている景色は、まだ少し違う。
同じ方向を向きながら。
それぞれの想いを抱えて。
Solariaの、新しい一年が始まる。
はじまりは、静かでいい。
大切なのは——
その一歩が、確かに前に進んでいること。
第三話 はじまりの朝 (終)
▶ Solaria 2nd Stage 第四話|
― 揺れるスタートライン ― へ続く
