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「Solaria 2nd Stage 第三話|はじまりの朝」

 

「Solaria 2nd Stage 番外編|はじまりの音」
「Solaria 2nd Stage 第一話|星降る約束」
「Solaria 2nd Stage 第二話|ぎこちない光」

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「第三話 | はじまりの朝」

やわらかな光が、部屋に差し込んでいた。

カーテンの隙間から伸びる細い線が、
静かに、二つの枕元を照らしている。

冬の朝の、澄んだ空気。

「……ん」

先に目を覚ましたのは、あかりだった。

ゆっくりとまぶたを開ける。

見慣れない天井。
でも、どこか落ち着く空間。

隣を見ると——

ひなたが、布団にくるまっている。

「……ひなた」

少しだけ眠そうな声。

「いつまで寝てんの?」

もぞ、と動く。

 

「……起きてるよぉ……」

くぐもった声。

そのまま、ひなたがゆっくり顔を出す。

「……あけましておめでとう」

あかりがぽつりと呟く。

一瞬の間。

「……あ、ほんとだ」

ひなたがふっと笑う。

「おめでとう」

二人、同時に少しだけ笑った。

昨日よりも、少し近い距離。

「ねえ」

ひなたがぼんやりしたまま言う。

「初夢、見た?」

あかりは少しだけ考えて——

「ダンス室のレッスン」

即答だった。

「えぇ?!?」

ひなたが勢いよく起き上がる。

「私もなんだけど!」

「うそでしょ」

「ほんとだって!」

顔を見合わせて、

思わず二人で笑い出す。

「どんだけ好きなの、私たち」

「いや、ひなたがでしょ」

「え、あかりでしょ!」

くだらないやり取り。

でもそれが、妙に心地いい。

そのとき。

スマホが同時に震えた。

「あ」

「来た」

画面には、メンバーからのメッセージ。

『あけましておめでとう!今年もよろしくね!』(ゆい)
『今年もよろしく。サボったら許さないから』(しおり)
『あけましておめでとうございます!今年も頑張りましょう!』(さくら)

「しおり、通常運転だね」

「ブレない」

あかりが小さく笑う。

「返信しよ」

「うん」

同じタイミングで、同じ言葉を打つ。

それが、なんだか嬉しかった。
 

 

朝食の時間。

テーブルには、お正月の料理が並ぶ。

「いただきます」

「いただきます」

「おせち、久しぶりかも」

あかりがぽつりと言う。

「ほんと?いっぱい食べていいよ!」

「……うん」

静かに箸を動かしながら、
あかりはどこか懐かしそうだった。

「行こっか、初詣」

玄関を出た瞬間、
冷たい空気が頬に触れる。

「寒っ!」

「言ったじゃん」

白い息が、ふわりと浮かぶ。

神社へ続く道。

人の流れと、どこか特別な空気。

 

「お正月って感じするね」

「昨日とそんな変わんないのにね」

「でも違うんだよ!」

あかりは少しだけ周りを見て、

「……確かに」

と、小さく頷いた。

鈴の音が響く。

二人は並んで手を合わせる。

静かな時間。

願いを込める時間。

しばらくして、あかりが目を開ける。

ちらりと横を見ると——

ひなたは、まだ祈っている。

 

「……長くない?」

小さく呟いて、顔を寄せる。

「ひなた」

耳元で、こそっと。

「彼氏ができるようにお願いしてるの?」

「ち、違うよ!?」

 

一気に顔を上げるひなた。

真っ赤になっている。

「優勝祈願をじっくりしてただけ!」

「ほんとに?」

「ほんと!」

「怪しいな?」

「もう!」

笑い声が、冬の空気に溶ける。

冬の空気の中。

二人の距離は、昨日よりも確実に近くなっていた。
 

境内の端。

「……たい焼き」

ひなたの視線が止まる。

「食べる?」

「食べる!」
 

 

帰り道の公園。

ベンチに並んで座る。

「いただきます」

同時にかじる。

「おいしい……」

ひなたの表情が緩む。

そのとき、冷たい風。

「っ、さむ!」

あかりがマフラーを外す。

「半分こ」

自然に、ひなたと分ける。

 

肩が触れる距離。

「……近くない?」

「寒いんでしょ?」

平然とした顔。

でも少しだけ、距離は近い。

静かな時間。

そして、あかりがぽつりと話し出す。

「スペインさ」

遠くを見る目。

「初めてダンス見たとき、頭真っ白になった」

白い石畳。

音が鳴った瞬間、変わる空気。

「自分、何もできないって思った」

ひなたは黙って聞く。

「でも決めた」

少しだけ強い声。

「絶対また来るって」

「今度は、向こうに立つ側で」

風が吹く。

ひなたは、小さく笑う。

「……あかりってさ、すごいよね」

「なにそれ」

「ちゃんと先見てる」

あかりは少しだけ黙る。

「……ひなたは?」

「え?」

「何お願いしたの」

「またそれ!?」

顔が赤くなる。

笑い合う。

そして——

「優勝だよ」

ひなたの声。

「みんなで、一番上見たい」

静かな決意。

「……うん」

あかりが頷く。

でもその声には、わずかな揺れ。
 

帰り道。

「ねえ、宿題やった?」

「やってない」

あかりが即答。

「やってよ!」

「英語無理」

「今年は赤点回避祈願も必要だね」

「赤点取ったことないんだから!」

また笑い合う。

家に戻る頃には、
太陽は少し高くなっていた。

「じゃあ、あとで連絡するね」

「うん」

別れ際。

ほんの少しだけ、間。

「……ありがと」

ひなたが言う。

「なにが?」

「なんか、いろいろ」

あかりは少しだけ考えて、

「……こちらこそ」

とだけ答えた。

その日。

冬の空の下で。

二人の距離は、確かに変わった。

でも——

見ている景色は、まだ少し違う。

同じ方向を向きながら。

それぞれの想いを抱えて。

Solariaの、新しい一年が始まる。
 

はじまりは、静かでいい。
大切なのは——
その一歩が、確かに前に進んでいること。
 
 
第三話 はじまりの朝 (終)
  

▶ Solaria 2nd Stage 第四話|
― 揺れるスタートライン ― へ続く

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