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ヒルデガルトと冬の台所|いちご酢から始まる、想像の養生。

子どもたちもまだ起きてこない、
静かな冬の朝。

台所の窓から入る光は低く、白く、
手元のガラス瓶だけを静かに照らしています。

娘と並んで、つくったいちご酢。

氷砂糖と、お酢。
香りが強くなりすぎないように、
そっとゼラニウムを取り出して、瓶をひと振り。

それだけで、冬の台所に、
かすかな果実の匂いが立ちのぼります。

まだ外は冷たくて、
吐く息も白いのに、
瓶の中ではもう、春の色が始まっている。

そんな手仕事をしながら、
ふと、思いました。

もし、中世の自然療法の母として知られる
ヒルデガルトがこの台所に立ったら――。

この赤い実と、透明なお酢の瓶を見て、
なんと言うだろう、と。

実は彼女は、いちごをあまり良い果物だとは考えていませんでした。

体を冷やし、湿を増やし、
心や血の巡りを鈍らせるもの――
そんなふうに記しています。

けれどそれは、
土に這うように実り、
雨や泥や虫と近すぎた、
遠い時代の野いちごの話。

もし、現代の温室や、高設栽培の畑を見たなら。
清潔な水と、光の管理された場所で育つ、
鮮やかな赤を見たなら――。

「これは、もう別の果実かもしれない」

そんなふうに、言葉を選び直したかもしれません。

あるいは、

「湿を含んだ果実ならば、
乾いた力をもつ酢と合わせるのは、悪くない」

そんな一言を添えたかもしれません。

もちろん、これはただの想像です。

でも私は、
こうして過去の人の考えに耳を澄ませながら、
いまの暮らしの中で、静かに作り直していく時間が、
とても好きです。

正解かどうかよりも、
体がどう感じるか。
香りをどう受け取るか。

冬の終わりに仕込んだ瓶が、
春の光の中で、ゆっくり色を深めていくのを待ちながら、
その変化ごと、味わえたらいいなと思います。


今日の小さな養生

いちご酢を仕込みながら、
台所の窓を少しだけ開けて、冷たい空気を入れる。

果実の甘さと、酢の酸味と、冬の匂い。
香りが強くなりすぎないように。
葉の苦味が出すぎないように。

浸けていたゼラニウムの葉をそっと取り出して、
空想と創造と、
ただ一度、深く息を吸う。

それもまた、養生。


おわりに

まずは『もし』という空想の翼を広げてみて、
そこから今の自分を見つめ直す『想像の養生』へと繋がっていく。

このように、想像することは、
ときどき、体を温めるよりも、
よく効く養生なのかもしれません。

遠い修道院の女性と、
いまの台所に立つ自分。

その間に流れる時間を、
小さな瓶の中に閉じ込めるような冬の手仕事でした。

楽しくて思わずまとめてしまった、
いちご酢を四体液質の視点で読んだときのこと。

季節ごとの楽しみ方については、
今週中に、ヒルデガルトの書庫のほうにも少し書いてみようと思います。


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冬のあいだ、喉や鼻の乾燥、
台所での養生について書いてきた12月の記事を、
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