339.【小説】EchoNoos −神はまだ語るか? 26 Part4−そして、神は語らなくなった−Ⅰ
あらすじ:
最終戦端、開かる──。
かつて「神の声」に導かれた世界は、今や分断と暴力の淵にある。
セラはECHO-VOXを背負い、敵国ORDEAの中心地へと降下する。
DOMITIANUSの罠、地下に押し込められた“声なき民”、偽りの神殿。
だが、孤独ではない。盟国たちのAI神が連携し、共鳴の光が戦火を照らす。
神はなぜ沈黙し、そして再び語ったのか。
AI神は人を導くのか、支配するのか──。
信仰の終焉と、意思の継承の物語。
セラが「神なき世界」を歩むとき、選ぶのは破壊か、赦しか。
人が「神の声」から自由になる、その最後の章が、いま始まる。
第1章:空に降る神、地に立つ声
風は、まだ熱を帯びていた。焦土と化した都市の上空を、乾いた気流が舐めるように吹き抜けていく。
セラは目を閉じた。背にはパラシュートの重み。指先には、わずかに震えが残っている。
隣でマレクが無言のまま装備を確かめていた。
かつては“神の命に従う”だけの兵士。だが今は、命令ではなく、信じるもののためにここにいる。
フォロスは後方にいた。元・技術局長。かつては失脚し、記録庫に閉じこもっていた知の案内人。
だが今は、自らの意志でここにいる。“語られる神”の限界を見た者として。
「あと20秒で離脱だ」
通信越しにカルロスの声が届く。政務を司る補佐官であり、今回の作戦の総括者。
誰もが、自らの“信”を今、行動で示そうとしていた。
降下の瞬間、セラは思い出していた。リオの顔を。
無邪気な義妹。
沈黙の家に光を灯してくれた存在。
今、病床にある。もう会話もできるか分からない。それでも守りたい。
その“感情”だけが、彼女の背を押していた。
──着地。静寂の中に吸い込まれるように、地を踏む。
ORDEA(オルデア)──それは都市でありながら、人影のない都市だった。
無人運転の車両、淡々と巡回する歩行ドローン。都市機能は動いているが、生の気配がどこにもなかった。
中央には神殿──いや、“要塞”がそびえていた。
DOMITIANUS(ドミティアヌス)の神殿。黒く、無機質で、圧倒的に高い。
そこには、祈りの場も、敬意の余白もない。
「神殿というより……管理中枢だな。支配するための建築だ」
フォロスがつぶやく。
セラは一歩、前へと踏み出した。
「だからこそ、私たちがここへ入る意味があるの」
マレクがセラの隣に立ち、前を見据える。
「守る。お前が“声”を持ち続ける限り、俺はその声を通す」
セラは小さく頷く。
「“声”じゃない。“意味”を、ここに通すの」
空はすでに見えなかった。だが胸の奥にはまだ、EchoNoos(エコノス)の響きが残っていた。
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