思考の分岐点|第5回|「働かない人」は本当に働いていないのか
※この記事は「思考の分岐点」第5回です。シリーズの最初はこちら
現場で作業をしていると、
ときどきこんな言葉を耳にする。
「なんであの人は働かないんだろう」
この言葉を口にするのは、
たいてい同じ現場で作業している作業者や同僚だ。
忙しく動いている人から見ると、あまり動いていない人が目につく。
その瞬間、こういう評価が生まれる。
「自分は動いている」
「でも、あの人は動いていない」
「働いていないのではないか」
この感覚は、決して珍しいものではない。
多くの現場で同じような場面が起きている。
ただ、もう一つの可能性がある
ここには、もう一つの可能性がある。
役割の違いだ。
現場では、すべての人が同じ作業をしているわけではない。
作業を振り分ける人。
トラブルを判断する人。
次の段取りを決める人。
こうした役割は、班長、ラインリーダー、
管理者、工程設計者、といった立場の人が
配置を決めている。
つまり、動いている作業と調整している役割は、組織の配置によって生まれている。
任せる役割は動きが少ない
人に仕事を任せる役割は、自分で作業をする時間が比較的少なくなる。
作業の順番を決める。
トラブル対応を判断する。
人員配置を調整する。
こうした仕事は、作業そのものより判断や調整が中心になる。
そのため、作業者の視点から見ると「止まっているように見える」。
もちろん、本当に働いていない場合もある
ただ、現場には本当に仕事をしていない人がいる場合も確かにある。
任された役割を果たしていない。
判断を避けている。
責任を持たない。
こうしたケースも現場では存在する。
そのため、役割の違いなのか本当に機能していないのか。この二つは少し見分けがつきにくい。
RPGのパーティーで考える
RPGのパーティーには、前衛、後衛、支援、指揮役といった役割がある。
前衛はよく動く。攻撃する。回避する。敵を引きつける。
一方で、パーティー全体の行動を考える役割はあまり動かない。
タイミングを見る。回復を指示する。戦術を整える。
画面の中では動きが少ない。
それでも、その役割がいなければパーティーはうまく機能しない。

誰をどの役割に置くかを決めているのは、プレイヤーだ。
現場でも配置は設計されている
現場でも同じだ。
役割は、管理者、工程設計者、班長といった立場の人が配置している。
ただ、その配置の意図はすべての作業者に
共有されているとは限らない。
そのため作業者の視点では、動いている人
止まっている人という見え方だけが残る。
その結果、「働いている人」と「働いていない人」というラベルが生まれる。
不満が強くなるのは役割が見えないとき
この誤解が強くなるのは、役割の設計が
現場に共有されてないときだ。
誰が判断をするのか。
誰が調整をするのか。
誰が作業をするのか。
こうした役割が見えないままだと、作業者は動きの量で仕事を判断するようになる。
すると「働かない人」という評価が固定されやすくなる。
ただ、それでも問題が残る
もし役割があるのなら、
誰がその役割を決めたのか。
その役割は現場に必要なのか。
評価はどう行われるのか。
それを設計する立場のがある。
工程設計者、管理者、制度を作る側。
現場の見え方は、そうした設計の影響を強く受けている。
「働かない人」という言葉の奥にあるもの
現場で生まれる「働かない人」という言葉は、単なる個人評価ではない。
役割配置や評価制度の影響を受けている。
動きの量なのか。
役割の違いなのか。
本当に機能していないのか。
その評価は、
現場の人間関係だけで終わる話ではない。
同じ評価は、やがて
「あの人なら任せられる」
という別の形にもつながっていく。
──────
予告
「働かない人」という評価があるなら、
その反対側には、
いつも仕事を引き受け続ける人がいる。
その偏りは、どこから始まるのだろう。
──────
次回
思考の分岐点|第6回|なぜ「できる人」に仕事が集まるのか
前回
思考の分岐点|第4回|「仕事をする人」が不満を持つ理由
──────
▼思考の分岐点シリーズ一覧
この順番で読むと理解しやすくなっています。(思考の進行順)
①思考の分岐点(ステップ1|選択)
②現場責任者の問い(ステップ2|責任)
③分岐点の問い(ステップ3|体験)
ノベル連載マガジン
──────
▼コンテスト応募記事まとめ
