思考の分岐点|第6回|なぜ「できる人」に仕事が集まるのか
※この記事は「思考の分岐点」第6回です。シリーズの最初はこちら
現場で作業をしていると、こんな場面を見かける。
トラブルが起きたとき、ある一人の名前が呼ばれる。
「ちょっと見てもらえる?」
そう声をかけるのは、そう声をかけるのは、同僚だったり、班長や上司だったりする。
するとその人は、作業を止めてその場に向かう。
原因を見つけて、対処する。
現場ではこういう光景が珍しくない。
相談が集まる人がいる
判断に迷ったときにも、ある人のところに相談が集まる。
「これ、どう思います?」
相談するのは同僚の作業者だったり、経験の浅いメンバーだったりする。
その人は少し考えて答えを出す。
周りは安心する。
こういう経験が何度か続くと、現場では一つの流れが生まれる。
「困ったら、あの人に聞く」
頼られる人ができる
ここで起きているのは、単純な能力の問題ではない。
作業者が相談する。
班長が判断を委ねる。
上司が対応を任せる。
こうした行動が重なることで、現場の中に頼られる人ができていく。
これは誰かが意図して作ったものとは限らない。
現場の中で少しずつ 出来上がっていくものだ。
「その人がやった方が早い」
もう一つの理由がある。説明するより早いという判断だ。
トラブルの処理方法を一から説明する。
手順を教える。
確認しながら進める。
こうしたことには時間がかかる。
だから、「それなら、あの人がやった方が早い」という判断が現場で生まれる。
この判断をするのは、作業者、班長、上司といったその場の人たちだ。
少しずつ仕事が集まる
こうした判断が重なると、ある変化が起きる。
トラブル対応、判断が必要な仕事、調整が必要な仕事。
そうしたものが、同じ人に少しずつ集まっていく。
その人は自分の作業をしながら、別の仕事も引き受けるようになる。
RPGのパーティーで考える
RPGのパーティーで、操作に慣れてくるとあるキャラクターをよく使うようになる。
敵の弱点を知っている。
スキルの使い方を理解している。
状況判断ができる。
するとプレイヤーは自然に、そのキャラクターを中心に戦うようになる。
攻撃もする。回復もする。判断もする。
最初は便利だったはずなのに、気づくと多くの役割が集まっている。

現場でも同じことが起きる
できる人がいると、周りは安心する。
判断を任せる。トラブル対応を任せる。
説明を任せる。
こうした依頼が重なり、仕事が一人に集中する。
なぜ組織はこの状態を放置するのか
本来、仕事の分担は管理者、工程設計者、組織といった立場が設計している。
しかし、現場ではできる人に任せた方が早いという判断が短期的には合理的になる。
そのため、仕事の集中は意図的な設計というより、現場の効率判断の中で少しずつ作られていく。
できる人が背負う構造
頼られる→任される→断りにくくなる。
この流れが続くと、一人の人に多くの仕事が集まる。
周りから見ると、「あの人はよくできる」
という評価になる。
しかしその裏側では仕事の集中という構造が生まれている。
思考の分岐点
このシリーズでは、主体性、役割、仕事の集中という三つのテーマを見てきた。
現場では、多くの出来事が個人の能力として説明される。
しかしその背後には、役割、配置、評価といった構造がある場合もある。
では、その条件が整っていない現場で、
実際に何が起きているのか。
次のシリーズでは、
一つの場面を順番に見ていく。
トラブルが起きた。
誰かが呼ばれた。
責任が、一人の名前に貼り付いた。
それがどのように起きるのかを、
できるだけ具体的に観察する。
──────
次回 新シリーズ
現場責任者の問い|第1回|責任が貼り付く瞬間
前回
思考の分岐点|第5回|「働かない人」は本当に働いていないのか
──────
▼思考の分岐点シリーズ一覧
この順番で読むと理解しやすくなっています。(思考の進行順)
①思考の分岐点(ステップ1|選択)
②現場責任者の問い(ステップ2|責任)
③分岐点の問い(ステップ3|体験)
ノベル連載マガジン
──────
▼コンテスト応募記事まとめ
