見出し画像

思考の分岐点|第3回|主体性と責任・判断・引き受けの距離感

※この記事は「思考の分岐点」第3回です。シリーズの最初はこちら


主体性という言葉が、
一番ややこしくなるのは、

判断や責任の話と
同じ場所に置かれたときだ。

「主体的に考えて」

そう言われた場面では、
まだ何も起きていないことが多い。

選択肢はある。
裁量があるとも言われている。

その時点では、
確かに自由に見える。


ゲームに例えるなら、
こんな状況だ。

選択肢は表示されている。
どれを選んでも即ゲームオーバーにはならなそうだ。

プレイヤーは考えて選ぶ。

この瞬間までは、
判断は自分の手の中にある。

問題が起きるのは、
結果が出たあとだ。


うまくいかなかった瞬間、画面の外から別の視点が割り込んでくる。

「その選択、 本当に主体的だった?」

この問いを投げてくるのは、
同じプレイヤーではない。

その判断を“見ていた側”
評価する側だ。



現場でも似た構造がある。

判断はある個人に委ねられる。

「そこは任せる」
「裁量はある」

そう言われた状態で、
人は考えて決める。

だが、
結果が想定と違ったとき、
評価の立場にいる人間が別の問いを持ち込む。

「なぜそう判断したのか」
「もっと主体的に考えられなかったのか」

ここで、
判断と責任の距離が一気に縮む。

判断したのは個人。

だが、
責任をどう扱うかを決めるのは、
別の立場であることが多い。


さらにややこしいのが、
引き受けだ。

判断した瞬間に
引き受けが発生するわけではない。

結果が出て、評価が下され、処理が決まり、その流れの中で、

「今回は、君が引き取ってほしい」

という形で後からやってくる。

ここで初めて、
判断は戻れないものになる。

主体性が重く感じられるのは、
この 時間差 のせいだ。


判断したときには見えていなかったものを、
後からまとめて背負わされる。

この三つは、本来、同じものではない。

判断すること。
責任をどう扱うか。 
結果を誰が引き受けるか。


判断は現場で起きる。
責任は評価の場で再定義される。
引き受けはさらに後で、戻れない形で確定する。

だが、
主体性という言葉は、
この三つを最初から一体だったように扱ってしまう。


ゲームで言えば、
オートセーブの存在を知らされていなかった状態に近い。

選んだときは、やり直せると思っていた。

だが後から、「あの選択はもう戻せない仕様だった」と知らされる。

このとき、
選択そのものの意味が変わる。

主体性が問われるのは、
選んだ瞬間ではない。

戻れないと確定したあとなのかもしれない。


ここで、主体性=責任感という話にしてしまうのは、簡単だ。


だが、それは判断と引き受けの距離を見えなくする。

責任を引き受ける覚悟があっても、
判断条件が共有されていなければ、
選択は賭けになる。

逆に、
判断を任されたからといって、
結果すべてを引き取る前提だったとは限らない。

それでも、後から線が引かれる。


この連載は、
ここでいったん区切る。

理由は単純だ。

これ以上進むと、「どう設計すべきか」「どう防ぐか」という話に踏み込んでしまうからだ。

今回は、そこまでは行かない。

ただ、
主体性という言葉が出てきたとき、

判断は誰がしたのか。
責任は誰が定義したのか。
引き受けは、いつ確定したのか。

この三点が同じ場所に置かれているかどうか。
それだけは、一度、見てほしい。

理解して楽になる話ではない。
覚悟を決める話でもない。

どこで重くなったのかを
見失わないための話だ。


主体性は、
最初から重い言葉だったわけじゃない。

重くなったのは、
あとから線が引かれたからだ。


次の回では、
この構造を別の角度から見ていく。


判断でも、責任でも、引き受けでもなく、「動いている人」と「動いていない人」という見え方の話だ。


主体性という言葉が軽く使われる現場では、たいてい同時に、別の不満も生まれている。

──────

 予告
主体性という言葉は、
現場ではもっと身近な形で現れる。

「自分ばかり仕事をしている。」

そんな不満の裏側にも、
見えにくい構造が隠れているのかもしれない。

──────

次回
思考の分岐点|第4回|「仕事をする人」が不満を持つ理由


前回
思考の分岐点|第2回|主体性は「意識」ではなく「立場」から生まれる

──────


▼思考の分岐点シリーズ一覧
この順番で読むと理解しやすくなっています。(思考の進行順)

思考の分岐点(ステップ1|選択


現場責任者の問い(ステップ2|責任


分岐点の問い(ステップ3|体験
ノベル連載マガジン

──────

▼コンテスト応募記事まとめ


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集