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相場は高いのに、なぜ崩れない?――ポピュリズムとQEが作った“歪んだ市場”

「市場は高い。だが、なぜ高いまま“崩れにくい”のか?」── The Real Eisman PlaybookでSteve Eismanが招いたのは、政策・政治とマーケットの接続点を読むJason Trennert(Strategas)。番組は、トランプ政権の関税カード、ポピュリズムの台頭、QE(量的緩和)が残した“歪み”、そして、「クリプトは本当に金(ゴールド)の代替なのか?」まで、いまの相場を動かす“見えにくい土台”を掘り下げた。


1. 「関税は交渉」でも、市場にはショックとして届く


足元の相場は、「株安・金高・原油高・クリプト安」というリスクオフの典型形。番組内でTrennertは、トランプの関税示唆を「常に交渉している(always negotiating)」と捉えつつも、マーケットが“毎回”同じように揺さぶられる構図を示した。

ここで重要なのは、関税が実行されるか否かよりも、政策の“予測可能性”が揺らぐこと自体がボラティリティになる点だ。企業はサプライチェーンと設備投資の意思決定を先延ばしし、投資家は「どの資産がインフレに耐えるか」を再計算する。結果として、番組が推すのは「インフレ耐性」を意識したセクター(資源・素材・産業)や“ハードアセット”への視線である。

2. ポピュリズムの本質は「生活が良くなっていない」という実感


Trennertの整理は明快だ。過去10年の政治を支配したポピュリズムは、左右の「社会実験」への失望から生まれた。象徴例として挙げるのが、左派の自由貿易(例:WTOを通じた対中貿易)と、右派の海外介入(イラク戦争)。
彼の言葉を借りれば、一般の人は「安いTシャツより仕事」を求める。つまり、“マクロで正しい”政策でも、家計の実感とズレると反発が蓄積する。

投資への含意はシンプルで、「人気取り」の圧力は財政拡張を誘発しやすく、インフレ体質を強める。だからこそ、Trennertは、金(ゴールド)を、通貨の規律低下に対するヘッジとして語る。

3. クリプトは“金のように振る舞わない”──投資仮説への疑義


番組の注目ポイントはここだ。リスクオフの日に「金は上がるのに、暗号資産はNASDAQ以上に下がる」。この観察からEismanは核心を突く。
「理屈では上がるはずなのに下がるなら、“保有する理由(thesis)”は何なのか?」

Trennertの答えは慎重だ。供給上限という説明は成り立ちうるが、技術・プライバシー・信認(confidence)・市場の深さがボトルネックになり、「内在価値」よりも「投機の器」へ寄っている、という見立てになる。

4. 2026年は強いが、2027年の持続性は“投資の成果”次第


Trennertは、2026年の景気に強気だ。理由は、減税・還付などの即効性ある刺激と、国内投資を促す供給サイド施策が同時に走るからだ、という整理。
ただし論点は、「それがインフレを上回るスピードで供給力を増やせるか」。言い換えると、需要を膨らませるのは早いが、工場・インフラ・生産性が追いつくのは遅い。このタイムラグが、2027年に向けた不確実性になる。

5. QEが生んだ“歪み”:金融工学が実体投資を駆逐する


「市場が高すぎるのに落ちない」背景として、Trennertは、Federal Reserveのバランスシート拡大と“バックストップ”の常態化を挙げる。企業は低金利を前提に社債を発行し、自社株買いでEPSを押し上げる──彼の言葉で言えば「real engineeringよりfinancial engineering」。

副作用は複数ある。

  • 低金利でレバレッジをかけたPrivate equityが出口を失い、売れない企業が積み上がる(“低ボラ”に見えるのは価格が見えていないだけ)

  • 住宅ローン3%台の借り換えが「住み替え不能」を生み、市場の流動性を奪う

  • 「困れば救う」が繰り返され、リスク認識が麻痺する

さらに、彼は、政府が価格に介入する危うさを例示するため、1962年のJohn F. KennedyによるU.S. Steelへの値上げ批判を引き合いに出す(当時「反ビジネス」と受け止められた)。

6. 次のフロンティア:予測市場×金融市場の“合流”


終盤、Trennertが、「いま最も面白い」と語るのが予測市場(prediction markets)だ。個人が「スポーツより政治・政策に強い意見を持つ」時代、意見がそのまま取引になる。

そして、この領域は、既存の金融インフラと結びつき始めている。たとえば、CME GroupとFanDuelは、複数州で予測市場プロダクトを立ち上げ、拡大を公表している。
さらに、Intercontinental Exchange(New York Stock Exchangeの親会社)がPolymarketへの投資・提携を進める、とも報じられた。

Trennertはここに、「ヘッジファンドがリスクヘッジに使う未来」や、「インサイダー取引の温床になりうるので規制が必要」という二面性を見る。市場の“次の成長物語”であると同時に、ルール整備が追いつかない領域でもある。

7. 個人投資家への要約:この回が示す“3つの視点”


  1. 政治はノイズではなく、インフレ体質を決める構造要因

  2. 資産は「理屈どおり動くか」を検証する(クリプトは金ではない日がある)

  3. 価格が見えないものほどリスクは消えていない(PEの“低ボラ”に注意)

最後に、Trennertが自身の闘病(多発性骨髄腫・腎機能障害)を語りつつ「回復途上」と述べた点にも触れておきたい。視聴者が“人間の物語”として受け止める導入が、硬い議論の理解を助けていた。

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