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「次のFacebook」を見抜いた投資家が読む、AI時代の本当の勝者

VC業界では、今、AIモデルそのものの価値がコモディティ化していくという見方が静かに広がっている。それを公の場で明言する投資家の一人が、Goodwater Capital共同創業者のチー・ファ・チェン氏だ。同氏は、27歳でAccelに在籍していた当時、ハーバード発の6人だけの企業「The Facebook」を最初に発見した人物として知られる。米TechCrunchが先週行ったインタビューで、チェン氏は、AI時代の勝者は必ずしもAIを販売する企業ではないという見立てを語った。


1. インフラはコモディティ化し、価値はアプリケーション層に移る


チェン氏は、PC・ウェブ・モバイルという過去のテクノロジーサイクルに共通するパターンを指摘する。インフラ企業の市場価値は2000年にピークを迎えたが、25〜26年が経過した現在でも、名目ドルベースでその水準を超えていないという。

1-1. 数字で見るウェブとモバイル時代の教訓

具体的な数字として、チェン氏はこう語る。

「ウェブ時代、インフラの新規参入企業が生み出した市場価値は4000億ドルだったが、アプリケーション企業は3.1兆ドルを生み出した。これは新規価値の88%に相当する。モバイル時代も似たような構図で、インフラが約7000億ドル、アプリケーションが3.7兆ドルだった」

NetflixやSpotify、Meta、Uber、Airbnbといった企業が、その「アプリケーション層」の代表例として挙げられている。

2. Googleの値下げが示す「価格競争の始まり」


この構図はすでにAI領域でも表面化しているという。チェン氏が言及したのは、Googleが、先週、AIサブスクリプション製品の価格を月額7.99ドルから4.99ドルへ引き下げ、ストレージ容量を2倍にしたという動きだ。垂直統合と販売網に強みを持つ大手企業が、一般消費者向けに価格競争とバンドル戦略を仕掛け始めている段階に入ったとチェン氏は見ている。

3. パーソナライゼーションこそが次の勝者を決める


チェン氏が繰り返し強調するのは「パーソナライゼーション」という軸だ。

「正しく実行できれば、顧客満足度や深いエンゲージメント、そして、時間とともに高まるARPU(顧客あたり収益)が得られる」

3-1. エンターテインメントと女性ヘルスケアの実例

Goodwater Capitalのポートフォリオには、Triumph、Ritten、Flow GPTといったエンターテインメント企業が含まれている。これらの企業のユーザーは、「AIアプリケーションを使っている」とは認識せず、「エンターテインメントを楽しんでいる」と捉えているという。その結果、これらの企業は高い利益率を保ったまま、年間収益(ARR)1億ドルから6億ドル規模へ急速に到達しているとチェン氏は説明する。

もう一つの例が、女性向けヘルスケア企業のMidi Healthだ。更年期前後のホルモン補充療法に十分な訓練を受けた医療提供者は限られているという構造的な課題がある。AIを活用することで提供能力を拡大し、これまで対応できなかった数十万人規模の患者にコスト効率良くケアを届けられるようになったという。

4. ローカルAIの急速な追い上げ


モデルの性能差についても、チェン氏は具体的な時間軸を示している。2年前、スマートフォン上で動くAIとクラウド上の最先端モデルとの性能差は18〜24ヶ月相当あったが、現在その差は6ヶ月程度まで縮まっており、来年には3ヶ月程度になるとの見立てだ。一方で、2007年のiPhone登場時と同様、技術の用途がまだ十分に定まっていない点には注意が必要だとも述べている。

5. スーパーアプリの壁、そして「リアルへの回帰」


Facebookは、2009年のFacebook Creditsを皮切りに、Facebook PayやLibraなど複数回「スーパーアプリ」化を試みたが、いずれも実現に至らなかった。チェン氏は、その背景について、エンターテインメントやソーシャルと、銀行・金融サービスとの間には信頼面での明確な隔たりがあると分析する。

「エンターテインメントには、滞在時間は長いが収益化は相対的に低い。金融サービスは逆で、収益化は高いが滞在時間は短い。利用者は銀行アプリに長居したいとは思わない」

同時にチェン氏は、デジタルコンテンツが無限に供給される時代だからこそ、人々はリアルな人間関係や体験を強く求める方向に振れていると指摘する。Goodwaterは、パリ発の「Bump」(旧Zenly創業者によるサービス)や、ロンドン・マドリードを拠点に「欧州のLive Nation」と呼ばれる「Fever」に投資しており、AIが場所や交友関係のデータを活用し、リアル体験をより個人に最適化された形で提供する流れに注目しているという。

物理層・インフラ層が次々とコモディティ化していく中で、価値がどの層に積み上がっていくのかを見極める視点は、AI関連株や非公開企業への投資判断において一つの参考軸になりそうだ。

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