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AI時代の「分散の幻想」——BlackRockが提案するオルタナティブ投資活用の新しいポートフォリオ設計

2026年の市場環境は、過去数十年と大きく異なる様相を呈している。ボラティリティの復活、インフレの波状的な動き、ゼロ近辺から脱した金利水準、AI投資ブームによる資本支出の急拡大、拡大する財政赤字——これらは単発の変化ではなく、BlackRock Investment Institute(BII)が、「レジームシフト」と呼ぶ構造的な転換だ。

BlackRockのポッドキャスト「The Bid」は、こうした環境でポートフォリオをどう構成すべきかを特集し、プライベート市場・インフラ・ヘッジファンド・デジタル資産という4つのオルタナティブ投資について専門家が解説した。


1. 「分散の幻想」——60/40ポートフォリオが機能しにくくなっている理由


1-1. 株と債券が同じ方向に動く時代

数十年にわたり、60%株式・40%債券という「60/40ポートフォリオ」は投資家の標準的な答えだった。株は成長、債券は安定という役割分担で、両者が逆相関に動くことが前提だった。しかし、株と債券が同時に下落するような局面では、この分散効果は機能しない。

BIIのJean Boivin氏は、「市場は少数の構造的テーマ——AIや地政学的分断——によって動いており、これらから中立でいることがますます難しくなっている」と指摘した。

1-2. 「分散の幻想」という概念

Boivin氏が導入したのが「分散の幻想(Diversification Mirage)」という概念だ。「表面上は分散しているように見えても、実際には同じ力で動いている」という状況を指す。例えば、AI関連テック株を避けて他のセクターに分散したつもりでも、実態としてはAIビルドアウトへの見方次第で動くセクター(エネルギー・電力・半導体材料など)に投資している場合がある。

こうした環境で有効な分散を達成するには、伝統的な株・債券の外に出る必要がある。これがオルタナティブ投資が注目される理由だ。

2. オルタナティブ投資とは何か——4つのカテゴリ


2-1. プライベート市場

Preqinのリサーチ責任者Cameron Joyce氏によれば、プライベート市場とは「証券取引所に上場していない企業や資産への投資」だ。プライベートエクイティ・プライベートクレジット・インフラ・不動産が含まれる。

規模の拡大は顕著で、パンデミック前の11兆ドルから、2030年には32兆ドルのAUM(運用資産残高)に達すると予測されている。ただし最大の特徴はその非流動性で、「一度投資すると何年も保有し続ける必要がある」という点は投資家が理解すべきトレードオフだ。

2-2. インフラ——「AIに強気なら電力に強気になれ」

インフラは、オルタナティブの中で特に注目が高まっているカテゴリだ。BlackRockの上場インフラ戦略責任者Balf Morrison氏は、インフラの対象として電力・ガス・水道などのユーティリティ、データセンター、通信タワー、空港、有料道路、鉄道などを挙げた。

AI時代における特別な意味合いは電力だ。「AIに強気で、その普及を信じるなら、電力・ユーティリティにも強気でなければならない。AIはデータセンターなしには作れず、データセンターは莫大な電力なしには動かない」というMorrison氏の発言は、インフラをAI投資の「隠れた受益者」として見る視点を示している。

2-3. ヘッジファンド戦略——低相関のリターン源泉

BlackRockのポートフォリオ管理グループ副責任者Mike Pile氏は、ヘッジファンド戦略の特徴を「伝統的な株・債券との相関が低いリターン源泉を提供すること」と説明した。ロング・ショート戦略やデリバティブなど多様な手法を使い、市場全体の方向性に依存せずリターンを追求する。

市場のボラティリティが高まり、銘柄間の格差(分散度)が大きくなると、ヘッジファンドの機会は増える。「2021年以降、市場の分散度が格段に高まり、ヘッジファンドにとってより大きな機会が生まれた」とPile氏は述べた。

なお、ヘッジファンドはモノリシック(一枚岩)ではなく多様な戦略がある。BlackRockのシステマティック投資研究責任者Ron Kahn氏は、「常にアルファを生み出し続けるためには、古いアイデアに代わる新しいアイデアを絶え間なく生み出す必要がある。データ・AI・機械学習はそのためのツールだ」と説明した。

2-4. デジタル資産——ゴールドとBitcoinの役割

BlackRockのデジタル資産責任者Robbie Mitchnik氏は、デジタル資産を「クリプト」「ステーブルコイン」「トークン化資産」の3つに分類した。投資家の関心という観点では、ゴールドとBitcoinが特に注目されている。

BlackRockのJay Jacobs氏は「両者に共通するのは、法定通貨システムの外に存在するグローバルな通貨代替資産という性質だ。経済的不確実性・インフレ懸念・地政学リスクが高まる局面で価値が高まりやすく、株・債券との相関が低い」と説明した。

一方で、Bitcoinのボラティリティは依然として高く、2011年・2013年・2017年・2022年と繰り返される急騰・急落のサイクルには留意が必要だ。アクセス面では、ETFなどの馴染みやすい形で機関投資家グレードのインフラが整いつつあり、ポートフォリオに組み込みやすくなっている。

3. 50/30/20モデル——新しいポートフォリオの考え方


3-1. 60/40から50/30/20へ

BlackRockが示す一つの方向性は、60/40ポートフォリオから50%株式・30%債券・20%オルタナティブへのシフトだ。これはあくまで例示であり、投資家ごとの目的・リスク許容度・流動性ニーズによって最適な配分は異なる。

重要なのは比率の数字そのものではなく、「伝統的な資産クラスだけでは達成しにくくなった分散と追加的なリターン源泉を、オルタナティブで補完する」という発想の転換だ。

おわりに


BlackRockが「The Bid」で示した視点の核心は、「AI時代のポートフォリオは伝統的な60/40では不十分になりつつある」という認識だ。AIが市場の主要ドライバーになると、一見分散しているように見える投資が実は同じリスクを取っている「分散の幻想」に陥りやすい。インフラ・プライベート市場・ヘッジファンド・デジタル資産というオルタナティブは、こうした環境での有効なツールになりうる。ただし非流動性・複雑性・ボラティリティという固有のリスクとのトレードオフを理解した上で活用することが前提だ。

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