Micron、第4四半期予想を$51億まで上方修正 ― AppleはiPad・Mac・Vision Proなど全製品ラインで値上げ
AI需要に伴うメモリ不足が、ついにスマートフォンやPCといった消費者向け製品の価格にまで波及し始めた。Appleは、複数の製品カテゴリーで価格を引き上げ、一方で、メモリメーカーのMicronは、市場予想を大幅に上回る業績見通しを示した。本記事では、Bloomberg Techの報道内容をもとに、半導体業界で進行中の構造変化と、それが投資家に意味することを整理する。
1. Micronの業績見通しが市場予想を大幅に上回る
Micronは、今期の業績見通しについて、最大$510億という数字を提示した。前四半期の$430億から大きく上振れし、ウォール街の予想を上回る内容となった。
この発表を受けて、Micron株は急伸し、月間で最大の上昇率を記録する展開となった。番組内では、株価の動きについて「2011年以来となる最高の上昇日になりそうだ」との指摘もあった。
重要なのは、経営陣が単に好業績を発表しただけでなく、AI主導のメモリ不足が2027年以降も続く可能性があるとの見通しを示したことだ。生産能力の増強を進めているにもかかわらず、供給改善への明確な見通しは示されていない。
2. Appleが複数製品ラインで価格を引き上げ
Micronの発表と表裏一体の関係にあるのが、Appleの価格改定だ。Bloombergのマーク・ガーマン記者は、この動きを「異例の措置」と表現している。
価格引き上げの対象は広範囲に及ぶ。
「これは、iPad、Mac、Apple TV、Vision Proに及ぶ。iPhoneを除く、ほぼすべての製品ラインだ」
ガーマン氏はこのように指摘し、アクセサリー類とiPhoneを除く主要製品のほぼ全てが対象になっていると説明した。
2-1. 値上げの背景説明
Appleは、今回の価格改定について、AIデータセンターでのメモリ需要拡大が背景にあると説明している。ガーマン氏によれば、Appleは、「できる限り長く値上げを避けてきたが、もう選択肢がなくなった」状況だという。
注目すべきは、Appleが新モデル発表時にさらなる価格調整の可能性を「ほのめかしている」点だ。これは今後の製品発表における値上げの前触れとも解釈できる。
2-2. 市場への影響をどう見るか
PMI Wealth Managementのチーフ・マーケット・ストラテジストは、今回の動きを「経済レジーム・チェンジ」と表現した。
データセンターから始まった需要急増が半導体業界全体に波及し、企業側は長期契約による需要の確実性を求めている、という構造的変化が起きているという分析だ。同氏は、過去にはコモディティの一部が自動車業界からPCメーカーやAI関連企業に振り分けられた例を挙げ、今回も似た構造のシフトが起きている可能性を指摘した。
なお、AppleTVについては低価格の競合(Amazon、Googleなど)が存在するため、価格引き上げが市場シェアに影響するリスクも指摘されている。
3. DRAM価格、年200~300%上昇という分析
インテリジェンス・アナリストのジェイク・シルバーマン氏は、現在のメモリ市場の状況を「歴史的な常識からの大きな逸脱」と分析している。
従来、メモリの価格契約は月次・四半期ベースが中心だった。しかし、現在は、2030年まで延びる長期契約が増えているという。これは、DRAM価格が今年中に200%から300%上昇するとの見通しを背景に、ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)が将来の供給と価格の見通しを確保しようとする動きの結果だとされる。
この需要の背景には、AIデータセンターでの学習・推論処理に必要なGPU用メモリ(HBM)に加え、システムメモリ(LPDDR等)への需要拡大がある。さらに今後はエージェント型AIの普及により、メモリ需要がさらに拡大する可能性も指摘されている。
4. AI投資への逆風となりうる要因
番組では、AI関連株への新たなリスク要因として、AIに対する世論の反発が取り上げられた。アナリストのマシュー・グリフィン氏によれば、データセンター建設に対する一部地域での建設停止や、税優遇措置の見直しといった動きが、すでに地方レベルで進んでいるという。
「最悪のシナリオとしては、データセンター建設の全国的な一時停止か、ビッグテックを対象とした税制が考えられる」
ニューヨーク州では建設一時停止の法案が知事の決裁待ちとなっており、オハイオ州・イリノイ州でもデータセンター向け税優遇の見直しが進められているとの報告があった。
5. AI投資の収益化はどこまで進んでいるか
Exponential Viewの創業者でBloomberg寄稿者のアジーム・アザール氏は、AI関連の収益動向についての分析を発表した。同氏のチームは公開情報や業界内の情報を基に、AI関連収益の実態を推計している。
分析によれば、中国を除く世界のAI関連売上は第1四半期に$250億に達し、年率換算では前年同期比で約200%の成長を記録しているという。データセンターや半導体投資にかかる減価償却費(推計$210億)を、現在の収益ペースが上回り始めているとの指摘もあった。
アザール氏は、AI市場の成長スピードについて「インターネットの3倍、モバイルの3倍の速さで成長している」と評価しつつ、今後はオープンソースへの移行や競争激化が進むとの見通しを示した。

