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Benioff vs. Schulman——同規模2社のCEOが語る「真逆のAI未来」から投資家が読み取るべきこと

2026年4月20日付のWall Street Journal(WSJ)に、興味深い2本の記事が掲載された。一方は、Salesforce CEO Marc Benioffによる「SaaS終末論(SaaSpocalypse)」への反論。もう一方は、Verizon CEO Dan Schulmanによる「AIが引き起こす大量失業」への警告だ。

Salesforceの時価総額は、約1,500億ドル、Verizonは、約1,900億ドルと、両社はほぼ同規模の大企業でありながら、AIの影響に対する見方はまるで正反対である。本稿では、この2つの視点を軸に、SaaS企業の現状、AI雇用論の実態、そして、Blue Originの最新打ち上げニュースまでを整理し、投資家・ビジネスパーソンが押さえるべきポイントを解説する。


1. Marc Benioff「SaaS終末論は間違い」——Salesforceの反撃


1-1. 「SaaSpocalypse」とは何か

「SaaSpocalypse(SaaS終末論)」とは、AIエージェントの台頭によって従来の従業員単位(パーシート)課金モデルに依存するSaaS企業が存在意義を失う、というウォール街の懸念を指す。SaaS株は、Salesforceを筆頭に下落が続いており、投資家はAIエージェントの台頭がこれらの企業を弱体化させ、従業員単位の課金モデルを時代遅れにすると懸念している。

実際、Salesforce株は、2026年に入って30%以上下落している。しかし、Benioffは、この悲観論は本質を見誤っていると主張する。

1-2. Benioffの主要論点

Benioffの反論は次の3つに要約できる。

第一に、AIはSalesforceの価値を高めている。 AIは、SalesforceのプラットフォームをAIエージェントのOSとして機能させることで、むしろ価値を高めていると同氏は述べている。

第二に、AIラボがSalesforceを置き換えるのは容易ではない。 セキュリティ、コンプライアンス、データ管理といったエンタープライズに不可欠な機能を「バイブコーディング」で再現することは現実的ではないと同氏は強調する。

第三に、大手AI企業はむしろパートナーになりたがっている。 「Anthropicは、全社の業務をSalesforceとSlack上で運用している。すべてのAI企業がそうだと思う」とBenioffは述べた。

1-3. Agent AlbertとAgentforceの現在地

Salesforceは、年内に新AIプラットフォーム「Agent Albert」の発表を予定している。Agent Albertと呼ばれる新製品が年末までにローンチされる見通しだ。これは、ChatGPTの登場に触発されて、Benioffが3年前から加速させてきたAI戦略の集大成とされる。

一方、先行プロダクトであるAgentforceの普及率は道半ばだ。2024年末のローンチ以来、Salesforceの15万顧客のうちAgentforceを導入したのは23,000社にとどまっている。

成功事例もある。教育企業のPearsonでは、AIが自動処理する顧客問い合わせの割合が40%増加した。一方で、課題も明確で、複雑なタスクではシステムの精度が不足しており、ジュエリーメーカーのPandoraは、Agentforceが曖昧な顧客リクエストに対して信頼性のある推奨を行えないと報告している。

Salesforceは、新指標「Agentic Work Unit(AWU)」も導入した。AWUは、トークン数ではなく、AIエージェントが実際にタスクを完了したかどうかを測定する指標だ。

1-4. SaaS企業の収益は本当に崩壊しているのか

注目すべきは、「SaaS終末論」が叫ばれる一方で、実際の収益データにはまだ明確な崩壊の兆候が見られない点だ。元の議論で取り上げられた数字によると、GitLabは23%、Snowflakeは30%、Cloudflareは34%、HubSpotは20%、DataDogは29%と、多くのSaaS企業が依然として力強い成長率を維持している。

Salesforce自体も直近四半期で112億ドルの売上を計上し、前年同期比12%増、通年では415億ドルで10%増となった。
期待値の調整による株価下落と、実際のビジネス基盤の崩壊は別物である。投資家にとっては、ナラティブと実態のギャップを冷静に見極めることが重要だ。

2. Dan Schulman「失業率20〜30%時代が来る」——Verizon CEOの警告TechRadar


2-1. 異例の悲観的メッセージ

Verizon CEOのDan Schulmanは、多くのテック経営者とは対照的に、AIの負の側面について率直に発言している。同氏は、AIの影響について、2〜5年以内に失業率が20〜30%に達し、ヒューマノイドロボットが肉体労働者に取って代わると予測している。

この発言はWSJのインタビューで明らかにされたもので、「非常に困難な時代であり、誰もがそれを知っている。だから正直に、現実的に、できる限り真実を語ることが重要だ」と語った。

2-2. 言葉と行動のギャップ

Schulmanは言葉だけでなく、実際の行動でもAI時代への備えを進めている。同氏はCEOに就任するとAI時代に対応した2,000万ドルのキャリア移行・再訓練基金を設立すると同時に、13,000人の人員削減を実施した。

ただし注目すべきは、同氏は、CEO就任後に解雇した13,000人の人員削減はAIとは無関係だと主張している点だ。Verizonが、「官僚的すぎ、プロセス重視すぎだった」組織の効率化が理由だという。AIによる大量失業を予言しながら、自社のレイオフはAI起因ではないという説明には、やや矛盾が感じられる。

2-3. 社員に「AIで訃報を書かせよ」——独特のAI推進法

Schulmanの社内でのAI推進方法もまた話題を呼んでいる。CEO就任以来、同氏は従業員にAIを活用するよう促し、子供とAIについて話し合い、愛する人にAIで詩を書き、さらには、自分の訃報をAIに書かせてみるよう勧めている。

テクノロジーへの理解を深める意図は理解できるが、レイオフと同時期にこうした施策を行うことは、従業員の心理的安全性の観点からは疑問が残る。

3. 「失業率30%」予測の現実味を検証するMobile World Live


3-1. 数字で見るAI雇用インパクト

Schulmanの20〜30%失業率予測はどの程度現実的なのか。客観データと比較してみよう。

Boston Consulting Group(BCG)が、1億6,500万の米国の雇用を約1,500の職種にわたって分析した最新レポートによると、2〜3年以内にAIによって50〜55%の雇用が「再編」されるとしている。ただし「再編」は、「消滅」を意味せず、仕事の内容が変わるということだ。

BCGが実際に消滅すると予測しているのは、米国の雇用の10〜15%(約1,600万〜2,500万のポジション)であり、しかもその時間軸は5年以内だ。
重要なのは、BCGはこの分析が失業率の予測ではないと明言している点だ。新規雇用の創出やマクロ経済的要因は考慮されていない。

3-2. Dario Amodeiの予測との比較

Anthropic CEOのDario Amodeiもエントリーレベルのホワイトカラー職における50%の雇用喪失リスクに言及しているが、米国のエントリーレベルのホワイトカラー労働者は、推定500〜700万人であり、米国の労働力人口1億7,000万人に対しては全体の失業率6〜9%程度にとどまる計算になる。これはCOVID時の水準にも満たない。

Schulmanの20〜30%という数字は、政府の介入が一切ない最悪ケースを想定しないと到達し得ない水準であり、大恐慌レベルに相当する。歴史的に見て、技術革新による雇用喪失は、予測よりもはるかに緩やかに進行してきた。自動運転車の普及ペースが好例だ。

3-3. NvidiaのJensen Huang、AmazonのAndy Jassyとの対比

Nvidia CEOのJensen Huangは、最近、雇用喪失への懸念を否定し、歴史的にテクノロジーの進歩は常により多くの生産性と繁栄をもたらしてきたと述べた。Amazon CEOのAndy Jassyも同様に、一部の職種は消滅するが新たな雇用が生まれると楽観的な見方を示している。

一方で、米国の1,400人を対象とした調査では、55%がAIは善よりも害をもたらすと回答しており、前年の44%から上昇している。経営者と一般市民の間にはAIに対する認識に大きなギャップがあることがわかる。

4. Blue Origin New Glenn——3回目の打ち上げで衛星を"間違った軌道"に


4-1. ブースター着陸成功、しかし衛星は失敗

2026年4月19日、Jeff BezosのBlue Originは、再利用したNew Glennロケットの打ち上げに成功したが、顧客であるAST SpaceMobileの通信衛星を正しい軌道に投入することに失敗した。

「Never Tell Me the Odds」と名付けられた第1段ブースターは、大西洋上のドローンシップへの2回目の着陸に成功した。これは、Blue OriginとSpaceXのみが達成している技術的偉業だ。

しかし、AST SpaceMobileは、声明で、BlueBird 7衛星が「計画よりも低い軌道」に投入され、衛星の推進技術では運用を維持できない高度であるため、大気圏に再突入させて廃棄すると発表した。

4-2. FAAがNew Glennを飛行停止に

FAAは、上段の不具合についてNew Glennロケットの飛行停止を命じ、調査を開始した。Blue Origin CEOのDave Limpは、上段エンジンの1基が目標軌道到達に十分な推力を生成しなかったと考えられるとコメントした。

4-3. AST SpaceMobileへの影響は限定的か

衛星喪失のコストは、AST SpaceMobileの保険でカバーされる見込みだ。同社は、後続のBlueBird衛星が約1か月で完成する予定であり、2026年末までに約45基の衛星を軌道上に配備する計画を維持するとしている。

AST SpaceMobile株は翌月曜日に5%以上下落した。ただし、アナリストのGreg Pendyは、AST株に対する買い推奨を維持しつつ、目標株価を137ドルから115ドルに引き下げた。

宇宙ビジネスにおいてミッション失敗は珍しいことではない。SpaceXも2015年にFalcon 9のミッション中に爆発事故を起こし、2016年にはMeta(旧Facebook)の衛星を搭載したロケットが発射台で爆発している。Blue Originにとって信頼性の構築は今後の課題だが、1回の失敗でプログラム全体を評価するのは時期尚早だろう。

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