Anti Fund、オーバーサブスクライブで1億ドルのグロースファンドを組成 ― ジェイク・ポール×ジェフ・ウーが表舞台に
YouTubeで一時代を築いたジェイク・ポール氏が、ボクサーとして商業的成功を収め、いまは投資家としてシリコンバレーに足場を築いている。a16zのポッドキャストに、Anti Fundを共同創業するジェフ・ウー氏とともに出演し、ファンドの近況やキャリア観、注目経済の生き残り方について語った内容を整理する。
1. Anti Fund、1億ドルのグロースファンドをオーバーサブスクライブで組成
番組冒頭、両氏は新たな成長ファンドの組成を発表した。ジェイク・ポール氏は、「ティアワンと呼ばれる名前の多くが、もしかしたら全部入っているかもしれない」と語り、出資先として、Anduril、Etched、Cognition、SpaceX、OpenAI、Anthropic、Saronic、Modalなどの名前を挙げた。ファンドは、オーバーサブスクライブ(募集超過)の状態で組成されたという。
ジェフ・ウー氏は、マーク・アンドリーセン氏、ベン・ホロウィッツ氏、クリス・ディクソン氏が自分たちの初期LPであったことを明かし、業界の有力者からの支持が後の出資判断の追い風になったと振り返った。
2. YouTuberからボクサー、投資家へ ― 異色のキャリアパス
2-1. ボクシングでの転機
ジェイク・ポール氏は、コンテンツ制作者としての活動からボクシングに進んだ経緯を「実験」として始めたと説明する。初戦は、100万件のペイパービュー購入、3万枚のチケット完売を記録し、当時としては、最も視聴されたアマチュアボクシング試合になったという。本人は、「これは間違いなく巨大なものだ」と感じ、世界チャンピオンを目指す決意につながったと語った。
2-2. 「現金こそが王」という持論
両氏は、フォロワー数の多さと実際の収益化能力は必ずしも一致しないと指摘する。ジェイク・ポール氏は、業界には多くのフォロワーを持つ人物がいる一方で、それを実際の現金に変換できていない例が多いとし、「現金こそが王だ」という考え方を繰り返し強調した。
3. レジリエンス(回復力)の源泉
ジェフ・ウー氏は、パートナーであるジェイク・ポール氏の強みとして、感情面の耐性と継続力を挙げる。本人は、幼少期に厳格な父親のもとで育ったこと、また、高校時代から匿名アカウントによる批判やいじめにさらされていた経験が、現在の精神的な耐性の基盤になったと振り返った。
3-1. セラピーへの考え方
セラピーや自己ケアについて尋ねられたジェイク・ポール氏は、有効性自体は認めつつも、「セラピーが被害者意識の繰り返しに変わってしまうことには注意が必要だ」と語った。一方で、幼少期の経験を理解し、現在の行動パターンと結びつけて捉える作業には価値があるとも述べている。
4. アテンションエコノミー時代の生存戦略
ジェフ・ウー氏は、AIによって知性そのものが計算資源によって供給される時代が近づく中で、今後重要になるのは、「人との関係性を築く力」だと指摘する。番組内では、外見的な魅力を高める「ルックスマックス(looksmaxxing)」と、知性を磨く「AIマックス(AI-maxxing)」という二つの方向性が紹介された。
4-1. 2026年に22歳ならどうするか
学生に向けたアドバイスとして、ジェフ・ウー氏は、数学やコンピューターサイエンスを深く理解することの重要性を強調し、AIモデルの仕組みを理解することが、それらをより的確に使いこなす力につながると述べた。一方ジェイク・ポール氏は、現在スタンフォード大学への進学を検討しており、ボクシング引退後にNFLでのプレーも視野に入れていることを明かした。
5. クリエイターとしての持続力 ― MrBeastとの比較
長年トップに残るクリエイターが少ない理由について、ジェイク・ポール氏は、自身と兄、そして、MrBeast(ジミー)を例に挙げた。MrBeastについては、「非常に数値分析的で、アルゴリズムを徹底的に研究するタイプ」と評し、自身のアプローチは、より感覚的・創造的だと位置づけている。複数の領域(YouTube、ボクシング、ビジネス、政治)で異なる視聴者層を獲得し続けてきたことが、長期的なブランド維持の要因だと分析した。
6. 「すべての注目は良い注目か」
炎上やコントロバーシーについて、ジェイク・ポール氏は、「私のような人間にとっては、すべての注目が良い注目だ」としつつも、これは万人に当てはまる法則ではないと釘を刺した。自身が最初に注目を集めたきっかけが、ニュース取材車の上に乗った行為だったことも明かしている。
ストリーマー文化の現状についても言及し、配信プラットフォーム上での過激な行動が常態化していることに一定の懸念を示しつつ、自身の活動がその先例になった可能性があると振り返った。
7. 信仰、確信、そして政治への接近
ジェイク・ポール氏は、自身の精神的な支えとして信仰を挙げ、「困難な状況も成長の機会であり、すべてには理由がある」という考え方を語った。政治については、米国市民として意見を発信する権利を重視していると述べ、将来的に選挙への関与や立候補の可能性についても言及した。なお、この点については個人の見解として語られたものであり、本記事は両氏の発言内容を中立的に紹介するものである。
8. 教育改革と「バッジ」の重要性
教育制度については、約1世紀近く大きな改革がなされていない点に課題を指摘し、資産形成や税金など実生活に直結する内容を学校教育に取り入れるべきだという意見を述べた。
ジェフ・ウー氏は、ピーター・ティール氏が「大学に行くな」と主張しながら自身はスタンフォード大学・同大学院出身である点を引き合いに出しつつ、その主張の本質には一定の理があると分析する。学歴や受賞歴といった「外部からの肯定(バッジ)」は、特に何らかの分野で世界的な実績を持たない人にとって、自信や信用の裏付けとして依然有効だという見解を示した。
9. 創業者の「目利き」と次の一手
ファンド運営における創業者評価の基準について、ジェフ・ウー氏は、「対象分野で世界的になれるという強い熱意があるか」「困難に耐えてやり抜く粘り強さがあるか」の二点を重視すると説明した。また、防衛テック企業への投資を検討する際にAnduril創業者のパーマー・ラッキー氏のチームに直接意見を求めた例を挙げ、信頼できる人脈を通じたリファレンスチェックの重要性を強調している。
両氏は今後、自ら新たな企業を共同創業する可能性にも言及し、急速に進化するAI市場の中でタイミングの難しさも認めつつ、引き続き投資活動とブランド構築の両方に取り組んでいく姿勢を示した。
