GTC現地4社CEOインタビュー——AIインフラ・エージェント・オープンソース・電力の最前線
Nvidia GTC 2026の会場から、CoreWeave・Perplexity・Mistral AI・IRENの4社CEOへのインタビューが公開された。AIインフラの資金調達構造、エージェントAIの商業化、オープンソースモデルの戦略、そして、電力という物理的制約——これらのテーマを4者がそれぞれの立場から語った内容は、AI産業の現在地を多角的に映し出している。
1. CoreWeave(Michael Intrator CEO)——「GPUは16ヶ月で陳腐化する」説への反論
1-1. 暗号通貨からAIインフラへの進化
CoreWeaveは、2017年に算術ヘッジファンドのサイドプロジェクトとして始まり、GPU活用の可能性を探る中で暗号通貨マイニングから、CGIレンダリング、医療研究、そして、2020〜2021年頃からニューラルネットワークへと用途を広げてきた。Intrator氏は、「A100を買ってオープンソースのAIプロジェクト(Eleuther AI)に提供し、そこで大規模並列計算の運用ノウハウを習得した。それが授業料だった」と語った。
現在は、NvidiaのGPUアーキテクチャ(H100→H200→GB200→GB300)を最初に商業規模で展開する「先端GPUの先兵」として機能しており、「GPUはNvidiaより下、モデルより上のすべてのソフトウェア統合・運用・可観測性を担う」と事業を定義している。
1-2. 「GPUの短命説」はショートポジションの論拠
GPUの償却サイクルが16〜18ヶ月という議論に対し、Intrator氏は、「それはショートポジションを持つトレーダーが広めている話であり、現場の事実とは全く合わない」と明言した。CoreWeaveの平均契約期間は5年で、6年の減価償却スケジュールを採用している。
さらに「A100(Ampere世代)の現在のクラウド価格は一年前より上昇している」という事実も紹介した。AIモデルの性能向上により古いGPUでも生み出せる価値が高まっているためだ(Dylan Patelが指摘した「H100の価値は3年前より高い」論と一致する)。
1-3. 「ボックス型」ファイナンスで18ヶ月に350億ドルを調達
CoreWeaveが独自に考案した「ボックス型」ファイナンスの仕組みも説明した。顧客との長期契約をGPU・データセンター契約とともに一つの「ボックス」に入れ、キャッシュフローのウォーターフォールを設計する。「Microsoftがボックスに支払い、そこから電力費・金利・元本が順番に引かれ、残りがCorWeaveに戻る」という構造だ。
この仕組みにより18ヶ月で350億ドルを調達し、資本コストを600ベーシスポイント削減することに成功した。「2.5年で5年契約の元利を回収できる経済性があるため、最も洗練された貸し手でも安心して貸し出せる」という論理だ。
2. Perplexity(Aravind Srinivas CEO)——「AIはオーケストラ、自分たちは指揮者」
2-1. モデル中立戦略という競争優位
Perplexityは、「どのモデルが勝っても関係ない」というモデル中立(スイス的)なポジションを確立している。GPT・Claude・Gemini・Llama・DeepSeek・Kimmy・Qwenなど複数のモデルを束ね、プロンプトに応じて最適なモデルに自動ルーティングする「オーケストラの指揮者」としての価値を提供している。
Srinivas氏は、「どのモデルが最強かは問題でない。そのモデルを使って最高の仕事をする方法を知っているのが我々だ」と述べた。さらに「コーディングでもClaude CodeとCodexは異なる強みを持つ。モデルの専門化が進む世界では、その組み合わせをうまく扱えるプラットフォームが独自の価値を持つ」と分析した。
2-2. 財務:全収益で正のグロスマージン
ユーザー数は、月間「数千万人」規模だが、Srinivas氏が強調したのはグロスマージンの質だ。「我々は単純にトークンを売り直しているのではない。RAG・オーケストレーション・検索の優位性で効率良くモデルを使い、全収益で正のグロスマージンを達成している」と述べた。企業向け($40/月のEnterprise Proと$400/月のEnterprise Max)が最速成長中で、「Enterprise Max顧客のコスト削減効果は1億ドル以上」と開示した。
2-3. Perplexity Computerとパーソナルコンピュータ構想
エージェントAIの次の一手として、Mac Miniと連携した「Perplexity Personal Computer」を発表予定と述べた。ローカルの個人データ(税務書類・写真・メモなど)は、Mac Mini上で処理し、サーバー上にあるデータ(GmailやGoogleカレンダーなど)は、クラウドで処理するハイブリッド構成だ。「インストールは一つの実行ファイルを入れるだけ。Open Clawのノンエンジニア版」と説明した。
Srinivas氏は、「AIはオペレーティングシステムになる。従来のOSは具体的な命令を実行するが、AIのOSは高レベルな目標から始まる」と語った。
3. Mistral AI(Arthur Mensch CEO)——垂直特化とオープンソースの組み合わせ
3-1. Nvidiaとの次世代フロンティアモデル共同開発
Mistralは、Nvidiaとの提携で次世代フロンティアオープンソースモデルを共同トレーニングすることを発表した。これは18ヶ月前のMLMOに続く取り組みだ。Mensch氏は、「オープンソースのフロンティアモデルが最高の基盤であり、そこからエンタープライズ向けに特化(Forgeプロダクト)することでビジネスを作る」と戦略を説明した。
3-2. 垂直特化モデルの優位性と企業データのガバナンス
「エンタープライズが数十年蓄積してきた知的財産(製造データ・センサー・業務データ)をクローズドモデルに接続するのは難しい。オープンモデルなら重みを修正でき、任意のクラウドや自社インフラに展開できる」と述べた。
特にデータガバナンスについて、「企業データは全員がアクセスできる単一のシステムに入れるべきではない。コンテキストエンジン——データの場所とアクセス権限のマッピング——が必要だ。これがエンタープライズAI導入の核心的な技術課題だ」と指摘した。給与情報がエンジニアに漏れないようにするといったアクセス制御が、エージェントAI展開の鍵になる。
4. IREN(Daniel Roberts co-CEO)——「4.5ギガワット確保済み、Microsoftとの97億ドル契約はキャパシティの5%」
4-1. ビットコインマイニングからAIデータセンターへ
IRENは、オーストラリア発の上場企業で、ビットコインマイニングをブートストラップとしてデータセンター事業を構築してきた。現在はビットコインをAIチップに置き換えている最中だ。Roberts氏は、「8年前から大規模電力インフラのある土地を取得してきた。現在4.5ギガワットを確保済みで、これはベイエリア全体の年間消費電力とほぼ同等」と述べた。
Microsoftとは97億ドルの契約を結んでいるが、「それでもキャパシティの5%」という規模感を示した。需要はまだ完全に満たせていないと述べた。
4-2. 100%再生可能電力とジェボンズのパラドックス
IRENは、創業から100%再生可能エネルギーで稼働している。西テキサスでは45〜50ギガワットの風力・太陽光があるが、送電線容量は12ギガワットに過ぎない。「データセンターが電力の発生源に行って、デジタル商品に変換し、光速でトークンとして送り出す」という発想だ。
需要の見通しについてRoberts氏は、「10倍のコンピュートが使えるようになれば、画像生成の待ち時間が2分から5秒になる。その時、人々は多くの画像を生成するか、少なくなるか——ジェボンズのパラドックスが働き、圧倒的に多くなる」と述べ、需要は衰えないという見方を示した。
おわりに
4社のCEOが共通して示したのは「AIの需要はまだ充足されていない」という認識だ。CoreWeaveの長期契約構造、Perplexityのオーケストレーション戦略、Mistralの垂直特化とオープンソース、IRENの電力インフラ先行確保——それぞれが異なる層でAIエコシステムを支えている。Jensen Huangが示したAIファクトリーの5層構造(電力・データセンター・チップ・プラットフォーム・アプリケーション)の各層で、固有の競争優位とビジネスモデルが生まれつつある。

