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ビル・アックマンが語る「市場が見落としているもの」——AI時代の投資哲学・次のバークシャー構想・SpaceXの評価方法を投資家目線で整理する

ヘッジファンドPershing Square創業者のビル・アックマン氏が、AI時代の投資哲学・市場が見落としていること・Howard Hughesを使った「次のバークシャー構想」について率直に語った。

サブプライム危機での大規模な空売りで知られ、アクティビスト投資家として長年市場に影響を与えてきたアックマン氏の視点は、今の局面で投資家が考えるべき論点を多く含んでいる。本記事ではその要点を整理する。


1. 投資哲学の変遷——「長期的な耐久性」への注目


1-1. アクティビズムから「応援する株主」へ

アックマン氏は、自身の投資哲学の最大の変化として、「ビジネスの質——長期的で耐久性があり、破壊されにくい成長への評価が深まったこと」を挙げた。

初期の代表的な投資として、ウェンディーズを例に挙げた。当時、ウェンディーズが保有するカナダのコーヒーチェーン「ティム・ホートンズ」の価値がウェンディーズ全体の時価総額を上回っていたことに着目し、ティム・ホートンズのスピンオフを求めたが、最初はCEOから電話すら折り返してもらえなかったという。その後、ブラックストーンのスティーブ・シュワルツマンに公正価値意見書を作成してもらい、それを公開提出したところ6週間でスピンオフが実現した。

現在は、S&P 500のほぼすべてのCEOを直接または一人を介して知る立場になり、企業の扉を叩く必要はなくなったという。「今は株を買ったら、企業側から『株主として歓迎します』と言ってくれることもある」と述べた。

1-2. 短期市場圧力と長期経営の矛盾

アックマン氏は、公開企業の経営における根本的な課題として、市場のアナリストや投資家が四半期の税率まで問い詰める短期志向を挙げた。

「良いビジネスは、本来、数十年単位で経営判断をするもの。大株主が取締役会にいることで、短期的には利益を圧迫するような施策でも『私は支持する』と言えるのは大きな価値だ」と語った。

2. AI時代の投資判断——機会と脅威の両面


2-1. 「破壊される確率が上がった」時代の集中投資

アックマン氏は、AIに関して、投資家として最も難しい問いは「どの企業が破壊されるか」を見極めることだと強調した。

「スタンフォードのガレージから2人が始めたビジネスで既存企業が壊される確率は、今や劇的に上がっている。これは歴史上最も事業を作りやすい時代だ。コンピュートへのアクセスは無制限に近く、資本もタレントも豊富にある」

その上で、自身はMicrosoft・Meta・Amazonを現在保有しており、これらはAIの「脅威か機会か」どちらの観点でも無視できない企業だと述べた。

2-2. 市場が見落としている「高品質企業の割安感」

アックマン氏は、現在の市場の動きを2000年のインターネットバブルと比較した。当時、バークシャー・ハサウェイは、インターネット株への熱狂の中で「時代遅れ」と見なされ、最安値圏まで売られた。

「今も同じことが起きている。市場の目は、チップや半導体やエネルギーに向かっており、短期資金がそこに集中している。その結果、MetaやAmazon、Microsoftのような本当に高品質な企業が置き去りにされている」と指摘した。こうした企業はファンダメンタルズ——将来のキャッシュフローの現在価値——で見ると、十分に割安だと言う。

2-3. ソフトウェア(SaaS)への視点

SaaS企業については、「一社ずつ丁寧に分析する必要がある」としながらも、セールスフォースのようなプラットフォームに対しては懸念を示した。一方で、企業が特定のニッチソフトで年間3万ドルなどを顧客に課金してきた「独占的な利益取り」のモデルは特にリスクが高いと指摘した。

マイクロソフトのような企業は、一人当たりのシート単価が比較的低く、そのプラットフォームとしての価値は維持されやすいという見方も示した。

3. SpaceX・Anthropic・OpenAIの評価方法


3-1. 「ベンチャー投資」として評価する

時価総額1兆〜7,500億ドルとも言われるSpaceXのような企業をどう評価するかという問いに対し、アックマン氏は、「ベンチャー投資と同じ枠組みで評価する」と述べた。

彼が引用したのは、ビジネススクール時代の教授から学んだフレームワークだ。「人・機会・文脈・ディール(People, Opportunity, Context, Deal)」というものだ。

SpaceXを当てはめると、人(イーロン・マスク)は、「one of one(唯一無二)」、機会も「one of one」、文脈も「素晴らしい」と評価した。問いが残るのは、「ディール(バリュエーション)」だけだと言い、5年後のStarlinkや低コスト宇宙打ち上げの展望を踏まえてその価値を検討すべきだと語った。

アックマン氏自身は、XとXAI(イーロンのAI企業)への投資SPVには参加済みとのことで、SpaceXについても検討中であることを明かした。

3-2. AnthropicとOpenAIはシリーズDまたはEの「後期ベンチャー」

「AnthropicもOpenAIも、シードやシリーズAではなく、D・Eラウンドにあたる後期ベンチャー投資として評価する」と述べた。これらの企業はすでに大規模な収益を生み出せることは証明しており、問いはその資本効率と収益化モデルにある。

OpenAIについては、「外から見ると、設備投資が収益をはるかに超えており、どうやって成り立たせるのか難易度が高い」と率直に語った。

4. 「次のバークシャー」構想——Howard Hughes Corporation


4-1. バフェットのモデルを再現する

アックマン氏は、長年、ウォーレン・バフェットがバークシャー・ハサウェイを構築した方法を研究してきた。バークシャーの価値の大部分は保険事業から生まれており、その仕組みは、「保険料という形でキャッシュを先に受け取り、そのフロートを資産運用する」というものだ。

多くの保険会社は、負債(保険支払い義務)側に集中するが、バフェットは、資産運用側に圧倒的な強みを持っていた。バークシャーはその組み合わせで長期的な長期的な複利マシンを作り上げた。

4-2. Howard Hughesを土台に保険会社を建設

Howard Hughes Corporationは、ラスベガス近郊サマーリンを含む「小さな都市」を所有する不動産会社だ。26,000エーカーの土地を持ち、住宅・商業地を開発・販売する事業は、長期間にわたりウォール街から評価されず、常に割安に放置されてきたとアックマン氏は語った。

アックマン氏のプランは、「不動産が生み出すキャッシュを、再不動産投資に回すのではなく、保険会社の設立・育成に充てる」というものだ。保険フロートをPershing Squareが運用することで、バフェットのモデルを再現する。

現在の時価総額は約40億ドルで、数十年かけて「1兆ドル規模の複利マシン」に育てることを目指していると語った。

「バフェットは1株100万株から始めて実質的に株数を増やさなかった。私たちも同じ哲学でやる」と述べた。

5. Pershing Squareへの投資方法——3つの選択肢


アックマン氏は、自身の運用ビークルへの投資方法として3つを示した。

Pershing Square(管理会社本体)は、3つの永続資本ビークルへの管理報酬という形で複利的に成長する「ロイヤルティ事業」として機能する。22年前に1ドル投資していれば、手数料控除後で27〜28倍になっている実績がある(手数料前では40倍台中盤に相当)。

PSUSという上場ビークルはPershing Squareのベストアイデアポートフォリオを保有しており、現在キャッシュに対して18%ディスカウントで売買されている。

Howard Hughes Corporationは上述の「次のバークシャー」として、数十年単位の複利成長を目指すビークルだ。

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