Accel、Nebiusへの1.5億ドル投資が16ヶ月で13倍に ― Meta向け260億ドル契約の裏側
シリコンバレーの名門VC、Accel(旧Accel Partners)のグロースチームが、Facebook投資から現在のAIブームまでを振り返るインタビューに応じた。登壇したのは、Arun Mathew氏、Miles Clements氏、Matt Weigand氏の3パートナー。16ヶ月前に投じた1億5000万ドルが今や13倍になっているという具体的な数字や、Cursor・Nebius・Cyeraといった注目企業への投資の裏側、さらに「トークン消費」やSpaceXなど3兆ドル規模のIPOラッシュへの見方まで、投資家・ビジネスパーソンにとって示唆に富む内容が語られている。本稿ではその要点を整理する。
1. Facebook投資が教えるAccelの投資哲学
Accelは、2005年にFacebookへ初めて投資し、アーリーステージファンドからシリーズAを主導した。その後2008年にグロースファンドを立ち上げ、Mathew氏とClements氏はその年に入社している。同氏らが最初に手がけた案件の一つが、マイクロソフトが、Facebookに150億ドル評価で出資した直後に行われたセカンダリー株の取得だった。Accelは、「200億ドルを少し下回る評価額」で投資したという。
Mathew氏は、当時を振り返り、「あのパートナー会議で、これは100億ドル規模、あるいはそれ以上のビジネスになり、5倍超のリターンを生むだろうと話していたのを覚えている」と語る。しかし、同氏自身が認めるように、その予測は、Facebookの実際の可能性を大きく過小評価していた。この経験は、今日のAIブームにおいても「支配的に見える企業がどこまで大きくなり得るか」を見極める難しさとして繰り返されているという。
同氏らは、Facebookが、当時「初めてのプラットフォーム企業」だったことに触れ、「今日で言えば、AnthropicやOpenAIのようなAI研究所がまさにその立ち位置にある」と指摘した。
2. Nebius ― Meta向け260億ドル契約の舞台裏
Accelが公開株として保有する数少ない企業の一つがNebiusだ。Weigand氏によると、同社は最近Metaとの間で約260億ドル規模の大型契約を発表したという。
Nebiusの創業者Arkady Volozh氏は、かつてロシアの検索大手Yandexを時価総額300億ドル規模までナスダック上場させた人物だ。ロシアでの戦争勃発後、多くのエンジニアが同氏とともにロシアを離れ、Volozh氏はその人材を活かす次の事業を模索していた。Weigand氏は、「Volozh氏は、インフラをまったく違う形で提供する世界を思い描いていた。単に大きなクラスターをMetaに提供するという話ではなく、開発者がAWSやGCPの膨大なカタログを理解しなくても、エージェントを通じてインフラと対話できる世界を作ろうとしていた」と説明する。
Nebiusは、データセンター自体からサーバーラックの設計、その上で動くソフトウェアまでを垂直統合で手がける「次世代ハイパースケーラー」を目指しているという。Mathew氏は、Weigand氏が16ヶ月前にNebiusへのPIPE(上場企業向け私募増資)投資を主導した際には、今のように注目される企業ではなかったと明かし、「1億5000万ドルの投資が、今では13倍になっている」と紹介した。
3. Cursorへの投資 ― 「評判」で競争を制した理由
コーディング支援ツールを手がけるCursorへの投資についても語られた。競争の激しい資金調達ラウンドだったにもかかわらず、CursorのCEOであるMichael Truell氏がAccelを選んだ理由を、Mathew氏は本人に直接尋ねたという。Truell氏の答えは、「周囲に聞いて回ったら、Accelについて良いことばかり言われた」というシンプルなものだった。
Mathew氏は、「私たちのスタイルは常に、創業者を支えることに尽きる。良い仕事を積み重ねれば、それは結果とリターンに表れる。そして良いパートナーであれば、創業者たちが時間をかけて私たちについて良いことを言ってくれる」と説明した。同氏らはまた、開発者向けデータベース基盤のSupabaseについても触れ、YCombinatorの企業の60%が採用し、開発者数は前年始めの100万人未満から先週時点で900万人を突破したと紹介。特にAnthropicの「Opus 4.5」の登場と、長時間稼働するエージェント実行機能の普及以降、直近3〜4ヶ月で成長の大半が生まれたという。
4. Cyera ― データセキュリティからAIセキュリティへの転身
セキュリティ領域では、AIセキュリティ企業Cyeraへの投資が紹介された。同社はもともとデータセキュリティ企業として出発し、AccelはシリーズAをSequoiaと共同主導した後、2022年に事業の伸びが一時鈍化した局面でもシリーズBをグロースファンドから主導、その1年後にはシリーズDも主導したという。
Mathew氏は、「データは、AIの燃料であるため、データセキュリティは自然とAIセキュリティへと進化した」と説明し、Cyeraは、現在、非公開企業として最も高い評価額を持つセキュリティ企業の一つになっているという。同氏はまた、Anthropicが7月頃に発表した新モデル「Mythos」について触れ、「Mythos登場当初、市場はセキュリティ企業にとって脅威になると見ていたが、実際には大きな追い風になっている。この6週間のCrowdStrikeの株価を見ればわかる」と述べた。
5. 「トークン消費」は本当に過熱しているのか
AI利用コストをめぐる「トークンマキシング(過剰なトークン消費)」についても意見が交わされた。Weigand氏らが実施した開発者調査によると、CFOから「消費を減らせ」と言われている企業よりも、「もっと使え」と言われている企業の方が7倍多かったという。
Mathew氏は、「一部には明らかに過剰消費の例もあるが、全体のトレンドは圧倒的に消費拡大の方向にある」とし、月間5000億ドル規模のトークン支出についても「その水準を大きく上回ると見ている」と強気な見方を示した。同氏は「AIの能力フロンティアが週単位・月単位で急速に進化している限り、消費の伸びは続く」と説明している。
6. 3兆ドル規模のIPOラッシュにどう向き合うか
番組では、SpaceXをはじめとする合計3兆ドル規模のIPOラッシュが近く市場に到来する可能性にも言及された。Mathew氏は、SpaceXが早期に主要株価指数入りを果たしたことについて「今後6ヶ月に何が起きるかよりもずっと重要な、大きな勝利だった」と評価し、長期保有の視点で捉えるべきだと述べた。
また、SpaceXが、IPOの30%を個人投資家向けに確保したことについて、Clements氏は「これまでAIブームの恩恵に十分アクセスできていなかった一般の個人投資家が参加できるようになるという意味で、とても良いことだ」と評価。Weigand氏も「上場によって各社の財務や成長率が公開され、AIの力が広く認識されるようになる」との見方を示した。
参考までに、時価総額1兆ドルを超える上場企業は10年前はゼロ、5年前は5社だったが、現在は14社存在し、今後さらに増加する見通しだという。
