半導体、S&P500内の比率が10年で2%から19%に ― Strategas社のチャーティスト/ETFストラテジスト ToddSohn氏が警鐘
S&P500のような主要株価指数に投資していれば、十分に分散されたポートフォリオを持っていると考える投資家は多い。しかし、Strategas社のチャーティスト/ETFストラテジスト ToddSohn氏は、ポッドキャスト「The Real Eisman Playbook」のインタビューで、この前提そのものに疑問を投げかけている。チャートとETFフローデータを通じて見えてくるのは、米国市場がテクノロジー、特に半導体セクターに過度に依存している現状だ。本稿では、Sohn氏が示した複数のチャートとデータをもとに、現在の市場構造を整理する。
1. 半導体がS&P500を動かす ― 10年で2%から19%へ
1-1. 「市場は半導体そのものだ」という現実
Sohn氏は、半導体ETF(SOXX)のチャートを示しながら、「今の市場は半導体そのものだ」と語った。半導体セクターは、2026年3月30日以降、3ヶ月近くにわたって大きく上昇しており、S&P500内の比率はかつての18%から19%に達しているという。同氏は、10年前の同比率がわずか2%だった点を指摘し、「2%から19%まで10年で拡大したのは驚異的だ」と述べている。
1-2. 指数全体が半導体に「依存」する構造
Sohn氏は、もし半導体ETFが何らかの理由で急落すれば、指数ベースの投資家は表面上深刻な打撃を受けることになると説明した。「内部的には、何か別の動きがあり、半導体から資金がローテーションしている可能性もあるが、指数全体としては痛みを感じることになる」と述べ、市場全体が一つのセクターの動向に強く左右される構造になっている点を強調した。
2. 大型テック株の明暗 ― GoogleとMeta・Microsoftの対照
2-1. Googleは「最良のチャート」、MetaとMicrosoftは赤信号
個別株のチャート分析では、明確な差が見られた。Sohn氏は、Alphabet(Google)について「過熱気味だが最も良いチャートだ」と評価し、GE Vernovaのような電力関連株と似た強いトレンドにあると指摘した。一方、Metaについては、市場全体が新高値を更新している中で同社株が数ヶ月にわたり新高値を付けていない点を「赤信号」の一つとして挙げ、200日移動平均線の傾きが下向きに転じつつあることも合わせて指摘した。Microsoftについても、「Metaと似た、あるいはそれより弱い状況にある」とし、春先の安値を再びテストしかねない位置にあると述べている。
2-2. AmazonとOracleは「どちらでもない」
Amazonについては、Sohn氏は、「特に強い意見はない」としつつ、相場観が定まらない中ではオプション取引で限定的なリスクを取る戦略が適しているとの見方を示した。Oracleについても、同様に、200日移動平均線が下向きから横ばいに転じている状態にあり、相場が新高値を付ける中でこうした「もたつき」を抱えるのは投資家にとって心理的に難しいと述べている。
3. ETFがミューチュアルファンドを置き換えた40年間
3-1. 1984年以来、累積フローが初めてマイナスに
Sohn氏が最も強調した点の一つが、1984年以降のETFとミューチュアルファンドの累積資金フローを比較したチャートだ。同氏によると、「ミューチュアルファンドへの累積フローは、1984年以降の累計で見ると今や負の値になっている」という。同氏はこれを「驚くべき事実だ」と表現し、ミューチュアルファンドの資産規模が維持されているのは、単に市場全体が上昇してきたからに過ぎないと指摘している。アクティブ運用の株式ファンドからの累積流出額は5.1兆ドルに達するという。
3-2. ETFは1日の取引量の約3割を占める
現在、ETFは、米国の取引所における1日の取引量の約30%を占めており、市場が不安定になる局面では40〜45%まで上昇する傾向があるという。Sohn氏は、レバレッジ型ETFがこの中でも急成長している分野であり、市場全体で約2,000億ドル規模、数百本のファンドが存在すると説明した。
4. テック集中という「一つのゲーム」
4-1. テックETFへ27億ドル、他セクター合計はマイナス
セクター別のETFフローを分析したチャートでは、2026年3月30日のS&P500安値以降、テックETFへの累積流入額が27億ドルに達した一方、その他すべてのセクターを合計するとマイナス4.4億ドルになっているという。Sohn氏は、これを「基本的にゲームは一つしかない。それがテックだ」と表現し、さらに、テックの中でも特にソフトウェアを除いた半導体・ハードウェア関連への資金集中が顕著だと指摘した。
4-2. 「クオリティ」factorも実質的にテック集中
同氏は、クオリティ(質)を重視するファクター型ETFについても注意を促した。「クオリティETFの中には、もはやS&P500とほぼ同じ動きをするものがある」とし、フリーキャッシュフローの豊富さを理由にNvidiaのような企業が「クオリティ」にも分類されてしまう現状を指摘した。約500億ドル規模のあるクオリティETFについて、「S&P500とのR二乗値はほぼ完全に近い。同じ動きをするなら持つ意味がない」と述べている。
5. レバレッジ型ETFの急増と「単一株式」型の新しいリスク
Sohn氏が懸念を示したのが、レバレッジ型ETFの利用拡大だ。「これは私を少し不安にさせる」と述べ、これらのファンドが、毎日リバランスを行う性質上、市場のボラティリティそのものを増幅させる可能性があると説明した。特に2022年以降登場した「単一株式型」のレバレッジETFは、対象となる個別株の市場規模がますます小さくなっており、「ロト(宝くじ)のような商品になりつつある」との見方を示している。
6. ヘルスケアと生活必需品 ― 縮小する「ディフェンシブ」
6-1. ヘルスケア、S&P500内比率が16%から8%へ半減
ヘルスケアセクターについては、S&P500内の比率が16%から8%まで縮小したと指摘された。Sohn氏は、これを「業績の悪さが、逆に『そろそろ反転するのではないか』という見方につながる」と表現し、皮肉を込めて「ヘルスケアセクター自身がGLP-1で痩せたようなものだ」と述べている。
6-2. 生活必需品セクターはS&P500の4.5%にまで縮小
生活必需品セクターについても、1990年代初頭には19%程度を占めていた時期があったものの、現在は4.5%程度まで縮小したという。Sohn氏は、「Nvidia一社で、生活必需品セクター全体の2倍の規模がある」と指摘し、この構造変化を象徴的に表現した。
まとめ ― 「分散している」という思い込みへの警鐘
今回のインタビュー全体を通じて浮かび上がるのは、S&P500のような主要指数を保有していれば自動的に分散投資が実現できているという前提への疑問だ。テクノロジー、とりわけ半導体セクターへの資金集中が歴史的な水準に達している現状において、ホストのスティーブ・アイズマン氏は最後に「もしこの構造が逆転した場合、逃げ場がなくなる」と締めくくった。投資家にとっては、指数全体のパフォーマンスだけでなく、その内部でどのセクターにどれだけの比重がかかっているかを把握することが、これまで以上に重要になりそうだ。
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