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米政権の許認可強化で92ギガワットの新規電力が宙に浮く ― Wood Mackenzie調査、1,210億ドルの投資が対象

AIブームを背景にデータセンターの電力需要が急速に拡大する一方、米国ではその電力供給そのものを脅かす動きが進んでいる。コンサルティング会社Wood Mackenzieの調査によると、トランプ政権が進める許認可手続きの強化により、最大92ギガワット規模のクリーン電力計画が頓挫するリスクに直面しているという。電力需要が急増する局面でこの規模の供給計画が滞れば、データセンターを中心とする産業界全体への影響は避けられない。本稿では、この調査結果と、その背景にある政策の経緯を整理する。


1. 92ギガワット、1,210億ドル ― 何が危機に晒されているのか


1-1. すでに7ギガワットが中止に

Wood Mackenzieの調査によると、許認可手続きの変更と連邦資金の撤回により、2025年には連邦地における7ギガワット分の発電能力が既に中止されている。さらに、今後の審査強化によって、連邦地でさらに12ギガワット、民有地で80ギガワットが中止対象になりうるとされ、合計で92ギガワットに達する見通しだ。

1-2. 1,210億ドル規模の投資が影響範囲に

同レポートによれば、こうした連邦レベルの規制強化による影響は、エネルギー分野における1,210億ドル超の投資に及ぶとされている。対象となっているのは、主に太陽光と風力で、米国における新規発電容量の中で最大の伸びを担ってきた電源だ。実際、2025年に新設された記録的な53ギガワットの発電能力のうち、太陽光・蓄電池・風力が合わせて約9割を占めていた。

2. AIデータセンターの電力需要急増という背景


電力需要は、約20年間ほぼ横ばいだったが、近年は再び上昇傾向にある。その主な要因の一つが、AIブームを背景としたデータセンターの拡大である。BloombergNEFの市場予測によると、データセンターは今後10年で数・規模ともに拡大が見込まれ、これに伴い電力消費量は2035年までに現在の約3倍に達するとされている。

一方、米連邦エネルギー規制委員会(FERC)は、系統運用者に対しグリッド接続の「優先レーン」を設けるよう義務付けたが、これは新規発電能力そのものの不足という根本的な課題には対応していない。米国最大の電力系統で、かつ最もデータセンターが集中する地域では、運用者がこの4年間、新規電源の接続を実質的に制限してきたとされ、需要が高まる中で供給が事実上凍結された状態が続いている。こうした状況を背景に、一般市民からのAIインフラへの反発も強まっており、テック企業の中には自前の発電所を建設する動きも出ている。

3. 政策の転換点 ― バーガム内務長官の命令


3-1. 「環境に有害な風力・太陽光を抑制する」という方針

今回の許認可審査の強化は、米内務長官ダグ・バーガム氏が2025年8月に発令した命令に端を発している。この命令は、「環境に有害な風力・太陽光プロジェクトを抑制する」ことを目的としたものだった。Wood Mackenzieのレポートによると、主な対象は風力と太陽光だが、蓄電プロジェクトの中止も確認されているという。許認可上の問題は特に、オレゴン州、アラバマ州、メイン州、ミネソタ州、モンタナ州に集中している。

3-2. 湿地保護の緩和と太陽光プロジェクトの行方

民有の湿地内や近隣に位置する太陽光プロジェクトは、特に中止リスクが高いとされる一方、風力発電所は空域規制の観点から審査の対象となっている。なお、トランプ政権が最近、米国の湿地の8割について保護を解除する決定を下したことから、今後太陽光プロジェクトがどのような影響を受けるかは依然として不透明な状況だ。

3-3. ノースダコタ州知事時代との対照

バーガム氏の今回の方針は、同氏がノースダコタ州知事を務めていた時期の姿勢とは対照的だ。当時、同氏は州内の風力発電の拡大を主導し、2030年までのネットゼロ目標を設定していた。2024年には、ノースダコタ州の豊富な風力資源について誇らしげに語っており、同州では2022年時点で電力の3分の1を風力が占めていたという。

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