「テックから離れ、エネルギーと金へ」——元フィデリティ・ファンドマネジャーGeorge Nobleが語る2026年の市場観
元フィデリティの大型ファンドを運用し、1985年に全米No.1のパフォーマンスを記録したGeorge Noble氏が、Steve Eismanのポッドキャスト「The Real Eisman Playbook」に登場した。ベテランのバイサイド投資家として、金・仮想通貨・テスラ・エネルギー株に対する率直な見方を語った。今年の市場をひとことで言えば「分散・ローテーション・リフレーション」——その意味を掘り下げる。
1. 2026年市場の大局観——「ローテーション」という読み筋
1-1. テックからエネルギー・素材へ
Noble氏は、現在の市場を「Rはリセッションではなく、ローテーションのR」と表現する。過去数年は、Mag 7(GAFAM等)が市場を支配したが、今年はその構図が変わりつつあると見ている。
「エネルギーと素材に非常に強気です。テック関連については逆にかなり慎重です。資金は相対的な成長率が改善しており、財政・金融政策でも優位性がある海外市場へも向かいつつあります」。
Eismanが指摘したように、エネルギーセクターのS&P500に占めるウェイトはわずか3%だ。機関投資家が、そのセクターに大きくオーバーウェイトすることは構造的に難しく、「大手は、MicrosoftやAppleに頭を使っているのが現実」とNobly氏は述べる。それでも、今がエネルギーへのローテーションの「初回」だという確信は揺るがない。具体的な銘柄として、シュルンベルジェ(直近3ヶ月でMicrosoftを100%アウトパフォーム)、タイドウォーター、海洋掘削・サービス銘柄を挙げ、XLE(エネルギーETF)ロング/XLK(テックETF)ショートという組み合わせも提示した。
2. 金への強気論——「フィアット通貨の劣化」という視点
2-1. 「なぜ今なのか」という問い
Eismanは、「この議論は40年前から繰り返されている」と率直に反論した。確かに財政赤字・通貨の劣化・金購入という論理は、1990年代後半からPete Petersonらが繰り返してきた主張と変わらない。「40年間正しくなかった議論には、少し謙虚になれ」というEismanの指摘に対し、Noble氏は真正面から応えた。
「ダムの水位の話をしましょう。何年もかけて水位が下がっていても、最初は誰も気にしない。70%、60%……でも臨界点に近づいたとき、初めて全員が気づく。ヘミングウェイが言ったように、破産というのは少しずつ、そして突然起きるものです」。
2-2. 「財政システムの外」に出る資産として
Eismanは「ドルに代わる選択肢がない限り、米国債は、世界の金融システムの根幹であり続ける」という反論を展開した。Noble氏はこれを否定しなかったが、金の本質的な意味をこう語る。
「金融システムが、『タイタニック』だとしたら、金は数少ない脱出手段のひとつです。誰かの負債でもなく、誰かへの請求権でもない——それが金のユニークな点です。そして今は、外国投資家を粗雑に扱うようになった分、彼らがドルから離れるインセンティブが生まれている。これは40年前とは違う点です」。
EismanとNoble氏が合意したのは、「国債長期金利(10年物)が動かない限り、誰が正しいかは決まらない」という点だ。現在4.1%台の10年物金利が5%を超えるかどうかが、この議論の決着点になる。
3. 仮想通貨への懐疑——「ビットコインは老人向け」
3-1. Eismanの反論:「デジタルゴールド」のテスト不合格
Eismanは、COVID期に数多くの仮想通貨ポッドキャストを聴き、「仮想通貨はデジタルゴールドだ」という論理を検証した結論として、「インフレ懸念が高まる日にビットコインは下落し、テック株が上がる日にビットコインも上がる。自分自身のテーゼと逆行する資産クラスを、どう扱えばいいか分からない」と述べた。
3-2. Noble氏の視点:「FanDuelに負けた」
Noble氏は、さらに踏み込んだ視点を提示する。スポーツベッティング(FanDuel等)・ゼロDTEオプション・予測市場の台頭が、若年層の投機的エネルギーを吸収しているという観察だ。
「ビットコインは、ボラティリティが落ちていて、もはや刺激がない。実際、ある若い投資家は『ビットコインを売って金と銀に乗り換えた理由は?』と聞いたら、『動かなかったから』と言った。自分で自分の反論を証明してくれました」。
Eismanが、「ビットコインはもう老人のためのもの——Facebookみたいに」と表現すると、Noble氏も笑いながら同意した。
4. テスラへの慎重論——「評価額と現実の乖離」
4-1. 3年連続の減収と「消えた利益」
Noble氏は、テスラについて、感情を排した数字の読み方を強調した。
「2026年は、テスラにとって3年連続の売上減少になる見込みです。2022年のピーク利益は1株当たり約4.50ドルでしたが、昨年は1.70ドル。3年前のアナリスト予測では2025年に8ドルを目指すはずだったのに、実際は逆方向に動いた」。
通常の成長株論理では「成長が鈍化したら評価倍率は下がる」が、テスラには当てはまらない。市場はロボタクシー・ロボティクス・AIへの期待で株を保有し続けている。
4-2. 「バリュエーション分解」で見た上限値
Noble氏は、部分和評価(Sum of the Parts)でテスラの理論値を試算する。Waymoが最近の資金調達で1250億ドルの評価を受けたことを参照点に、ロボタクシー事業を1250億ドル、ロボティクスも同額と仮定しても合計2500億ドル。現在の時価総額は1.3兆ドル超だ。
「テスラが今年キャッシュフローマイナスに転落する可能性がある。増資もあり得る。そのときに初めて、信者的なホルダーが現実を見るかもしれない」。
Eismanは「カルト的な銘柄のショートは私の流儀に反する」と述べながらも、Noble氏の分析に共感を示した。
5. AIとテック株への懐疑——「.comの再来」という視点
Noble氏のテック株ネガティブ論の背景にあるのは、AI投資の経済性への疑問だ。あるエンジニアから聞いた話として、「ChatGPTなら月20ドルで十分で、200ドルには意味がない。しかし、本来採算に乗せるには月100ドルは必要なはず」という声を紹介した。
ある研究機関が、Upwork上のタスクをAIにやらせたところ、98%は失敗したという報告も引用した。「AIがインターネットのように存続するのは確かだが、2000年当時のインターネット株を買った人は壊滅した。インターネットが世界を変えたとしても、投資家は儲からなかった——今もその状況に近い」というのがNobley氏の結論だ。
「株式市場は常にストックの集合体だ」というNobile氏の言葉は、インデックス偏重・テック集中の時代へのカウンターでもある。金・エネルギー・ファンダメンタルズ回帰という彼の主張が正しいかどうかは、10年物金利と年内の企業決算が答えを出すだろう。

