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Baron Capital、SpaceX投資は27回の個別取引で計20億ドル ― 評価額は6月時点で250億ドル

グロース株投資の世界で50年以上のキャリアを持つロン・バロン氏(Baron Capital創業者・CEO)と、息子で共同社長のマイケル・バロン氏が、ポッドキャスト「Compounding Friends」に出演しました。同社は、1982年にわずか1000万ドルの運用資産からスタートし、現在では、700億ドル規模を運用する成長株投資の名門です。テスラとSpaceXへの長期投資で知られる同社の哲学、イーロン・マスク氏に対する評価、そして、半世紀を超える投資人生の原点まで、番組で語られた内容を厚めに整理します。


1. 借金15,000ドルから始まったキャリア


ロン・バロン氏はまず、自身のキャリアの原点について振り返りました。医学部進学を目指していたものの叶わず、ジョージタウン大学医学部で1年間生化学を教えた後、特許庁の審査官として働きながら夜間のロースクールに通ったといいます。専門は化学で、当時手がけていたのは、大気圏再突入時に燃え尽きないためのロケットのノーズコーン(先端部)コーティングに関する特許審査でした。同氏はここでこう冗談を交えています。

「だから、友人にはいつも忠告している。もしノーズコーンに乗る機会があっても、絶対にやめておけと」

1969年にニューヨークに移った当初、同氏は1万5000ドルの借金を抱え、信用情報が足りず電話回線すら契約できない状態だったといいます。3カ月の失業期間を経てアナリストの職を得て、1970年代は調査レポートを作成し、ヘッジファンドやミューチュアルファンド、ファミリーオフィスに販売する仕事に従事しました。

1-1. 「ピザではなく、パフォーマンスをお届けします」

同氏は、当時、Baron Fundsの広告としてウォール・ストリート・ジャーナルに8000ドルを投じて出稿した逸話も紹介しています。シェフの帽子とエプロン姿の男性の写真とともに、「私たちが届けるのは、ピザではなくパフォーマンスです」というコピーを掲載したところ、初日だけで50件の電話がかかってきたといいます。ただし、その後は反響が急速に先細り、金曜日にはついに1件も電話が来なくなったとのエピソードも披露されました。

1-2. AW Jonesとハンバーガーの逸話

同氏の初期の顧客の一人が、「ヘッジファンドの父」として知られるAW Jonesのポートフォリオマネージャー、ウォルター・ハリソン氏でした。注文が途絶えて困っていたロン・バロン氏が、電話で「注文をくれないと生き残れない」と訴えたところ、相手は、冗談交じりに「レア焼きのハンバーガーとフライドポテトが食べたい」と返答。ロン・バロン氏は、ウォール街の油っこい定食屋に依頼し、わざと午後5時に配達させ、ハリソン氏の机の上をハンバーガーの油だらけにしたという逸話を披露し、会場を沸かせました。

2. ジョージ・ソロス氏との出会いとBaron Capital創業


1976〜77年頃、当時思うような成績を出せていなかったジョージ・ソロス氏(クアンタム・ファンド)が、自身の資金の一部を他の運用者に任せる形で、ロン・バロン氏を含む6〜7人に500万ドルずつを託したことが紹介されました。同氏は、「買ったら持ち続ける」という運用スタイルを貫き、頻繁に売買を繰り返した他の運用者よりも良い成績を残したといいます。

1980年、同氏は、「純資産マイナス」の状態から100万ドルの資産を築き、1982年に1000万ドルの運用資産でBaron Capitalを創業しました。

「1982年に1000万ドル、1992年に1億ドル、そして今年6月末時点で700億ドルになった」

同氏は、さらに、運用管理会社としてのBaron Capital自体の簿価が、1982年当時の10万ドルから、現在は約45億ドルまで成長したことも明かしています(売却しない前提で、含み益に対する繰延税金の負債が15億ドルあることも付言されました)。

2-1. 233人の組織、45人のアナリスト

現在のBaron Capitalは、233人体制で、うち45人がアナリストだといいます。同社の特徴はポートフォリオの回転率の低さで、ほぼすべてのファンドで年間回転率10%未満、ロン・バロン氏とマイケル・バロン氏、もう一人の息子デイビッド氏が運用するファンドに至っては5%未満とされています。

「買うのは簡単だが、持ち続けるのが難しい。多くの人がそれを口にするが、実際にできる人はほとんどいない」

3. 圧倒的な運用実績


番組内では、Baron Fundsの運用実績についても具体的な数字が紹介されました。ミューチュアルファンドとして設立されて以来、Baron Funds全体の運用資産の96.2%を占める15本のファンドがベンチマークを上回り、95.4%を占める13本のファンドがモーニングスターの各カテゴリーで上位20%以内にランクインしているとされています。同社の主力ファンドである「Baron Partners Fund」は、2003年のミューチュアルファンド化以来、米国で運用成績No.1のファンドだといいます。2025年のリターンは、約25%で、比較指数(ラッセル・ミッドキャップ・グロース)の8.7%を大きく上回りました。

4. テスラ投資 ― 4年の投資検討期間を経て


Baron Capitalは、イーロン・マスク氏と2010年に出会ってから、実際にテスラへの投資を始めるまで約4年間を費やしました。当時のテスラは、年間生産台数がわずか3万台程度、フリーモントに1工場を持つのみという小規模な段階でした。マイケル・バロン氏は、この期間について次のように振り返っています。

「私たちが注目したのは、テスラという1つの工場で何台作れるかではなく、彼らが何を達成しようとしているかだった」

同氏は、当時テスラが目指していたミッションが、輸送手段の刷新ではなく「人類を再生可能エネルギーへと導くこと」であった点に着目し、この事業の広がりの大きさに可能性を見出したと説明しています。また、従来の自動車業界がシートベルトやエアバッグなど部品を外部調達し、それぞれの業者がマージンを取る構造だったのに対し、テスラは、徹底した垂直統合によってコストを下げ、他社が追いつけない製造能力を実現しているとも指摘しました。

2014年から2016年にかけて、Baron Capitalは、4億ドルをテスラに投資し、ロン・バロン氏によれば、この投資からすでに77億ドルの利益を確定させているとのことです。

「今後10〜15年で、テスラからさらにその5倍の利益を得られると考えている」

4-1. 「彼らは分かっていない」と言われ続けた4年間

投資判断に至るまでの4年間、自動車業界の専門家からは、「テスラは投資に値しない、いずれゼロになる」という声を浴び続けたといいます。マイケル・バロン氏は、その声に対して「彼らは分かっていない。彼らは、自動車会社を見ているつもりで、実は違うものを見過ごしている」と考えていたと振り返りました。マスク氏自身、後年のBaron Investment Conferenceで「なぜそんなに投資判断まで時間がかかったのか」と尋ねてきたというエピソードも紹介されています。

5. SpaceX投資 ― 27回の個別取引を経て


Baron Capitalが現在最大のポジションとしているのが、SpaceXです。同社は、2017年以降、27回の個別取引を通じてSpaceX株を買い増してきたとされ、累計投資額は約20億ドル、2026年6月時点での評価額は約250億ドルに達しているといいます。IPO時には、さらに10億ドルを追加投資しました(理由は保有比率1.25%の希薄化を避けるためだったといいます)。

同社は、SpaceXが、毎年2回実施する従業員向けテンダーオファー(自社株買い取り)に参加する形で投資を始めました。マスク氏自身もこのテンダーで自社株を購入していたことが、「良いシグナルだった」とロン・バロン氏は振り返っています。同社は、サウジアラビアやアブダビ、フィデリティといった大口投資家と同等の扱いを受け、株式の売却案件が出るたびに声をかけられる関係を築いていたといいます。

ロン・バロン氏は、SpaceXの将来価値について次のような見通しを示しています。

「(SpaceXは)IPO時点で2兆ドルだったが、今後10〜15年で20兆から30兆ドル、少なくとも40兆ドルの企業価値になると考えている」

「テスラからは、今後10年で4〜5倍、SpaceXからは、IPO価格から20〜30倍のリターンを、今後10〜15年で得られると考えている」

6. イーロン・マスク氏への評価


イーロン・マスク氏の人物像について問われたロン・バロン氏は、次のように答えています。

「彼は、本当に大きな志を持っている。1日4〜5時間しか眠らず、週7日働く人間が、資産が1兆ドルだろうと3兆ドル、5兆ドル、10兆ドルだろうと、それが何の違いを生むというのか。彼がそうしているのは、人類の存続と、すべての人のより良い生活を望んでいるからだ」

同氏は、マスク氏が、政府効率化に関わった際の対応については個人的な見解として、「固定価格入札によって政府調達をより効率化する」という自身の得意分野(SpaceXの国防関連契約はすべて固定価格で、他社より安く高品質、納期も守られているという)を前面に打ち出すべきだったとの見方も示しました。

6-1. Anthropic・Grokを巡る発言

同氏は、さらに、マスク氏がAnthropicの成長速度についても言及したことを紹介しました。

「Anthropicは、年換算売上90億ドルから、わずか半年で450億ドルまで成長した」

同氏は、AnthropicのダリオCEOやOpenAIのサム・アルトマンCEOが、いずれもマスク氏の下で働いた経験を持つ「同じ系譜」であると述べたうえで、Grokについても言及し、「現時点でもテストの多くでAnthropicとほぼ互角になっており、今後6カ月以内に追いつき、対等になると考えている」と述べました。Grokのトークン価格については、Anthropic比で65%安いことも指摘しています。

7. 投資哲学 ― 「株価はシグナルではない」


マイケル・バロン氏は、同社の投資哲学について、株価の日々の変動を売買判断の材料にしないことを強調しました。

「株価が下落しているという事実だけからシグナルを得ることはない。システマティック投資をする人たちは、株価が動けばそれに追随して売買するが、私たちがやっているのはそういうことではない」

同氏は、ポジションを解消する最大の理由は、「タイミング」ではなく、「その企業の競争優位性が劣化したと判断した場合」だと説明しています。テスラについては、EV事業における競争優位性はかつてほど強くない(中国勢の台頭)一方、ヒューマノイドロボット「オプティマス」の分野ではむしろ優位性が拡大しているとの見方を示しました。

「彼が語っているのは、1000万台ではない。1億台、そして、最終的には10億台の規模だ。彼のロボットに匹敵するものを作れる企業は他にないだろう」

7-1. 下落局面での実績

ロン・バロン氏は、同社の運用実績が、特に「不利な相場環境」で真価を発揮してきたと説明しています。ドットコムバブル崩壊から世界金融危機に至る期間、市場全体に投資していれば資産の約3分の1を失っていた計算になる一方、Baron Partners Fundは、同期間に年率1.5〜2%のプラスを確保していたとされています。

マイケル・バロン氏は、S&P500やラッセル1000がすでに「500社」「1000社」の指数ではなく、実質的には、「マグニフィセント・エイト」(SpaceXを含めればもはや7社ではなく8社)に支配された、高い相関性を持つ集中投資になっている点にも注意を促しました。同社はこうした環境下でも、異なる値動きをする企業群への分散を意識的に維持しているといいます。

8. ソフトウェア株への投資 ― FactSetの事例


AIによる代替懸念からバリュエーションが下落しているソフトウェア企業についても、Baron Capitalは、積極的に買い増しを行っているといいます。ロン・バロン氏は、過去1年間で90億ドル相当の株式を購入し、そのうち50億ドルがソフトウェア企業向けだったと明かしました。

具体例として挙げられたのが、金融データ企業のFactSetです。同社株は、この1年で500ドルから200ドル台まで下落したものの、Baron Capitalは、買い増しを続けているといいます。ロン・バロン氏は、新CEOの経歴についても詳しく紹介しました。インドの農家に生まれ、現地の名門工科大学・ビジネススクールを経てマッキンゼーに入社。2008年の金融危機時、31歳でティム・ガイトナー氏(当時財務長官)のアドバイザーとして米国に招かれ、その後、JPMorganに移り、ジェイミー・ダイモン氏の後継候補トップ10入りを果たしたものの、トップ5には届かず退社。そこでFactSetのCEOに就任したという経緯です。

「彼は本当に素晴らしい人物だ。今やFactSetの上位11人の経営陣のうち8人が彼の下で選ばれた人材だ」

同氏は、FactSetのようにコモディティ化しやすいサービスを低価格で提供する一方、それを入り口に顧客のワークフローに深く入り込み、代替困難な価値を提供する戦略について次のように評価しています。

「LLM(大規模言語モデル)は、いずれコモディティ化する。しかし、FactSetのような、独自データや顧客ワークフローへの深い組み込みを持つ企業は、AIの『実現者』であり、置き換えられる側ではなくAIに使われる側になる」

同様の理由で、保険データを持つVeriskや、多数のアナリストを抱えるGartnerといった企業にも同じロジックが当てはまるとしています。

9. AI・計算資源への視点


ロン・バロン氏は、SpaceXが保有するデータセンター向け計算資源について、次のような具体的な収益構造を明かしました。

「(建設費として)25〜30億ドルを投じた計算資源から、Anthropicから月に12.5億ドル、Googleから月に9億ドル、別の企業から月に約5億ドルを得ている。年間では、建設費と同水準の25〜30億ドルを毎月得ている計算だ」

同氏は、この収益水準が、CoreWeaveの同等の計算資源に対する対価の3倍に達しているとし、その理由を「SpaceXのコンピュートが一体化(coherent)しており、相互に性能を高め合っているためだ」と説明しています。

10. 少年時代の原体験 ― 「所有すること」がすべての始まり


ロン・バロン氏は、投資家としての原点が幼少期の体験にあると振り返りました。父親は陸軍の技術者で、1942年生まれの同氏が育った家は質素な小さな家だった一方、友人の家庭はより大きな家に住み、キャデラックを乗り回していたといいます。その違いを生んでいたのは「事業を所有しているかどうか」だったと気づいたことが、後の投資哲学の原点になったといいます。

友人の父親から「株式市場に投資すべきだ」と勧められ、バーミツバの祝い金1000ドルを元手に、地元の銀行「マンマス・カウンティ・ナショナル・バンク」の株を100株購入したという少年時代のエピソードも紹介されました。毎日地元紙の株価欄をチェックし続けた末、その銀行は買収され、1000ドルは1700ドルになったといいます。

「これで大学1年目の学費の3分の2をまかなえた。『これは何もすることがない、こんな簡単なことがあるのか』と思った」

10-1. ケン・ランゴーン氏との出会いとホーム・デポの「取り逃し」

1970年代、ロン・バロン氏は、ダイロン(Daylin)という企業の株を買っていたことがきっかけで、後にホーム・デポ創業に関わるケン・ランゴーン氏から声をかけられ、情報を共有し利益を50/50で分け合う関係を築いていたといいます。しかし、同氏は、「株が2倍・3倍になったら売って次を買う」という当時の証券会社の営業スタイルに従っていたため、ダイロン傘下のHandy Dan社の経営陣がその後ホーム・デポを創業する段階では、既にポジションを手放してしまっていたという「取り逃し」のエピソードも披露されました。

「基本的に、私はホーム・デポの創業初期に投資できていたはずだったが、すでに売ってしまっていた」

11. インフレと「土地」の複利効果


ロン・バロン氏は、自身の両親の住宅を例に、長期的なインフレの効果について説明しました。1948年に5000ドルで購入した家は、現在では、50万ドルの価値になっているといいます。同様に1955年に2万ドルで建てた家は現在150万ドルの価値になっており、これは年率4〜5%程度の上昇に相当するとしています。

同氏は、さらに、海に面した土地の価格上昇率がそれよりも高い(年率7〜9%程度)ことを、知人の事例(かつて25万ドルで売却した土地が、現在は、1.5億〜2億ドルの価値になっているという)を挙げて説明し、「80年で10回倍増すれば1000倍になる」という複利の力を強調しました。

12. コロナ禍と「対面」への信念


マイケル・バロン氏は、新型コロナウイルス流行期について、同社にとって厳しい時期だったと振り返りました。

「Zoomの悪いところは、あの赤いボタンを押せば、会議が終わってしまうことだ。本当に価値のある情報の多くは、公式なミーティングの外側で生まれる」

同社は、通常、1時間半〜2時間に及ぶ企業訪問を行い、その後、アナリスト同士でその内容を深く掘り下げる時間を設けているといい、リモートワークでは、こうした「余白」の対話が失われてしまう点を課題として挙げています。

13. Baron Investment Conference ― 業界随一のイベント


番組の終盤では、同社が毎年ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催する「Baron Investment Conference」についても詳しく語られました。過去の登壇者にはピンク、ジャスティン・ティンバーレイク、アダム・サンドラー、ジョン・レジェンド、ブルーノ・マーズ、フリートウッド・マック、ポール・マッカートニー、バーブラ・ストライサンド、セリーヌ・ディオン、スティング、ボン・ジョヴィ、ジェリー・サインフェルドといった著名アーティストが名を連ねます。費用はすべて同社が負担し、顧客への請求は一切ないといいます。

会場では、毎年テスラを賞品として抽選で提供しており(当初は年2台、現在は年3台)、さらに、終了時にはアイスクリームトラック(かつて孤児だった経営者から出資を依頼された企業)が登場し、来場者に無料でアイスクリームを振る舞う恒例行事もあるとのことです。

「私たちのファンドの株主は、世界中から来る。だからこそ、単なる決算報告ではなく、経営者自身がどんな人物で、なぜその事業を始めたのか、そのビジョンはどこに向かっているのかを率直に語ってもらう場にしている」

次回のカンファレンスは、2026年11月6日に予定されているとのことです。

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